75歳の誕生日を迎えると、それまで加入していた健康保険から「後期高齢者医療制度」へ自動的に切り替わります。

近年は窓口負担の割合や高額療養費の上限額など、制度の大きな見直しが続いています。「病院での支払いが増えた気がする」という不安の背景には、2025年秋に終了した負担軽減措置や、2026年からの新たなルールが関係しています。

今回は、自分の負担割合が決まる「年金収入のボーダーライン」と、負担増のなかで家計を守るための「高額療養費制度」の最新情報について分かりやすく解説します。医療費の仕組みを正しく理解し、新設される「年間上限」などのセーフティネットを家計管理に役立てましょう。

1. 75歳からの後期高齢者医療制度、所得に応じて「1~3割」が決まる

75歳以上のすべての人が加入する後期高齢者医療制度では、所得に応じて窓口負担が「1割・2割・3割」の3段階に分かれます。以前は「現役並み所得者は3割、その他は1割」というシンプルな区分でしたが、世代間の負担バランスを見直す目的で「2割負担」の区分が新設されました。

導入から3年間続いた「負担増を月3000円までに抑える配慮措置」が2025年9月末で終了したため、現在は対象となる約370万人が本来の2割負担で医療費を支払っています。

1.1 窓口負担「2割」になる人・ならない人。判定のカギは年金収入「200万・320万の壁」

自分がどの区分に該当するかは、主に「課税所得」と「年金収入+その他所得」の合計額で判定されます。

後期高齢者医療制度の窓口負担割合の判定基準

  • 3割負担:同じ世帯の被保険者の中に課税所得が145万円以上の人がいる場合
  • 2割負担:同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の人がいる場合、かつ次のいずれかに該当
    - 単身世帯:年金収入+その他所得の合計が200万円以上
    - 複数人世帯(被保険者2人以上):年金収入+その他所得の合計が320万円以上
  • 1割負担:3割・2割に該当しない人

特に注目すべきは2割負担のボーダーラインで、目安となる年金収入は「単身世帯で200万円以上、夫婦世帯で合計320万円以上」です。単身で月額に直すと約16万6000円となるため、平均的な厚生年金を受給している方の多くが2割負担の対象となっています。

2. 2026年8月からの高額療養費制度、自己負担の「月額上限」が引上げへ

後期高齢者医療制度の窓口負担が2割へ引き上げられるなか、同制度をはじめとした公的医療保険で利用できる「高額療養費制度(毎月の自己負担額に上限を設ける仕組み)」も、2026年(令和8年)8月から大きな転換期を迎えます。

今回の見直しは、制度の持続可能性を確保するため、「短期の受診」については応分の負担を求める一方で、長期療養時の安心を強化するという設計になっています。

患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額(令和8年8月~令和9年7月)4/5

患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額(令和8年8月~令和9年7月)

出所:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」

具体的には、医療費の伸びや所得に応じて月単位の負担上限額が引き上げられるため、人によって実質的な負担増が避けられないのが現実です。特に窓口負担が2割となった方は、1割負担の頃に比べて毎月の「支払い上限」そのものが高くなる傾向にあるため注意が必要です。

3. 2026年8月からの高額療養費制度、「年間上限」が新設!長期療養の負担を抑える

一方で、長期の治療が必要になった際の家計負担を軽減する新しい仕組みも始まります。

2026年8月からは、月ごとの支払いが積み重なっても、年間の合計額が一定(例:一般所得者なら年間9.6万円〜など)を超えた分は支払わなくて済む「年間上限」が新設されます。

また、1年間に3回以上上限に達した後の「4回目以降」の負担をさらに軽くする「多数回該当」の仕組みも、長期療養者への配慮から現行水準で維持されます。加えて、2026年6月からは年金額の増額改定(国民年金1.9%・厚生年金2.0%想定)も予定されています。

高額療養費の「月額の上限」と「新設される年額の上限」の両方を理解しておくことで、実際に制度を利用する際にも安心して対応しやすくなります。

4. まとめにかえて

賢い家計管理で、75歳からの医療費負担を乗りこなす今回は、後期高齢者医療制度における「2割負担」の本格化に加え、2026年8月に実施される高額療養費制度の見直しについて解説しました。

窓口での負担割合が上がり、さらに高額療養費制度の月ごとの上限額も見直されるという現実に、不安を感じる方も多いかもしれません。しかし、今回の改正は短期の通院には応分の負担を求めつつ、新たに導入される「年間上限」によって、長期療養が必要になった際の家計破綻を防ぐという、より安定したセーフティネットへの再編でもあります。

まずはご自身の後期高齢者医療被保険者証で負担割合を正しく把握し、新設される高額療養費の「年単位の上限額」を知っておくことが、何よりの安心材料になります。2026年6月の年金増額改定なども視野に入れながら、医療費を含めた家計全体のバランスを冷静に見直してみてはいかがでしょうか。

参考資料

苛原 寛