5. 【元公務員の実感】町役場で後期高齢担当だった頃、負担割合は「1割か3割の二択」
ここからは、元公務員の筆者が国民健康保険と後期高齢者医療の窓口を担当していた頃に触れながら、制度を深掘りしていきます。
町役場で被保険者証の発送や負担割合の判定を担当していた時期、当時の窓口負担は「1割か3割」の二択でした。2割負担の「一般所得者Ⅱ」が加わったのは令和4年10月からで、その頃には筆者はすでに後期高齢担当を離れていました。
5.1 窓口で受けた相談の多くは「なぜ3割になったのか」
後期高齢担当時代、負担割合について寄せられた相談で多かったのは「なぜうちの父は3割負担になったのか」というものでした。
よくよく聞いてみると、退職後もパート勤務を続けている、賃貸物件からの家賃収入がある、企業年金がある、といったパターンが目立ちました。公的年金だけでは3割の壁に届かなくても、「年金以外の所得」が乗ると判定が変わります。
この構造は令和8年の今も基本的に同じです。
当時の私は、電卓を叩きながら「収入と所得は違うんですよ」と繰り返し説明していた記憶があります。給与ならば「給与収入マイナス給与所得控除」、公的年金ならば「年金収入マイナス公的年金等控除」を引いた後の金額が住民税上の所得となり、そこから判定が行われます。
数字を丁寧にたどれば必ずどこかで納得点が見つかりますが、通知書1枚で「3割です」と伝えられた側は、しばらく混乱するものでした。それが窓口の実感でした。
6. 【令和8年8月の負担割合判定】手元で確認しておきたい2つのこと
後期高齢者医療の窓口負担割合は毎年8月1日に見直されます。令和8年8月から令和9年7月までの負担割合は、令和8年度の住民税課税所得(令和7年中の所得ベース)で判定されます。
7月中には各市区町村から「資格確認書」または「資格情報のお知らせ」が届いたと思います。ここでは、手元で確認しておきたい2点を挙げておきます。
6.1 確認①:住民税納税通知書(税額決定通知書)の「課税標準」欄
1つ目は、市区町村から6月頃に届く住民税納税通知書(税額決定通知書)の中身です。書類の中に「課税標準」または「課税される所得金額」と書かれた欄があります。
ここに記載された金額が、後期高齢者医療の負担割合判定に使われる住民税課税所得にあたります。
75歳以上の方の場合、公的年金から住民税が特別徴収(年金天引き)されているケースが多く、その方には毎年6月に市区町村から自宅に納税通知書が直接届きます。給与所得や不動産所得がある方は、その分も合算されたうえで「課税標準」欄に記載されます。
単身の場合はご自身の課税標準、夫婦の場合は世帯員のうち後期高齢者医療の被保険者全員の課税標準を確認しておきたいところです。
6.2 確認②:ねんきん定期便と源泉徴収票で「年金収入と年金所得」を分けて把握
2つ目は、年金額を「収入ベース」と「所得ベース」の両方でつかんでおくことです。日本年金機構から届くねんきん定期便や、年始に届く公的年金の源泉徴収票を用意すると、令和7年中に受け取った公的年金の総額(=年金収入)がわかります。
2割負担の判定にはもう一段のルールがあり、単身世帯なら「年金収入とその他の合計所得の合計が200万円以上」、夫婦世帯なら「同じ合計が320万円以上」というラインが引かれています。
この「年金収入プラスその他の合計所得」を、ねんきん定期便と確定申告書控えを見比べながら計算しておくと、資格確認書が届いてから慌てずに済みます。
2割負担のもう一段の条件や、単身・夫婦の判定の分岐は、「75歳からの医療費」の窓口負担割合(1割・2割・3割)の判定基準と老後の家計管理の該当章に整理していますので、通知が届く前に一度目を通しておくと安心です。
7. まとめ:数字が示すのは「高齢層の中の所得の底上げ」。相談は市区町村の担当窓口へ
令和8年4月の月報速報値から見えたのは、後期高齢者医療の被保険者2080万人という規模感と、その中で「重い負担区分」だけが1割前後の高い伸びを示しているという事実でした。窓口3割・2割の判定に使う課税所得のライン自体は変わっていませんが、判定の分子側にあたる所得を持つ被保険者が増え、区分の構成が確実に動いていました。
判定基準を超えたからといって、慌てて生活を切り詰める必要はありません。窓口負担が上がる代わりに、公的年金や不動産所得を得ているという点は、家計の受取キャッシュフローが一定水準にあることを意味します。
同時に、負担割合が上がれば手元で見る医療費は増えます。この両面を落ち着いて見比べ、必要なら高額療養費制度や家計の医療費予算を組み直してみてください。
通知書の見方や判定の理由でわからないことが出てきたら、遠慮なく市区町村の後期高齢者医療担当課に相談してみましょう。判定作業を実際に行っている職員は、収入と所得の違いや、世帯単位の合算方法を丁寧に説明してくれるはずです。
筆者も後期高齢担当だった頃、電卓を挟んで一緒に金額をたどることが最も納得の得られる説明だったと感じていました。
参考資料
- e-Stat「後期高齢者医療毎月事業状況報告(事業月報)令和8年4月」(厚生労働省保険局調査課)
- 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の見直しについて」(2割の判定の流れ)
- 神奈川県後期高齢者医療広域連合「負担割合について」
太田 彩子