新緑が目に鮮やかな季節となりましたが、物価上昇の影響は依然として家計に重くのしかかっています。

こうした状況の中、国や自治体はさまざまな支援策を講じていますが、その多くは「住民税非課税世帯」を対象としています。

しかし、自分が対象になるのか、具体的にどのような優遇が受けられるのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、住民税非課税世帯が利用できる代表的な5つの優遇措置を解説するとともに、給与や年金収入がいくらまでなら非課税になるのか、具体的な収入の目安をわかりやすく整理します。

1. 住民税が非課税なら対象に?知っておきたい5つの優遇措置

近年の物価高騰などに対応するため、国や地方自治体は、住民税が課税されていない世帯を主な対象とした支援を続けています。

これらの世帯は、所得が基準額より少ないために住民税が免除されており、その結果として給付金や各種の負担軽減制度を利用しやすくなっているのが特徴です。

支援は現金が支給されるだけではありません。医療保険や年金、子育て支援、教育費など、日々の暮らしに直結する分野でさまざまな優遇措置が設けられています。

ここでは、2026年5月時点で利用できる代表的な5つの制度について見ていきましょう。

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置1/6

LIMO編集部作成

1.1 1. 国民健康保険料(応益割)の減額措置

  • 所得に応じて「7割」「5割」「2割」のいずれかの割合で、応益分保険料(均等割・平等割)が減額されます。

1.2 2. 介護保険料の減額措置

  • 65歳以上の第1号被保険者が対象です。減額幅は各自治体によって異なります。

1.3 3. 国民年金保険料の免除や納付猶予

  • 全額免除、一部免除、納付猶予のいずれかの措置を受けられます。

1.4 4. 0歳から2歳までの保育料無償化

  • 0歳から2歳の子どもの保育料が無償化されます。

これにより、0歳から5歳までの保育料が実質的に無料となります。

1.5 5. 高等教育の修学支援(授業料減免・給付型奨学金)

  • 授業料や入学金の免除または減額
  • 返済不要の給付型奨学金

これらの支援により、大学や短期大学、高等専門学校、専門学校での修学費用負担が軽減されます。

上記に加えて、各自治体が独自に実施する支援策が上乗せされることもあります。

次の章では、そもそも「住民税非課税世帯」が何を意味するのか、その定義について詳しく見ていきます。

2. そもそも「住民税非課税世帯」とは?住民税の仕組みとあわせて確認

住民税非課税世帯について知るためには、まず住民税がどのような税金なのか、その仕組みを理解することが大切です。

ここでは、住民税の概要と、どのような状態が「非課税」と呼ばれるのかを解説します。

住民税とは、都道府県や市区町村といった地方自治体が徴収する税金のことです。地域に住む人々が行政サービスを公平に受けるための財源として、重要な役割を担っています。

集められた税金は、道路や水道の整備、福祉や教育サービスの提供など、私たちの日常生活を支えるために幅広く使われています。

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造2/6

出所:総務省「個人住民税」

個人が納める住民税は、「均等割」と「所得割」という2つの要素から成り立っています。

  • 均等割:所得の金額にかかわらず、一律で課される部分
  • 所得割:前年の所得額に応じて税額が変動する部分

この「均等割」と「所得割」の両方が課税されない状態を「住民税が非課税」といいます。

さらに、同じ世帯に住む全員がこの非課税の状態である場合に、その世帯を「住民税非課税世帯」と呼びます。

なお、所得割だけが非課税になる場合もありますが、給付金などの支援対象となるかは自治体の判断によります。

制度を利用できるかどうかは、お住まいの市区町村が設けている基準を必ず確認することをおすすめします。

3. 住民税が免除されるのはどんな世帯?共通する3つのパターン

では、具体的にどのような条件を満たすと住民税が非課税になるのでしょうか。

その条件は、主に以下の3つのパターンに分けられます。

  • 生活保護法による生活扶助を受けている
  • 障がい者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下
  • 前年の合計所得金額が各市区町村の条例で定める額以下

最初の2つの条件は全国で共通ですが、3つ目の所得に関する基準は住んでいる市区町村によって異なります。

このため、同じ収入であっても、どこに住んでいるかによって課税されるかどうかが変わる可能性がある点に注意が必要です。

4. 突然の失業や病気で収入が減ったら?現役世代が住民税非課税になるタイミング

現役で働いている世代であっても、失業や病気、家族の介護といった理由で、住民税が非課税になるケースはあり得ます。ただし、重要なのは、住民税がその年の収入ではなく、前年の所得に基づいて計算されるという点です。

4.1 収入がなくなっても、すぐに非課税扱いにはならない理由

住民税は、その年の1月1日時点で住所がある自治体が、前年1年間(1月1日~12月31日)の所得を基に税額を決定します。

そのため、年の途中で職を失ったり、病気や介護で働けなくなったりした場合でも、その年の住民税は前年の収入に応じて課税されるのが原則です。

4.2 住民税の非課税判定は「翌年度」に行われる

失業や収入の大幅な減少が住民税に反映されるのは、基本的には翌年度からとなります。

前年の所得が非課税の基準を下回った場合に、翌年度から「住民税非課税世帯」として扱われることになります。

この仕組みのため、収入が途絶えた直後は、家計が苦しい状況にもかかわらず住民税を納め続けなければならない場合があります。

4.3 今年の負担はどうなる?減免・納付猶予制度の活用

収入が急に減ったからといって、その年の住民税が自動的に免除されるわけではありません。しかし、自治体によっては住民税の減額や免除、納付の猶予といった制度を設けていることがあります。

例えば、会社の倒産や会社都合での退職など、特定の理由に該当する場合は対象となる可能性がありますので、一度確認してみる価値はあります。

「来年度に非課税になるか」という問題と、「今年の支払いをどうするか」という問題は、別々の制度として捉えることが重要です。

5. 住民税が非課税になる所得基準の計算式【神戸市の例】

住民税非課税世帯に該当するかどうかは、世帯の「所得」によって決まります。ここでは、兵庫県神戸市の基準を例に、具体的な計算方法を見てみましょう。

神戸市の場合、以下の計算式で求められた金額よりも所得が低い場合に、住民税(市民税・県民税)が非課税として扱われます。

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?3/6

出所:神戸市「住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?」

35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+21万円

※21万円は、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合にのみ加算されます。
※同一生計配偶者とは、前年の合計所得金額が48万円以下で、納税者と生計を共にしている配偶者のことです。

このように、非課税になるかどうかは個人の所得だけでなく、「家族構成」も考慮して計算される点が大きな特徴です。

6. 住民税が非課税となる収入基準《年金・給与》ボーダーラインとは?

所得は、収入の総額そのものではなく、そこからさまざまな控除を差し引いて計算されます。

そのため、実際には「年収ベースでいくらまでなら非課税か」という目安を把握しておくことが大切です。

引き続き神戸市の基準を参考に、世帯の状況別に見ていきましょう。

6.1 ケース1:単身世帯の場合

合計所得金額が45万円以下の方が対象です。

  • 給与収入のみの場合:年収100万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳以上):年金収入155万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳未満):年金収入105万円以下

6.2 ケース2:配偶者や扶養親族がいる場合

合計所得金額が101万円以下の方が対象です。

  • 給与収入のみの場合:年収156万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳以上):年金収入211万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳未満):年金収入171万3333円以下

例えば単身世帯で収入が給与のみの場合、年収がおおよそ100万円以下であれば住民税は非課税となります。また、65歳以上で公的年金だけで生活している方なら、年金収入155万円以下が非課税の目安です。

一方、生計を共にする配偶者や扶養している親族がいる世帯では、非課税となる収入の基準額が引き上げられます。これは、世帯全体で生活を支えている実情が考慮されるためです。

特に注目すべきは、65歳以上で年金収入のみの夫婦世帯などです。この場合、非課税となる年金収入の目安は211万円以下まで上がります。単身世帯と比較すると、条件が大きく緩和されることがわかります。

このように、住民税が課税されるかどうかは、単純な年収額だけでは決まりません。世帯の人数や、収入の種類(給与か年金か)によって、非課税となる基準は大きく変動します。

7. 年齢とともに増加する「住民税非課税世帯」の割合

厚生労働省が公表した『令和6年国民生活基礎調査』を参考に、どの年代で住民税が「課税されている世帯」が多いのか、その割合を見てみましょう。

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合5/6

出所:厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(第131表)をもとにLIMO編集部作成

  • 29歳以下:63.0%
  • 30~39歳:87.5%
  • 40~49歳:88.2%
  • 50~59歳:87.3%
  • 60~69歳:79.8%
  • 70~79歳:61.3%
  • 80歳以上:52.4%
  • 65歳以上(再掲):61.1%
  • 75歳以上(再掲):54.4%

※ 全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含む
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む

住民税を納めている世帯の割合を年代別に見ると、30歳代から50歳代にかけては9割弱と高い水準で推移しています。

しかし、60歳代になるとその割合は79.8%に下がり、現役世代と比べて課税されている世帯が減り始めることがわかります。

さらに年齢を重ねると、この傾向はよりはっきりします。65歳以上では61.1%、75歳以上では54.4%となり、住民税が課税されていない世帯が半数近くにまで増加します。

このように、年齢が上がるにつれて住民税を納める世帯の割合が減っていく背景には、収入源の変化と税金の仕組みが関係しています。

多くの人は65歳頃から年金中心の生活に移行し、現役時代よりも収入が減少します。それに加え、65歳以上の方には公的年金等控除という所得控除が適用されるため、税金の計算上有利になる仕組みになっています。

また、遺族年金は非課税所得であることも大きな要因です。これらの制度が複合的に作用することで、年金を主な収入源とする高齢者世帯は、結果的に住民税非課税に該当しやすくなるのです。

8. 【データで見る老後】年金収入のみで生活する世帯の割合

厚生労働省の『2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況』によれば、公的年金や恩給を受け取っている世帯の中で、その収入だけで生活を成り立たせているのは全体の43.4%です。

これは、老後の生活費を公的年金や恩給だけで賄えている世帯が、半数にも満たないという実態を示しています。

総所得に占める公的年金・恩給の割合を詳しく見ると、その構成は以下のようになっています。

総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成6/6

出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給の割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給の割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給の割合が20%未満の世帯:4.0%

年金の受給額は人それぞれですが、高齢者世帯では収入と支出のバランスが取れていないことも少なくありません。

支出が収入を上回る赤字家計の世帯もあれば、最低限の生活費すら年金収入では賄えない世帯も存在します。

特に後者の場合、公的年金だけで生活を維持するのは困難であり、何らかの方法で収入を補う必要があります。このデータからは、多くの高齢者世帯が年金以外の収入源を組み合わせて生活している現実がうかがえます。

もし私的年金や預貯金に十分な余裕がないのであれば、就労による収入確保、家族からの援助、生活支援制度の活用など、早い段階から現実的な選択肢を考えておくことが大切になります。

9. まとめ:住民税非課税の基準を知り、利用できる制度を確認しよう

この記事では、住民税が非課税になる所得の基準や、給与・年金収入における具体的な目安について解説しました。

住民税が非課税となる主な条件は、次の3つにまとめられます。

1つ目は生活保護を受けていること、2つ目は障がい者・未成年者・寡婦・ひとり親で前年の所得が135万円以下であること、そして3つ目は前年の所得が自治体の定める基準額を下回ることです。

例えば、病気やケガで退職し、治療に専念している方や、再就職先が見つからず前年より所得が大幅に減った方は、住民税非課税の条件に当てはまる可能性があります。

そのため、ご自身が住む自治体の基準をあらかじめ調べておくことは、家計を管理する上で非常に重要です。

また、現役時代に比べて収入が減少しやすい高齢期には、住民税非課税世帯に該当する方も増えてきます。

住民税非課税世帯を対象とした優遇措置は、今回ご紹介したもの以外にも数多く存在します。

どのような支援や軽減策が利用できるのかを把握しておくことは、家計の負担を少しでも軽くするために役立ちます。

もし自分が対象になるか気になる場合は、まずはお住まいの自治体のウェブサイトで情報を確認したり、役所の窓口で相談してみてはいかがでしょうか。

参考資料