「無印良品」は、日用品から食品まで私たちの生活にすっかり定着しています。

近年は「カレー屋」と称されることがあるほど食品でも人気ですが、商品ラインナップが大きく変わったわけではないのに、良品計画の業績は絶好調を維持しています。

一体なぜ、見慣れた商品展開のままでこれほどの成長を遂げ、高い利益率を叩き出しているのでしょうか。

実はその裏には、私たちが普段見ている「日本の無印良品」とは全く異なる、驚異的な海外ビジネスの躍進がありました。

この理由について、元機関投資家の泉田良輔氏がYouTubeチャンネル「イズミダイズム」にて良品計画の事業構造と財務体質を分析し、業績好調の本当の理由を解説します。

この記事のポイント

  • 良品計画の業績好調を牽引しているのは、国内事業ではなく急成長する「海外事業」である
  • 海外売上は国内に迫る規模に拡大し、特に東アジア事業は利益率20.3%という高い収益性を誇る
  • 中国をはじめとする海外市場には依然として大きな出店余地があり、今後の成長の源泉となっている

1. 見慣れた「無印良品」が絶好調な理由とは?

シンプルで飽きのこないデザインの日用品やアパレル、そして豊富な種類の食品など、日本の消費者にとって無印良品は非常に身近な存在です。

動画の冒頭でも、泉田氏は自身の無印良品での買い物事情について触れ、アパレルだけでなく食品、特に不揃いバウムや多種多様なレトルトカレーを好んで購入していると明かしました。

「無印って言うとインテリアとかアパレルって印象あるけど、最近僕の中ではもうカレー屋だね」

このように、私たちの日常にすっかり溶け込んでいる無印良品ですが、親会社である良品計画の直近の業績は、まさに「絶好調」と呼ぶにふさわしい数字を叩き出しています。

同社が発表した2026年8月期第2四半期(中間期)の決算によると、営業収益(売上高)は4,385億円で前年同期比14.8%増、本業の儲けを示す営業利益は450億円で同24.8%増を記録しました。

売上が伸びているだけでなく、利益がそれ以上のペースで伸びる「増収増益」のトレンドが続いています。

良品計画の業績好調の謎を解く鍵は、私たちが普段目にしている国内店舗ではなく、海を渡った先にある「海外事業」に隠されていたのです。

良品計画のセグメント別営業収益構成比(2026年8月期上期)1/4

良品計画のセグメント別営業収益構成比(2026年8月期上期)

出所:良品計画「2026年8月期上期決算説明会資料」(2026年4月10日)を基にイズミダイズム作成

2. 【良品計画】国内に迫る海外売上と、驚異的な利益率の構造

良品計画の事業構造を分解していくと、同社がすでに立派な「グローバル企業」であることがわかります。

上期の営業収益4,385億円の内訳を見ると、国内事業が2,443億円であるのに対し、海外事業の合計は約1,900億円に達しています。

つまり、会社全体の売上の半分弱はすでに海外で稼ぎ出している計算になります。海外では「MUJI」というブランド名で広く展開されており、世界的な認知度を高めています。

さらに泉田氏が注目したのは、国内と海外における「成長スピード」の違いです。

「日本の売上は伸びてはいますけど8%増。今度海外事業で行くと25%とか伸びてるんですよ」

実際のデータを見ると、国内事業の営業収益が前年同期比8.1%増であったのに対し、海外で最も規模の大きい東アジア事業は23.3%増、東南アジア・オセアニア事業に至っては35.4%増という驚異的な伸びを示しています。

しかし、海外事業のすごさは売上の成長率だけにとどまりません。泉田氏がプロの投資家として特に高く評価したのは、その「利益率の高さ」です。

国内事業の営業利益率が11.3%であるのに対し、東アジア事業の営業利益率はなんと20.3%に達しています。小売業において、営業利益率が20%を超えるというのは非常に高い水準です。

なぜ海外においてこれほどまでに稼げる構造になっているのでしょうか。

泉田氏は、海外市場において「MUJI」ブランドがしっかりと訴求できており、適切な価格コントロールができていることが要因の一つだと分析します。さらに、企業の収益構造という観点から、次のように解説しました。

「国内だといろんな固定費を国内でカバーしてる可能性は全然あるんだけども、伸びてるところでしっかり利益率が高くなってるっていうのは、この会社の将来の収益を予想する上ではすごくポジティブな材料ですね」

企業は、本社機能やシステムの維持など、様々な「固定費」を抱えています。良品計画の場合、そうした基盤となる固定費の多くを売上規模の大きい国内事業で吸収している可能性があります。

そのため、海外事業では売上が伸びれば伸びるほど、利益が手元に残りやすい(利益率が高くなる)構造になっていると考えられるのです。

【動画で解説】見慣れた「無印良品」が今、世界でバカ売れしている理由

地域別 営業利益率の比較(2026年8月期上期)2/4

地域別 営業利益率の比較(2026年8月期上期)

出所:良品計画「2026年8月期上期決算説明会資料」(2026年4月10日)を基にイズミダイズム作成

3. なぜ「中国・アジア市場」が重要なのか?

良品計画の海外事業において、圧倒的な存在感を放っているのが「東アジア事業」、とりわけ中国大陸を中心とした市場です。

泉田氏は「一番大事なのはこの東アジア地域。簡単に言うと中国ですね」「そこがやっぱり大きいので、そこがどうかっていうのがこの会社を見る時にはすごく大事になってきます」と、海外売上の中核を担うのが中国市場であると指摘しています。

なぜ日本の小売企業にとって、中国をはじめとするアジア市場がこれほどまでに重要なのでしょうか。

まず最大の理由は、圧倒的な「人口の多さ」と、経済成長に伴う「可処分所得(自由に使えるお金)の大きさ」です。購買力を持った消費者が多数存在する市場は、小売業にとって最大の魅力です。

さらに、外交面でのニュースが報じられることはあっても、消費者のレベルでは「日本のブランドが好き」という層が厚く、MUJIのシンプルなデザインや品質の高さがしっかりと受け入れられている土壌があります。

また、泉田氏は「地理的な強み」という事業運営上のメリットも指摘します。

アパレル製品などの多くはアジア地域で生産されています。生産地と消費地が近いことは、物流コストの削減やサプライチェーン(供給網)の効率化に直結します。

良品計画は、アジアに生産拠点を持ちながら、同時にそこを巨大な消費市場としても活用できるという、地の利を最大限に生かしたビジネスモデルを構築しているのです。

【動画で解説】見慣れた「無印良品」が今、世界でバカ売れしている理由

4. まだまだ続く?海外市場における大きな「出店余地」

東アジア事業の利益率が20%を超えているという事実は、投資家にとって非常に魅力的です。

しかし、株式投資の視点から見ると、「その高い成長が今後も長く続くのか?」という点が最も重要になります。海外市場において、良品計画はあとどれくらい成長できるのでしょうか。

泉田氏は、その成長余地を推し量るための具体的な指標として「店舗数」に注目しました。

2026年2月末時点での良品計画の店舗数は、国内が700店舗であるのに対し、海外はすでに760店舗と国内を上回っています。そのうち、最も注力している中国大陸の店舗数は437店舗です。

この半年間(上期)の出退店の動向を見ると、中国大陸では新たに30店舗を出店する一方で、15店舗を閉店(クローズ)しています。

これは単に店舗を増やし続けるだけでなく、採算の合わない店舗を閉め、より良い立地に新しい店舗を出す「スクラップ&ビルド」を適切に行いながら、着実に純増(差し引き15店舗増)させていることを意味します。

では、中国に437店舗というのは、市場規模から見て多いのでしょうか、少ないのでしょうか。泉田氏は、同じく日本を代表するグローバル小売企業であるファーストリテイリング(ユニクロ)の事例を引き合いに出して、今後のポテンシャルを解説しました。

「ユニクロだともう国内の店舗よりも中国の店舗数の方が多いみたいな状況になってましたよね。(中略)国内もまだ増やせてるし、中国もマーケットの規模というか住んでる人の数を考えると、まだまだ国内よりも増やしていける可能性は全然あると思う」

ユニクロがすでに中国で国内以上の店舗網を築いていることを考えれば、無印良品の437店舗という数字は、中国の広大な国土と人口を考慮すると、まだまだ拡大の初期段階にあると見ることもできます。

さらに、成長の舞台は中国だけではありません。東南アジア・オセアニア事業も高い成長率を示しており、ここでMUJIブランドがさらに浸透すれば、企業全体としてのアップサイド(上値余地)も期待できると泉田氏は評価しています。

中国大陸における店舗のスクラップ&ビルド(2026年8月期上期)3/4

中国大陸における店舗のスクラップ&ビルド(2026年8月期上期)

出所:出所:良品計画「2026年8月期上期決算説明会資料」(2026年4月10日)を基にイズミダイズム作成

【動画で解説】見慣れた「無印良品」が今、世界でバカ売れしている理由

5. グローバル企業が抱えるリスクと今後の展望

海外、特に特定の地域への依存度が高まることは、企業にとって大きな成長の源泉となる一方で、新たなリスクも生み出します。

インタビュワーから「地政学的なリスクや政治情勢が業績に響くのではないか」という懸念が示されると、泉田氏もそれに同意しつつ、グローバル企業としての宿命と対策について語りました。

「それはもうグローバル企業になったら避けて通れない。なのでやることは、やっぱり国や地域の分散っていうのが必要なので。(中略)ヨーロッパ、北米とかでしっかりブランディングしてお店出せるのかっていうのも、多分この会社がすごく関心のあるポイントかなと思う」

中国やアジア市場での成功を確固たるものにしながらも、今後は欧米市場などでもMUJIブランドを定着させ、収益の柱を複数持つことが、長期的な企業価値の向上には不可欠だという指摘です。

最後に泉田氏は、良品計画という企業のビジネスモデルを踏まえ、株式市場(投資家)が同社に何を期待しているのかを総括しました。

「しっかり無印良品の店舗を展開できる国や地域を探して、その各国で店舗数を増やすってことを株主が期待しているので、あんまり配当とかを期待するような銘柄ではないかなと思います」

良品計画は、高い利益率を叩き出せる海外事業という「強力な武器」を持っています。投資家が求めているのは、手元の現金を配当として還元することよりも、その資金を新たな海外店舗の出店に投資し、さらなる利益成長を実現することなのです。

私たちが身近に感じている「カレーのおいしい無印良品」は、今や世界を舞台に高収益を稼ぎ出す、日本を代表するグローバル成長企業へと力強く変貌を遂げています。

6. イズミダイズムとは

イズミダイズムは、元機関投資家である泉田良輔の個人YouTubeチャンネルです。プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。

新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。

教科書的な知識だけでなく、プロの実体験に基づいた分析を通じて、ビジネスパーソンや個人投資家に役立てていただけるコンテンツをお届けしています。

元機関投資家 泉田良輔のシテンで語る金融と経済の今4/4

元機関投資家 泉田良輔のシテンで語る金融と経済の今

出所:Youtubeチャンネル「イズミダイズム」

参考資料