3. AI時代にあえて「人」を張る逆張り経営
IT業界において生産性を高めるための一般的なアプローチといえば、AIを活用した省人化や、中途採用による即戦力人材の獲得です。しかし、オービックの戦略はそれらと真っ向から対立するものです。
同社は「新卒主義」「自社開発」「直販」という3つの柱を掲げています。中途採用に頼らず、新卒から自社でじっくりと人材を育て上げ、長期的かつ濃密な顧客関係を築くことを重視しているのです。
インタビュワーが「AIが進む中で、なぜ新卒主義なのか」と疑問を投げかけると、泉田氏はオービックのAIに対する独特なアプローチを解説します。
「今いる人たちにAIの特許を作ってもらって、それで付加価値を上げるから、効率を上げて利益を出すというよりは、付加価値を上げて利益を出すっていう、ちょっと180度逆の発想になってるね」
一般的な企業が「人を減らしてコストを下げる」ためにAIを使うのに対し、オービックは「人が提供するサービスの価値を高める」ためにAIを活用しています。泉田氏はこの姿勢を、AI時代における「逆張り経営」だと表現します。
この戦略が機能する背景には、オービックがターゲットとしている顧客層の特徴があります。
オービックの主要顧客は、年商100億円から1,000億円規模の中堅企業が約半数を占めています。何兆円もの売上を誇る超大企業であれば、自社内に優秀なIT専門部隊を抱えているかもしれません。
しかし、中堅企業にとって、目まぐるしく進化するAI技術を自社だけで追及し、ビジネスに落とし込むことは困難です。
泉田氏は、そうした企業にとってオービックの担当者が「駆け込み寺」のような存在になっていると語ります。
「『うちってAIどうやったらいいの?』と。『うちのERP導入してて、うちのことよく知ってるよね。AIの使い方ある?』って聞くじゃん。その時に自分の会社にあったAIの使い方を提案してくれたら、使わない?」
長年付き合いがあり、自社の業務を隅々まで理解してくれている担当者が、親身になって最新のAI活用法を提案してくれる。この「人に寄り添う付加価値」こそが、オービックが顧客から選ばれ続ける理由なのです。
【動画で解説】オービック、AI時代にあえて「新卒主義」で利益率65.7%
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日