5月も中旬を迎え、日中は汗ばむ陽気の日も増えてきました。

続く物価高の影響で、日々の生活費に頭を悩ませている方も少なくないでしょう。

特に、老後の生活設計を考える上で「年金をもらいながら生活保護も受け取れるのだろうか」という疑問を持つ方もいるかもしれません。

将来への漠然とした不安から、公的制度について正確な知識を得たいというニーズは高まっています。

中でも、単身で老後を迎える方にとっては、誰にも相談できずに不安を抱え込んでしまうケースも考えられます。

厚生労働省が公表した調査データを詳しく見ていくと、単身高齢世帯の厳しい生活実態と、誰にでも起こりうるリスクが明らかになります。

老後に向けて今できることは、ご自身の現状と公的制度を正しく理解することです。

この記事で、一つひとつ確認していきましょう。

1. 年金と生活保護の同時受給は可能?基本的なルールを解説

まず、「年金を受給していると生活保護は受けられない」というのは、よくある誤解の一つです。

生活保護制度には「補足性の原理」という基本的な考え方があります。

これは、ご自身の収入が、お住まいの地域で定められた最低生活費に満たない場合、その不足分を生活保護費として受け取れるという仕組みです。

例えば、ある地域の最低生活費が月額13万円だと仮定します。

もし、あなたの年金受給額が月額6万円であれば、差額の「7万円」が生活保護費として支給されることになります。

2026年度の国民年金(基礎年金)は、満額でも月額7万608円です。

最低生活費は地域によって異なりますが、基礎年金のみを受給している場合、収入面で生活保護の基準を下回る可能性は十分に考えられます。

ただし、実際に生活保護を受給するためには、収入が低いことだけでなく、預貯金や不動産といった資産がないこと、親族からの経済的な援助が期待できないことなど、いくつかの要件を総合的に満たす必要があります。

重要なのは、年金と生活保護を両方受け取ったとしても、受給できる合計額は「最低生活費」が上限となる点です。

そのため、決して生活に余裕が生まれるわけではないということを理解しておく必要があります。

2. データで見る現実:生活保護受給者の平均年金額は「月5万円台」

それでは、実際に生活保護を受けている高齢者は、どのくらいの年金を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省の「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」のデータで確認してみましょう。

全体・生活保護受給者の年金平均額1/3

全体・生活保護受給者の年金平均額

出所:厚生労働省「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」をもとにLIMO編集部作成

  • 全体の年金平均額: 151万8000円(年額)
  • 生活保護受給者の年金平均額: 65万7000円(年額)

生活保護受給者の平均年金額である65万7000円を月額に換算すると、約5万4000円となります。

この金額は、国民年金の満額にも届いていません。

このデータから、生活保護を受給している高齢者の多くが、低年金であることがわかります。

最後のセーフティネットである生活保護に頼らざるを得ない厳しい現実が、数字から浮かび上がってきます。

3. 生活保護を受ける年金受給者、その約7割が「単身世帯」という実態

さらに、厚生労働省「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」のデータを深掘りし、年金を受け取りながら生活保護を受給している方の家族構成を見ていきましょう。

生活保護を受給している年金受給者(約48万5000人)のうち、配偶者の有無は以下の通りです。

  • 配偶者あり:10万2000人
  • 配偶者なし:36万2000人

このうち、配偶者がいない方の中で「単身」で暮らしているのは31万6000人です。

つまり、生活保護を受けている年金受給者のうち、7割以上が「配偶者のいない単身世帯」であることがわかります。

夫婦世帯であれば、2人分の基礎年金収入があり、生活費を分担することもできます。

しかし、単身世帯ではそうした支え合いが難しく、一人の収入で全ての生活費を賄わなければなりません。

4. 見過ごせない公的年金の「男女格差」という課題

もう一つ、忘れてはならないのが公的年金における「男女の格差」です。

男性の年金額2/3

男性の年金額

出所:厚生労働省「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」をもとにLIMO編集部作成

厚生労働省「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」によると、生活保護受給者に限らず、全体の平均年金額を見ると、男性は192万6000円です。

配偶者がいない男性世帯では171万4000円となっています。

女性の年金額3/3

女性の年金額

出所:厚生労働省「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」をもとにLIMO編集部作成

一方、女性の平均年金額は120万7000円と、男性との間に大きな差が見られます。

配偶者がいない女性世帯では145万2000円でした。

生活保護受給者の平均年金額を見ても、女性は年額58万3000円(月額約4万8000円)と、低い水準にとどまっています。

この背景には、公的年金の仕組みが関係していると考えられます。

国民年金の額は「納付月数」で決まり、厚生年金の額は「現役時代の報酬額や加入期間」によって決まります。

かつての日本では「女性は結婚後に家庭に入る」という考え方が主流で、パートタイム労働が中心だった社会構造が、結果として男女の年金額に差を生じさせたと推測されます。

近年は共働き世帯が増加したことで、年金の男女差は少しずつ解消に向かうと予想されます。

しかし、働き方による個人差は今後も存在し続けるでしょう。

老後に受け取る年金額は、現在の働き方と密接に関わっていることを意識し、将来を見据えたキャリアプランを考えることが大切です。

5. 厳しい老後を乗り越えるために。今からできる5つの準備ステップ

他人の年金額や生活保護の状況について、安易に批判することは建設的ではありません。

データが示すように、年金額の個人差には、これまでの加入履歴や過去の雇用環境、社会構造といった様々な要因が影響しています。

他人を批評しても、自身の老後資金が増えるわけではありません。

私たちが今取り組むべきことは、自分の状況を正確に把握し、具体的な老後設計を立てることです。

特に50歳代後半から60歳代の方は、以下のステップを参考に準備を進めてみてはいかがでしょうか。

  1. 「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で受給額を確認する
    まずはご自身の現実を直視することから始めましょう。65歳からいくら年金を受け取れるのか、正確な金額を把握することが第一歩です。
  2. 退職金や手持ちの資金を洗い出す
    勤務先の退職金制度を確認したり、現在の預貯金額を計算したりします。加入したまま忘れている貯蓄型保険などがないか、見直してみるのも良いでしょう。
  3. 老後にかかる生活費を試算する
    住宅ローンの完済時期や家賃、食費など、最低限必要となる生活費をシミュレーションします。
  4. 毎月の不足額を算出する
    「毎月の生活費 - 年金収入 = 毎月の不足額」を計算し、老後全体でどれくらいの資金が必要になるかを逆算します。
  5. 不足額を補う方法を検討する
    もし資金が不足する見込みであれば、その対策を冷静に考えましょう。60歳代からハイリスクな投資に全額を投じるのは危険です。まずは「長く働くこと」や「年金の繰下げ受給」といった選択肢を検討するのが堅実です。

長く働くことで厚生年金の加入期間を延ばし、将来の年金額を増やすことが重要です。

また、就労延長が可能であれば、年金の受け取り開始を遅らせる「繰下げ受給」も有効な手段となります。

繰下げ受給を利用すると、1カ月遅らせるごとに年金額が0.7%増え、70歳まで繰下げれば生涯にわたって42%増額された年金を受け取れます。

ただし、年金額が増えると税金や社会保険料の負担も変わるため、総合的な視点で判断することが大切です。

もちろん、生活に余裕がある範囲で、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)を活用して資産形成を進めるのも一つの方法です。

6. まとめ:まずは現状把握から始める老後設計

生活保護や年金など、私たちの暮らしを支える公的制度について正しく知ることは、将来の安心につながります。

データを見ると、生活保護を受給している方の年金額は決して多くはなく、また年金額には男女差が存在するという現実も明らかになりました。

過度に不安になる必要はありません。

客観的に現実を把握することで、次にとるべき具体的な対策が見えてきます。

未来の安心を手に入れるために、まずは「知る」ことから始めてみましょう。

※当記事は再編集記事です。

参考資料