1.1 現行制度の課題:男女で異なる遺族厚生年金の受給要件
先述の通り、現行の遺族厚生年金は、男女で受給するための要件が異なっています。
具体的にいうと、子どものいない夫婦で夫に先立たれた場合、妻は30歳以上であれば無期給付の対象となり、生涯にわたって遺族厚生年金を受け取ることが可能です。
それに対して、子どものいない夫の場合は、55歳以上でなければ受給資格自体が認められず、年金の支給が開始されるのも60歳からと定められています。
このような差異が設けられた背景には、制度が創設された当時の社会通念が関係しています。当時は家計の主たる担い手である夫が亡くなった際に、残された家族の生活を保障することが主な目的でした。
かつては「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という役割分担が主流で、専業主婦世帯が多数を占めていたのです。
しかし、現代では共働き世帯が一般的となり、家族の形も大きく変化しました。
その結果、従来の制度設計と社会の実情との間に乖離が生じていることが、大きな課題と見なされるようになっています。
こうした社会構造の変化に対応するため、遺族厚生年金制度は2028年4月からの見直しが予定されています。
