2. 株価急落の真因は「金利の上昇」にある
では、フジクラの株価を半値にまで押し下げた本当の理由は何だったのでしょうか。泉田氏は、企業側の問題というよりも「タイミングが悪かった」と前置きした上で、最大の要因として「金利の上昇」を挙げます。
一般的に「金利が上がると株価は下がる」というセオリーは広く知られていますが、なぜフジクラのような銘柄が特に強いダメージを受けたのでしょうか。
それを理解するためには、株価がどのように計算されているかという「現在価値」の基礎理論を知る必要があります。
泉田氏は、現在価値の仕組みを初心者にもわかりやすく次のように解説します。
「1年後の100円と今の100円は価値が違う。1年後の100円って今の価値に直すといくらかっていうと、100円を5%の1.05で割り戻さないといけないのよ」
例えば、金利が5%の世界を想像してみてください。今手元にある100円を銀行に預ければ、1年後には105円になります。逆に言えば、「1年後に手に入る100円」は、現在の価値に換算すると100円未満(100円 ÷ 1.05 = 約95.2円)になってしまうということです。
さらに2年後の100円であれば、複利の計算が働くため「100円 ÷ (1.05の2乗)」となり、現在価値はさらに目減りします。
株価というものは、企業が将来の長い年月にわたって生み出すであろう利益を、すべて現在の価値に割り引いて(割り戻して)合計したものです。フジクラのようにAIやデータセンター向けのビジネスが急拡大しており、将来の大きな利益成長が期待されている企業(グロース株)は、株価の大部分が「遠い未来の利益」で構成されています。
「将来に生み出す利益が株価に織り込まれている比率が大きいので、金利が上がることによって株価に対しての影響が大きいってことになっちゃう」
つまり、金利が上がると、将来の利益を現在価値に割り引く際の「分母」が大きくなるため、遠い未来の利益ほどその価値が大きく削られてしまうのです。
これが、PERが高い(=将来の成長を長く織り込んでいる)銘柄ほど、金利上昇に弱いというメカニズムです。昨今、半導体やAI関連銘柄が市場で大きく売られる局面があったのも、本質的にはこの金利上昇によるバリュエーションの調整が原因だと泉田氏は説明します。
【動画で解説】フジクラ株価が半値に急落した理由は?元機関投資家が語る高PER株の落とし穴
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日