75歳を迎えた家族が「後期高齢者医療制度」に切り替わったとき、窓口の負担割合が親世代の頃と違うことに気づいた家庭もあるかもしれません。
1割だと思っていた父の医療費が、ある年から急に2割になり、家計簿の医療費欄が跳ね上がった。そんな出来事を経験した家庭も少なくないはずです。
厚生労働省が2026年8月3日に公表した「後期高齢者医療毎月事業状況報告(事業月報)」の令和8年4月分(速報値)を読むと、被保険者は全国で2080万246人まで積み上がり、前年同月比プラス2.13%で増加が続いていました。
ところが所得区分別に見ると、伸びているのは「窓口3割負担」と「窓口2割負担」の区分だけで、「1割負担」の一部区分は前年割れになっています。
この記事では、令和8年4月時点の月報速報値から見えた「後期高齢者医療の負担層シフト」について、元公務員の筆者の視点から整理していきます。
1. 後期高齢者医療「令和8年4月時点」この記事の3つのポイント
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令和8年4月速報値で、後期高齢者医療の被保険者は全国2080万246人。前年同月比プラス2.13% -
窓口3割負担にあたる「現役並み所得者」計175万5042人(前年同月比プラス9.07%)と、2割負担の「一般所得者Ⅱ」460万4142人(同プラス10.14%)が2桁近い伸びを示した -
一方で1割負担の「一般所得者Ⅰ」617万8593人はマイナス0.66%、「低所得Ⅰ」290万6355人はマイナス3.53%で前年割れ
2. 令和8年4月の後期高齢者医療は2080万人。前年比プラス2.13%で増加が続く
まずは全体規模から確認していきます。厚生労働省の「後期高齢者医療毎月事業状況報告(事業月報)」(令和8年4月分・速報値)によると、後期高齢者医療制度の被保険者数は全国で2080万246人となりました。
前年同月と比べてプラス2.13%、およそ43万人の増加となります。
65歳以上75歳未満で一定の障害があると認定された被保険者は19万5106人で、前年同月比マイナス6.88%。全体を押し上げているのは75歳以上の層で、団塊世代の後期高齢者入りが数字に表れています。
3. 【後期高齢】窓口負担「3割」の人だけプラス9%。区分別に見えた「重い側へのシフト」
ここからが今回の月報でとくに目を引く数字です。所得区分別に前年同月比を並べると、「重い負担区分」だけが大きく伸びていることがわかります。
3.1 3割負担の「現役並み所得者」は175万人まで拡大
窓口3割負担にあたる「現役並み所得者」は、令和8年4月時点で計175万5042人となりました。前年同月と比べてプラス9.07%と、被保険者全体の伸び(プラス2.13%)の4倍以上のペースで増えています。
内訳を見ると、現役並み所得者Ⅰが112万2144人(プラス10.05%)、現役並み所得者Ⅱが29万1773人(プラス8.59%)、現役並み所得者Ⅲが34万1125人(プラス6.34%)でした。
ボーダーぎりぎりに位置していると考えられる現役並みⅠが2桁増となっている点が印象的です。
3.2 2割負担「一般所得者Ⅱ」もプラス10.14%
窓口2割負担にあたる「一般所得者Ⅱ」は460万4142人で、対前年比プラス10.14%。今回の月報で最大の伸び率でした。
2割負担の区分は令和4年10月に新設されたもので、令和7年9月末までの3年間は「配慮措置」(外来受診の負担増を月3000円までに抑える経過措置)が設けられていました。
この配慮措置は令和7年10月からすでに終了していて、令和8年4月時点の数字は、配慮措置後の姿を含んだ最新値ということになります。
窓口負担が1割・2割・3割のどれに判定されるかを決める仕組み(住民税課税所得145万円以上か、単身・夫婦の年金+その他所得の合計がいくらか等)は、「75歳からの医療費」の窓口負担割合(1割・2割・3割)の判定基準と老後の家計管理で詳しく整理していますので、あわせて確認してみてください。
4. 【後期高齢】1割負担の「一般所得者Ⅰ」は前年割れ。低所得Ⅰ・元被扶養者も減っていた
負担の重い区分が伸びる一方で、1割負担にあたる区分は横ばい、もしくは前年割れとなっています。
1割負担の「一般所得者Ⅰ」は617万8593人で、対前年比マイナス0.66%。1割負担でも所得の低い層に位置づけられる「低所得Ⅱ」は535万5660人でプラス0.23%の微増、「低所得Ⅰ」は290万6355人でマイナス3.53%でした。
元被扶養者にあたる区分の被保険者は15万7780人で、前年比マイナス9.12%と大きく縮んでいます。
数字の動き方をまとめると、負担の軽い1割区分から中間層、そして3割の現役並み区分へと、被保険者全体が「重い側」へ少しずつ移っている姿になります。年金額の底上げや、企業年金・私的年金・不動産所得を持つ人が新たに75歳を迎えたことが、区分の押し上げに効いていると考えられます。
令和8年4月の月報は、後期高齢者医療の負担割合が全体としてじわりと重い側へ動いていることを示しています。窓口3割・2割の判定に使う課税所得ライン自体は変わっていませんが、そのラインを超える所得層が確実に増えている点は、家計を守るうえで押さえておきたい変化です。


