新年度スタートから早くも1か月経ち、昇進や異動をきっかけに「管理職を目指すべきか」と考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、実態を見ると管理職志望者は年々減少しているようです。パーソル総合研究所によると、2026年に「現在の会社で管理職になりたい」と答えた人の割合は全体で15.7%と、5年間で8.3ポイント低下しました。低下の傾向は20代~40代で強く、今後の人材不足が懸念されるところです。
この背景にあるとみられるのが、管理職の負担感です。責任や業務量の増大に加え、マネジメントの役割も求められるようになり、「管理職は割に合わない」という声が聞かれます。昇進は一般に昇給も伴いますが、果たして中間管理職の収入はその負担に見合ったものなのでしょうか。
この記事では、厚生労働省の最新データから部長・課長・係長の平均年収を紹介するとともに、管理職が抱えるリアルな悩みを解説します。
1. 【中間管理職】平均年収一覧表、うちの「部長・課長・係長」の年収はいくらぐらい?
まずは厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 役職別」のデータをもとに、中間管理職である「部長」「課長」「係長」の平均年収を見ていきましょう。
※ここでいう賃金は、調査が実施された年の6月分における所定内給与額の平均値です。実際に支給された現金給与額から超過労働給与額を引いたもので、所得税などが控除される前の金額を指します。
はじめに、部長・課長・係長それぞれの平均賃金と平均年齢は次のようになっています。
1.1 中間管理職の平均賃金一覧表(月額)
部長級
- 男女計: 賃金 63万5800円、年齢 53.1歳
- 男性: 賃金 64万2400円、年齢 53.1歳
- 女性: 賃金 57万8300円、年齢 53.0歳
課長級
- 男女計: 賃金 52万9200円、年齢 49.5歳
- 男性: 賃金 54万1400円、年齢 49.5歳
- 女性: 賃金 47万300円、年齢 49.4歳
係長級
- 男女計: 賃金 39万9200円、年齢 45.4歳
- 男性: 賃金 41万900円、年齢 45.3歳
- 女性: 賃金 36万5700円、年齢 45.7歳
この月収をもとに、男女計について、ボーナスを年2回(合計で賃金の4カ月分)と仮定して平均年収を試算すると、以下のようになります。
1.2 中間管理職の平均年収一覧表
- 部長級:約1017万円
- 課長級:約847万円
- 係長級:約639万円
ちなみに、役職に就いていない非役職者の場合、平均賃金の月額は以下の通り。
非役職者
- 男女計: 賃金 31万500円、年齢 41.8歳
- 男性: 賃金 33万2100円、年齢 42.1歳
- 女性: 賃金 28万100円、年齢 41.3歳
男女計で試算すると、非役職者の平均年収は約497万円となります。
2. 【中間管理職】部長と非役職者「およそ2倍」の賃金格差あり
また、同資料より役職・非役職間の賃金格差をみると、部長の賃金は非役職者の約2.05倍、課長は約1.70倍、係長は約1.29倍となりました。
直近5年間における賃金の上昇率は年平均で課長級が1.18%と最も高く、部長級(同1.11%)と係長級(同0.90%)が続きます。非役職者は同0.80%で、最も低くなりました。役職・非役職間の格差は、やや広がったといえるでしょう。
もっとも、中間管理職は給与が高い一方で、それだけの責任も負っています。現代では「管理職は罰ゲーム」といわれることもあり、必ずしもすべての人が中間管理職を目指しているわけではないでしょう。
3. 【仕事への貢献意欲】半数が「給与の範囲内で努力」給与以上の成果を目指す人は少数派?
中間管理職は平均年収が高い傾向にありますが、給与への「納得感」という観点から見ると、また別の実態が見えてきます。
家計診断サービス『オカネコ』を運営する株式会社400Fが給与収入のある283人を対象に行った「オカネコ 労働とお金に関する調査」(2025年)では、働く人の意識の変化が浮き彫りになっています。
3.1 「契約以上の働きはしたくない」
本業に対する努力や貢献については、「給与契約で求められる範囲内の努力をすれば十分」という回答が51.6%で最大でした。「給与への不満や期待のなさから、最低限の業務に留めたい」の11.6%と合わせると、努力や貢献を「給与範囲内」に限定する層は63.2%に達する計算です。
一方、「給与以上の成果を目指す」人は36.8%と少数派にとどまります。管理職は責任が重く業務量も多いことから、収入の高さが納得感に直結するわけではないと考えられます。
3.2 キャリアより「時給」、マネジメントへの関心も薄い
調査ではキャリアより時給を優先したいというニーズも見えてきます。副業の時給換算額が本業を上回る場合、副業に時間を割きたいという回答は51.2%に達し、本業(将来のキャリアや責任のため)を優先するという回答を上回りました。
また、「部下への指導・マネジメント業務」を重要度が低いと感じる人が13.1%にのぼっています。
調査からは、現在の会社にこだわらない姿勢と、管理職業務そのものへの関心が薄れている様子もうかがえます。
調査概要
- 調査名:オカネコ 労働とお金に関する調査
- 調査方法:WEBアンケート
- 調査期間:2025年11月15日(土)~2025年11月16日(日)
- 回答者:全国の『オカネコ』ユーザー・給与収入がある方283 人
- 回答者の年齢:30代以下16.6%、40代31.1%、50代36.0%、60代以上16.3%
- 回答者の世帯年収:400万円未満19.8%、400万円以上600万円未満19.1%、600万円以上800万円未満20.1%、800万円以上1,000万円未満15.9%、1,000万円以上1,200万円未満7.1%、1,200万円以上11.7%、わからない6.3%
4. まとめにかえて
中間管理職の平均収入は、非役職者と比べて1.3〜2倍の水準にあります。賃金の上昇率でも役職者が非役職者を上回っており、収入面でのメリットは確かに存在します。
一方で、実際に働く人たちは、努力や貢献を給与の範囲内にとどめたいという考えを持っています。中間管理職になれば給与外の責任や業務が想定されることから、収入が上昇しても満足できないというケースもあるでしょう。
大切なのは、「役職に就くかどうか」をキャリアの唯一の軸にしないことです。管理職としてチームをまとめることにやりがいを感じる人もいれば、専門性を深めるスペシャリストの道が合う人もいます。また、収入を増やす手段も、昇進だけでなくスキルアップによる昇給、副業、資産運用など複数あります。
まずは自分の強みや働き方の好みを整理した上で、収入・やりがい・負担感のバランスが取れた選択肢を探してみてください。キャリアに「正解」はありませんが、データを参考にしながら自分なりの答えを見つけていくことが、長く働き続けるための第一歩になるはずです
参考資料
- 株式会社 パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査 2026」
- 厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 株式会社400F「オカネコ 労働とお金に関する調査」
若山 卓也