3. 決算発表の衝撃。なぜ株価は急落したのか
強い期待に支えられていたフジクラですが、直近の決算発表がその空気を一変させました。市場が注目していたのは、足元の業績だけでなく、来期に向けて会社がどのような見通しを出すかでした。
泉田氏は、決算の内容について次のように指摘します。
「今年の予想が最終利益が減益予想だったっていうのも渋いし、『コンセンサス』との比較もあるんだけど、正直それだけじゃないと思います。」
コンセンサスとは、証券アナリストたちが予測する業績の平均値のことです。市場の期待が高まっていた分、アナリストたちの予測(コンセンサス)も非常に高い水準に設定されていました。
しかし、会社側が発表した来期の最終利益は「減益予想」でした。さらに、中期経営計画に対する見方も含めて、市場の強気な予測に届かなかったことが、投資家の失望を招いた事実があります。
しかし、泉田氏は「それだけじゃない」と語ります。ここには、期待先行で買われていた「高PER銘柄」ならではの宿命が隠されていました。
事業が成長している企業は、将来生み出すであろう大きな利益が、あらかじめ現在の株価に織り込まれています(これがPERが高い状態です)。
こうした企業は、業績の見通しが少しでも悪化すると、はるか先まで織り込んでいた期待が一気に剥がれ落ちるため、株価の下落幅が非常に大きくなる構造を持っています。
さらに泉田氏は、こうした将来の利益への期待で成り立っている企業ほど、金利上昇などの外部環境の変化に対しても極めて脆いという事実を付け加えます。
「成長がない企業と成長がある企業を比べた時に、成長ある企業の方が金利の影響を受けやすいんです」
将来の利益を現在の価値に換算する際、金利が高いと現在の価値は目減りしてしまいます。
【動画で解説】フジクラ急落の裏側とは?AI・データセンター期待で駆け上がった成長株の「現在地」を元プロが紐解く
決算発表のタイミングで、日本の長期国債金利が上昇していたことも重なり、フジクラの株価は業績見通しの弱含みと外部環境の逆風という「ダブルパンチ」を受ける形となったのです。
※フジクラ株の急落については、「フジクラ株価が半値に急落した理由は?プロはまず「バリュエーション」を見る!元機関投資家が語る高PER株の落とし穴」でも解説しています。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日