75歳になると加入する後期高齢者医療制度。原則として医療費の自己負担は1割ですが、「現役並み所得者」に該当すると3割負担になります。

「自分は対象になるのか」「年金収入がいくらから3割になるのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、現役並み所得者の定義・判定基準・3つの区分・高額療養費の上限額をわかりやすく解説します。

1. 後期高齢者医療制度とは

後期高齢者医療制度は、75歳以上(一定の障害がある場合は65歳以上)のすべての方が加入する公的医療保険制度です。2008年に創設され、都道府県ごとに設置された「後期高齢者医療広域連合」が運営しています。

これまで国民健康保険や会社の健康保険に加入していた方も、75歳の誕生日を迎えた日から自動的にこの制度へ移行します。手続きは不要です。

令和8年7月末までの暫定措置として、マイナ保険証の有無にかかわらず全員に資格確認書が無償で交付されます。令和8年8月以降は、マイナ保険証を持っていない方には資格確認書が交付されます。また、自身の健康保険の資格情報を簡易に把握できるよう、資格情報のお知らせはすべての方に交付されます。

1.1 自己負担割合

医療費の自己負担割合は収入によって3段階に分かれています。

  • 一般・低所得者:1割
  • 一定以上の所得がある方:2割
  • 現役並み所得者:3割

2022年10月からは「2割負担」の区分が新設されました。この記事では、もっとも負担が重い「現役並み所得者(3割負担)」に絞って、その基準と内訳を詳しく解説します。

2. 現役並み所得者とは

後期高齢者医療制度における「現役並み所得者」とは、同一世帯の後期高齢者医療制度の被保険者の中に、課税所得が145万円以上の方がいる場合など、一定の要件に該当する人を指します。課税所得とは、収入から各種控除を差し引いた後の金額です。

75歳以上の方の医療費の窓口負担割合は原則1割ですが、一定以上の所得がある方は2割負担となります。また、同一世帯の被保険者の所得状況などにより現役並み所得者と判定された場合は、現役世代と同じ3割負担になります。

2.1 いくらから現役並み所得者になる?

現役並み所得者かどうかは、まず同一世帯の被保険者のなかに住民税課税所得145万円以上の人がいるかが確認され、そのうえで収入基準を満たしているかどうかが確認されます。「課税所得」は年金や給与などの収入から各種控除を差し引いた後の金額です。

具体的な年収での基準は以下のとおりです。

  • 単身世帯:年収383万円以上
  • 世帯に被保険者が2人以上いる場合:世帯収入合計520万円以上
  • 世帯に被保険者が1人で、かつ70歳以上75歳未満の人がいる場合:その人との収入合計が520万円以上

つまり、3割負担の判定は単純に年金収入だけで決まるのではなく、課税所得と世帯全体の収入状況をもとに判断される仕組みです。

さらに、現役並み所得者は課税所得の額に応じてⅠ・Ⅱ・Ⅲの3区分に分かれており、区分によって高額療養費の上限額が異なります。詳しくは次章で解説します。

2.2 年金収入のみで現役並み所得者になる人はどれくらいいる?

年金月額階級別年金受給権者数3/4

年金月額階級別年金受給権者数

出所:厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」

年金収入のみで現役並み所得者に該当するには、月額約32万円以上の受給が目安です。厚生労働省の調査によると、厚生年金受給者の年金月額の分布は以下のとおりです。

  •  1万円未満:43,399人(約0.27%) 
  •  1万円以上5万円未満:194,436人(1.21%)
  •  5万円以上10万円未満:2,816,139人(17.51%)
  •  10万円以上15万円未満:5,016,238人(31.18%)
  •  15万円以上20万円未満:4,987,811人(31.01%)
  •  20万円以上25万円未満:2,662,397人(16.55%)
  •  25万円以上30万円未満:345,993人(2.15%)
  •  30万円以上:19,283人(0.12%)

厚生年金受給者の平均月額は約15万円で、月額30万円以上を受給している方は受給権者全体の約0.1%にとどまっています。

年金収入のみで3割負担になるケースは限られており、判定にあたっては年金収入だけでなく、給与収入や事業収入、老齢年金収入等を含めた収入状況が考慮されます。

3. 区分別・高額療養費の限度額

3.1 高額療養費とは

高額療養費制度とは、1か月の医療費の自己負担額が一定の上限額を超えないよう保護する制度です。事前に限度額適用認定証を取得して医療機関に提示することで窓口での支払いを上限額に抑えることができます。また、マイナ保険証を利用している場合は自動的に上限額が適用されます。

3.2 区分別の限度額

現役並み所得者はⅠ・Ⅱ・Ⅲの3区分に分かれており、課税所得の金額によって限度額が異なります。

各区分の計算式は以下のとおりです。

  • 現役並み所得者Ⅲ(課税所得690万円以上):252,600円+(医療費-842,000円)×1%
  • 現役並み所得者Ⅱ(課税所得380万円以上690万円未満):167,400円+(医療費-558,000円)×1%
  • 現役並み所得者Ⅰ(課税所得145万円以上380万円未満):80,100円+(医療費-267,000円)×1%

たとえば、1か月の医療費(10割)が100万円かかった場合、現役並み所得者Ⅰなら自己負担の上限は87,430円が目安です(計算:80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%)。 前述のとおり、マイナ保険証や限度額適用認定証を利用すれば、窓口での支払いをこの上限額までに抑えることができます。利用せずに上限額を超えて支払った場合は、後日申請により超えた分が払い戻されます。

なお、同じ医療機関への通院が複数回ある場合や、複数の病院を受診している場合は、合算できるケースもあります。詳しくは加入している後期高齢者医療広域連合にご確認ください。

4. 一時収入が後期高齢者の医療費負担に影響するケースも

現役並み所得者かどうかの判定は毎年8月1日に更新され、前年(1月〜12月)の所得・収入をもとに決まります。普段は年金収入のみの方でも、不動産(土地・建物)の売却や、株式の売却などで一時的な収入が発生した年は要注意です。

こうした収入が加わると課税所得が増え、翌年8月から窓口負担割合や高額療養費の上限額が変わることがあります。また、確定申告の方法によって収入の計算額が変わるケースもあるため、注意が必要です。

「心当たりがないのに窓口負担が増えた」と感じたときは、必要に応じて市区町村の窓口に相談してみましょう。

参考資料

小西 雅美