3. AI時代にあえて「人」を張る逆張り経営
IT業界において生産性を高めるための一般的なアプローチといえば、AIを活用した省人化や、中途採用による即戦力人材の獲得です。しかし、オービックの戦略はそれらと真っ向から対立するものです。
同社は「新卒主義」「自社開発」「直販」という3つの柱を掲げています。中途採用に頼らず、新卒から自社でじっくりと人材を育て上げ、長期的かつ濃密な顧客関係を築くことを重視しているのです。
インタビュワーが「AIが進む中で、なぜ新卒主義なのか」と疑問を投げかけると、泉田氏はオービックのAIに対する独特なアプローチを解説します。
「今いる人たちにAIの特許を作ってもらって、それで付加価値を上げるから、効率を上げて利益を出すというよりは、付加価値を上げて利益を出すっていう、ちょっと180度逆の発想になってるね」
一般的な企業が「人を減らしてコストを下げる」ためにAIを使うのに対し、オービックは「人が提供するサービスの価値を高める」ためにAIを活用しています。泉田氏はこの姿勢を、AI時代における「逆張り経営」だと表現します。
この戦略が機能する背景には、オービックがターゲットとしている顧客層の特徴があります。
オービックの主要顧客は、年商100億円から1,000億円規模の中堅企業が約半数を占めています。何兆円もの売上を誇る超大企業であれば、自社内に優秀なIT専門部隊を抱えているかもしれません。
しかし、中堅企業にとって、目まぐるしく進化するAI技術を自社だけで追及し、ビジネスに落とし込むことは困難です。
泉田氏は、そうした企業にとってオービックの担当者が「駆け込み寺」のような存在になっていると語ります。
「『うちってAIどうやったらいいの?』と。『うちのERP導入してて、うちのことよく知ってるよね。AIの使い方ある?』って聞くじゃん。その時に自分の会社にあったAIの使い方を提案してくれたら、使わない?」
長年付き合いがあり、自社の業務を隅々まで理解してくれている担当者が、親身になって最新のAI活用法を提案してくれる。この「人に寄り添う付加価値」こそが、オービックが顧客から選ばれ続ける理由なのです。
