1. 4,800円台まで切り上がった株価が、夏を境に水準を落とした
1/1
出所:各種資料をもとに筆者作成
まず株価の足取りを追う。アシックスの月末終値は、2025年10月末に3,900円台だった。
そこから年末年始にかけては上値が重い。11月末、12月末、2026年1月末はいずれも3,700円台で、昨秋の水準をやや下回る位置に沈んだ。
潮目が変わったのは2026年2月末だ。終値は4,700円台へ切り上がり、1月末から1,000円強の移動が起きた。
もっとも、その水準がそのまま定着したわけではない。3月末は4,100円台へ押し戻され、4月末は4,400円台、5月末は4,800円台と、上下に振れながら切り上がっていった。昨秋以降の月末終値では、この5月末が最も高い。
6月末は4,300円台まで下げ、7月末に4,700円台へ戻し、8月末は4,500円台。そして2026年9月時点の終値は4,000円台前半にある。
振れ幅は大きいが、昨秋の3,900円台と比べれば水準そのものは切り上がっている。ボラティリティ(株価の振れの大きさ)の高い銘柄だと言っていい。
気になるのは直近だ。8月に通期予想を引き上げた直後の局面で、株価はむしろ水準を落としている。素直な反応とは言いがたく、業績の改善がすでに株価に織り込まれていた可能性は高い。
2. 2026年12月期上期の営業利益率22.5%が示すもの
2026年12月期上期の売上高は5,344億円、営業利益は1,204億円だった。営業利益率は22.5%に達している。
純利益は821億円。上期の時点で、前期通期の純利益987億円の8割を超えた。
利益はなぜ伸びたのか。会社によれば、パフォーマンスランニングでは高付加価値商品へのフォーカスが奏功し、1Qの売上高は1,167億円と前年同期比+19.1%となった。スポーツスタイルは欧州と北米での成長を背景に596億円、同+69.6%。カテゴリー利益率も32.9%まで上がっている。
オニツカタイガーの1Qの売上高は378億円で同+33.8%、カテゴリー利益率は39.6%だった。値引きに頼らない売り方が、そのまま利益率に出ていると読み取れる。
上期を受けて、通期予想は売上高1兆500億円、営業利益1,950億円、純利益1,200億円へ引き上げられた。営業利益の前期比は+36.8%となり、期初計画の+20.0%から大きく上振れる想定に変わっている。
この修正後の予想に対して、上期の進捗はどうか。売上高は通期予想の50.9%、営業利益は61.8%まで進んでいる。上期で半分という単純な目安に照らせば、利益の進み方は速い。
もっとも進捗率は、通期予想に対する進み具合を示すだけで達成の確約ではない。会社は上期の実績を反映して予想を置き直したばかりであり、下期の前提が保守的なのかどうかは、次の決算を待つしかない。
年間配当予想も38円から44円へ引き上げられた。増益と還元が同時に動いた形だ。
3. 業種中央値と並べたときに見える立ち位置
この収益性を、その他製品という業種の中で置き直してみる。2026年の業種中央値は営業利益率4.7%、ROE(自己資本利益率)6.2%である。
アシックスの2025年12月期は営業利益率17.6%、ROE39.1%。営業利益率で3倍以上、ROEでは6倍を超える差がある。
スポーツ用品は流行や天候に左右されやすく、在庫を抱えやすい薄利の商売だ。そういう見方は根強いし、業種中央値もおおむねそれに近い。だが同じ区分の中で、アシックスの数字はまったく別の場所にある。
ただし、その他製品という区分は雑多だ。事業モデルの異なる会社が同居しているので、中央値を絶対の物差しとして当て込むのは危うい。それでも、同じ物差しの上でこれだけ離れている事実は残る。
もうひとつ見ておきたいのが資本構成だ。自己資本比率は46.3%で、業種中央値の60.8%より低い。ROE39.1%という数字には、この資本の薄さも効いている。負債をある程度使いながら資本効率を高めている姿だと整理できる。
4. 筆者コメント
アシックスの収益性が段階を変えたのは、ここ2期ほどのことだ。2023年12月期の営業利益率は9.5%だった。それが2年で17.6%まで上がり、上期には22.5%に達している。
こうした変化が起きるとき、株価はたいてい先に動く。2026年2月末から5月末にかけての切り上がりは、まさにその先回りだったと考えられる。
問題はそのあとだ。通期予想を引き上げた8月以降、株価は水準を落としている。良い数字が出ても株価が動かないのは、すでに織り込まれているサインであることが多い。
とはいえ、織り込み済みかどうかは後からしか分からない。いま見ておきたいのは、利益率の上昇がどういう性質のものかという点だ。価格改定によるものなら頭打ちが早く、商品構成の入れ替えによるものなら、まだ余地は残る。決算を読むときは、そこに目を向けてほしい。