4. 歴史は繰り返す?ITバブル時との共通点から学ぶこと
株価が急落し、資産が目減りしていく状況では、多くの投資家がパニックに陥りがちです。インタビュワーから「どこまで下がるのか不安になる中で、どう冷静になればいいのか」と問われると、泉田氏は再び「バリュエーション」の視点に立ち返ることを勧めます。
実は、フジクラが株式市場から極めて高い評価を受けるのは今回が初めてではありません。
1990年代後半から2000年代初頭にかけてのITバブル期、インターネットの普及に伴う通信インフラへの莫大な投資期待から、関連企業の株価は軒並み急騰しました。当時のフジクラも、その熱狂の中心にいたのです。
泉田氏は、現在と当時では事業を行っている環境こそ違うものの、企業に対して市場がつける「バリュエーション(どれくらいの期待を織り込むか)」の考え方は変わらないと指摘します。
過去に最も期待が高まったピークの時と、熱狂が冷めたボトムの時で、バリュエーションにどれくらいの差があったのか。
その歴史的な振り幅を知ることで、「今の株価の下落はどこまでいけば過去のボトム水準と並ぶのか」「現在の期待値は歴史的に見て妥当な水準まで調整されたのか」を測る一つの基準を作ることができます。
目の前の急落に慌てるのではなく、過去のデータと照らし合わせることで、冷静な投資判断を取り戻すことができるのです。
【動画で解説】フジクラ急落の裏側とは?AI・データセンター期待で駆け上がった成長株の「現在地」を元プロが紐解く
5. 投資判断における留意点とまとめ
フジクラの事例は、AIやデータセンターといった華やかな成長テーマの裏側に、どのようなリスクが潜んでいるかを私たちに教えてくれます。
事業そのものが好調であっても、市場の期待が先行しすぎると、株価は実態以上に膨れ上がります。そして、会社が発表する業績見通し(今回は来期の減益予想)がその期待にわずかでも届かなかったり、金利上昇のような外部環境の変化が起きたりすると、株価は急激な調整を余儀なくされます。
泉田氏は、こうした成長株投資の本質的なリスクについて、次のように警鐘を鳴らします。
「金利と会社の利益成長率の見通しの組み合わせで『PER』ってできてるから、ここがいわゆる高『PER』銘柄のリスク」
そして最後に、株式投資に向き合う上での大原則として、こう締めくくりました。
「株式投資ってね、突き詰めると金利でできてるんだよ」
企業の事業内容や成長性を分析することはもちろん重要です。しかし、それに加えて「市場がどれくらいの期待を織り込んでいるのか(バリュエーション)」と「外部環境(金利)がどう変化しているのか」というマクロの視点を常に天秤にかけることが、激しい相場を生き抜くためには不可欠なのです。
今回解説したフジクラの事例を通じて、成長株投資における期待の構造とリスク管理の重要性がお分かりいただけたのではないでしょうか。
※本記事は動画内容の紹介を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株式投資は価格変動リスクを伴います。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
参考資料
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日