4. 株価の次なる起爆剤?「1.5兆円」の成長投資
株価が再び上昇トレンドを描くためには、単に今の利益を維持するだけでなく、将来に向けてさらに利益を拡大していく道筋を示す必要があります。
その重要なカギとなるのが、伊藤忠商事が稼ぎ出した潤沢なキャッシュ(現金)の使い道です。
同社は本業の営業活動から年間1兆円を超える強力なキャッシュフローを生み出しています。この莫大な資金をどう配分するかが、経営の腕の見せ所となります。
配当や自社株買いといった株主への還元を強化することも一つの選択肢ですが、泉田氏は機関投資家の視点から、それだけでは不十分だと指摘します。
「株主還元するってことは成長機会が自分たちの中にはないと言っているのと等しいので、この辺をしっかりバランスとって、ちゃんと収益性の高いもの、確度の高いものにちゃんと投資をして株主還元するってことになっているのかなと思います」
投資家が企業に求めているのは、手元の現金をただ返してもらうことだけでなく、その現金を事業に投資してさらなる大きな利益を生み出してもらうことです。
この点において、伊藤忠商事は非常にアグレッシブな姿勢を見せています。終わった2025年度には、設備投資(キャペックス)や新規投資を合わせて約8,380億円の成長投資を行いました。
そして驚くべきことに、次期である2026年度には、その倍近い「1.5兆円規模」の成長投資を行う計画を発表しています。
これほど巨額の資金を投じて、同社は生活消費、基礎産業、資源など、あらゆるセクターでバリューチェーン(価値創造の連鎖)の強化や拡大を狙っています。
泉田氏はこの強気な投資計画こそが、今後の同社を評価する上での最重要ポイントだと結論づけます。
5. まとめ
伊藤忠商事の直近の株価調整は、決して業績が悪化したからではありません。むしろ、歴史的な高水準の利益を出し続けているからこそ、市場の期待値が高くなりすぎ、手堅い次期予想をきっかけに「利益確定の売り」が出ているという健全な市場の反応だと言えます。
投資家が今後注目すべきは、会社が計画している「1.5兆円規模の成長投資」の行方です。この巨額の資金がどの分野に投じられ、どれだけのリターン(利益)を生み出すのか。
その進捗が確認できた時、伊藤忠商事の株価は再び新たな上昇ステージへと向かう可能性を秘めています。
なお商社株への投資にあたっては、資源価格や為替の変動、地政学リスク、大型投資先の業績悪化に伴う減損リスクなど、商社固有のリスク要因にも目を向ける必要があります。
本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。
## 参考資料
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日