従来の遺族厚生年金は、特定の要件を満たすことで、長期間、場合によっては生涯にわたり受給可能な制度でした。
しかし、共働き世帯の増加や家族構成の多様化が進む現代において、制度に残存する性別による取り扱いの差異が課題として浮上しています。
このような社会情勢を背景に、政府は2025年5月に年金制度改正法案を国会に提出し、その中で遺族厚生年金の見直しを提案しました。
見直しの柱の一つが、遺族厚生年金を「原則5年間の有期給付」とする新しい枠組みです。
この記事では、遺族厚生年金の「5年で打ち切り」がいつから適用されるのか、そして今後も継続して受給できるのはどのような条件の人なのかを、わかりやすく整理してお伝えします。
1. 遺族年金とは?制度の基本と受給できる人の条件
「遺族年金」とは、国民年金または厚生年金の被保険者が亡くなった際に、その家族が受け取れる公的な年金制度のことです。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類が存在します。亡くなった方の年金加入状況や遺族の状況によって、どちらか一方、あるいは両方が支給される場合があります。
ただし、実際に支給を受けるには、保険料の納付要件のほか、遺族の年齢や生計維持関係といった、定められた複数の条件をクリアする必要があります。
また、現在の遺族厚生年金制度では、男女間で受給要件に違いがある点も知っておくべきポイントです。
では、なぜ遺族厚生年金は、性別によって受給の条件が異なっているのでしょうか。
1.1 現行制度の課題:男女で異なる遺族厚生年金の受給要件
先述の通り、現行の遺族厚生年金は、男女で受給するための要件が異なっています。
具体的にいうと、子どものいない夫婦で夫に先立たれた場合、妻は30歳以上であれば無期給付の対象となり、生涯にわたって遺族厚生年金を受け取ることが可能です。
それに対して、子どものいない夫の場合は、55歳以上でなければ受給資格自体が認められず、年金の支給が開始されるのも60歳からと定められています。
このような差異が設けられた背景には、制度が創設された当時の社会通念が関係しています。当時は家計の主たる担い手である夫が亡くなった際に、残された家族の生活を保障することが主な目的でした。
かつては「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という役割分担が主流で、専業主婦世帯が多数を占めていたのです。
しかし、現代では共働き世帯が一般的となり、家族の形も大きく変化しました。
その結果、従来の制度設計と社会の実情との間に乖離が生じていることが、大きな課題と見なされるようになっています。
こうした社会構造の変化に対応するため、遺族厚生年金制度は2028年4月からの見直しが予定されています。
2. 【2028年4月改正】遺族厚生年金が5年で打ち切りに?対象者を解説
現行の遺族厚生年金制度は、配偶者を亡くした時点の年齢や性別によって、給付内容や条件に差が設けられています。
この性差による取り扱いの違いを是正するため、2028年4月から遺族厚生年金制度が改正される見込みです。
見直し後は、配偶者と死別した時点で60歳未満かつ子どもがいない場合、性別に関わらず遺族厚生年金は原則として5年間の有期給付となります。これが、いわゆる「5年で打ち切り」といわれる内容です。
この制度改正により、これまで問題視されてきた男女間の受給条件の格差は、大幅に是正されることになります。
ただし、改正の影響はすべての人に一様に及ぶわけではなく、「原則5年で終了する人」と「これまで通り継続して受給できる人」に分かれることになります。
次の章では、遺族厚生年金を「ずっともらえる人」の具体的な条件について見ていきましょう。
3. 制度改正後も遺族厚生年金を継続して受給できる人の条件
以下のいずれかの条件に当てはまる方は、今回の制度見直しの対象外となります。
- すでに遺族厚生年金を受給中の方
- 60歳以降に遺族厚生年金の受給権を得る方
- 18歳になった年度の3月31日までの子どもを養育している方
- 2028年度中に40歳以上になる女性
これらの条件に該当する方々は、制度改正後も従来のルールが適用され、遺族厚生年金の受給資格や支給要件に変更はありません。
4. 遺族厚生年金「5年打ち切り」の対象となるのはどんな人?
制度改正が適用されると、年齢要件が段階的に見直されます。配偶者と死別した時点で60歳に満たず、かつ子どもがいないケースでは、遺族厚生年金の支給は原則として5年間に限定される見込みです。
この見直しによって、特に女性は、制度全体として改正の影響を受けるケースが増加すると予測されます。
その一方で、これまで55歳未満では受給対象外だった男性にとっては、今後は年齢に関係なく遺族厚生年金の受給が可能になるという側面もあります。
なお、制度改正の適用開始は男女ともに2028年4月ですが、女性への影響が急激にならないよう、約20年という期間をかけて段階的に見直しが進められる予定です。
以上の点を踏まえると、2028年度の時点で妻が40歳未満の世帯では、将来的に遺族厚生年金の受給条件が大きく変わる可能性があり、制度改正の影響を比較的受けやすいといえるでしょう。
5. 遺族厚生年金の制度改正に向けて今からできる備えとは
この記事では、遺族厚生年金の「5年で打ち切り」がいつから始まるのか、そして改正後も継続して受給できる人の条件について解説しました。
遺族厚生年金は2028年4月からの制度見直しが予定されており、60歳未満で子どもがいない状態で配偶者を亡くした場合、原則として5年間の有期給付に変更されます。
他方で、すでに受給中の人や60歳以上で受給権が発生する人などは、今回の改正による影響は受けません。
制度が実際に適用されるまでにはまだ時間があるため、この期間にしっかりと準備を進めておくことが大切です。
例えば、自身が厚生年金に加入して働くことで、将来の年金額を増やし、生活基盤をより強固にできます。
また、NISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用した資産形成や、生命保険など民間の保障内容を見直すなど、ご自身のライフスタイルや家計状況に合わせた備えを検討することも重要です。
制度の変更点を正しく理解し、公的年金だけに頼らない対策を講じておくことが、将来の安心へとつながるのではないでしょうか。※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 厚生労働省「遺族年金制度等の見直しについて」
- 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 日本年金機構「遺族年金」
- 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
- LIMO「2028年4月から「遺族厚生年金の見直し」が施行予定。遺族厚生年金が「5年で打ち切りになる人」「ずっともらえる人」とは?」
マネー編集部社会保障班