3. 微増収微増益の最新決算と「9,500億円」の次期予想
それでは、投資家の期待に応えるべき最新の決算発表はどのような内容だったのでしょうか。2025年度(2026年3月期)の通期実績を見ると、収益は14兆8,231億円(前年比+0.7%)、営業利益は7,019億円(同+2.6%)、税引前利益は1兆1,995億円(同+3.8%)となっています。
そして、株主にとって最も重要となる最終的な利益「当社株主帰属当期純利益」は9,003億円(同+2.3%)となりました。
この結果について、泉田氏は率直な評価を下します。
「増収増益ではありますけれども、微増収微増益って感じかな」
決して悪い数字ではなく、むしろ9,000億円超という歴史的な高水準の利益を稼ぎ出している優良企業であることは間違いありません。しかし、前年からの「伸び率」という観点で見ると一桁台前半の成長に留まっており、株式市場を驚かせるようなサプライズには欠ける内容でした。
さらに焦点となるのが、会社側が発表した次期(2027年3月期)の業績予想です。会社側は当期純利益の予想を「9,500億円(前年比+5.5%増)」と発表しました。
「マーケットからすると1兆円を期待したくなるのでは?」という素朴な疑問が浮かぶ方もいるでしょう。
確かに、9,000億円の次となれば、大台である1兆円の突破を期待するのが投資家の心理です。泉田氏もこの市場心理と株価の関係について次のように解説します。
「終わった実績もほぼ横ばいに近い微増収微増益で、今期の新年度に関しても5.5%増なんで、勢いのある状態という形ではないので、一旦利益を確定した人とかもいるのかなという風には思いますね」
業績自体は非常に堅調であるものの、市場がひそかに期待していた「純利益1兆円」という高いハードルには届かず、成長の勢いがやや落ち着いて見える手堅い予想だったこと。
これが、先述した「利益確定の売り」を誘発し、株価の調整につながっているという市場メカニズムが浮かび上がってきます。
【動画で解説】伊藤忠商事の株価調整は「業績悪化」ではない。元機関投資家が明かす、次なる“1.5兆円投資”の行方
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日