初夏のこの季節は、これから迎える梅雨や本格的な夏に向けて、体調管理はもちろん、エアコン稼働による光熱費の増加など、日々の出費の変化が気になる時期でもあります。

また、例年6月には「年金額改定通知書」や「住民税の決定通知書」などが手元に届くため、ご自身やご家族の家計・社会保障と改めて向き合うには最適なタイミングと言えるでしょう。

「人生100年時代」という言葉が定着する一方で、公的年金だけで老後生活を維持できるのか、現在の貯蓄がどこまで持つのかといった不安を抱える人は少なくありません。

本記事では、2026年5月に公表されたばかりの総務省「家計調査(貯蓄・負債編)」の最新結果も交えながら、75歳以上の後期高齢者夫婦の「生活費」「年金」「貯蓄」の現状を具体的な数字から確認していきます。さらに、後期高齢者医療制度の仕組みや医療費負担の概要についても整理します。

1. 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】ふたり暮らしの生活費はどの程度必要なのか?

まず確認したいのが、総務省「家計調査 家計収支編(2024年)」に掲載されている、75歳以上・無職の二人以上世帯にあたる後期高齢シニア夫婦の家計状況です。

対象世帯の平均世帯主年齢は80.8歳となっており、持ち家率は95.4%と極めて高い水準となっています。

1.1 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】無職世帯:毎月の収入と支出

【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】無職世帯の生活費1/7

【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】無職世帯の生活費

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

実収入: 25万2798円

  • うち社会保障給付(主に公的年金給付): 21万1289円

実支出:28万23円


消費支出: 24万8460円

  • 食料: 8万33円
  • 住居: 1万6257円
  • 光熱・水道: 2万4312円
  • 家具・家事用品: 1万547円
  • 被服及び履物: 5142円
  • 保健医療: 1万7213円
  • 交通・通信: 2万6294円
  • 教育: 142円
  • 教養娯楽: 2万2322円
  • その他の消費支出: 4万6198円

非消費支出: 3万1563円

  • うち直接税: 1万1663円
  • うち勤労所得税: 519円
  • うち個人住民税: 3206円
  • うち他の税: 7938円
  • うち社会保険料: 1万9894円
  • うち公的年金保険料: 1966円
  • うち健康保険料: 1万494円
  • うち介護保険料: 7352円

毎月の家計収支

  • 実収入:25万2798円
  • 実支出:28万23円
  • 家計収支:▲2万7225円(赤字)
  • 黒字率:▲12.3%
  • 平均消費性向(※1):112.3%
  • エンゲル係数(※2):32.2%

調査結果を見ると、後期高齢シニア夫婦の家計は、月平均で約2万7000円の赤字となっています。主な収入源を年金に依存する世帯では、毎月の生活費を年金だけでまかないきれず、継続的に貯蓄を取り崩している状況がうかがえます。

毎月発生する不足分をどのように補うかは、老後の暮らしの安定を左右する重要なポイントです。一回あたりの赤字額は大きく見えなくても、長期化すれば家計への影響は徐々に広がっていきます。

なお、家計の余裕度を読み解く際には、次の2つの指標も重要になります。

  • ※1 平均消費性向(可処分所得に対する消費支出の割合)
  • ※2 エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合)

これらの数値を見ることで、限られた収入のなかで生活費がどの程度固定化しているのか、家計にどれほど余裕があるのかを把握しやすくなります。

特にこれから迎える夏場は、熱中症予防のためのエアコン稼働などにより、光熱費(平均2万4312円)がさらに上振れしやすい時期です。

主な収入源を年金に依存する世帯では、こうした季節ごとの出費の増加も含め、継続的に貯蓄を取り崩している状況がうかがえます。

1.2 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】家計支出に見られる特徴

支出の特徴1:住居費の負担が小さい

後期高齢シニア夫婦世帯では、持ち家率が95.4%と非常に高く、住宅ローン返済中の世帯は1.6%にとどまっています。

多くの世帯がすでに住宅取得に関する大きな支払いを終えているため、家賃や住宅ローンなどの住居費負担は限定的です。

これは現役世代の家計と比べた際の大きな違いであり、住居費負担の軽さが老後家計を支える一因となっています。
ただし、その反面、他の支出が増えた際に住居費で調整しにくいという特徴もあります。

支出の特徴2:介護関連費用は反映されていない

家計調査で集計される支出は、日常生活にかかる一般的な支出が中心です。そのため、介護サービス利用料や介護用品費など、介護関連の支出は基本的に反映されていません。

将来的に介護が必要になれば、一時的または継続的に支出が増える可能性があります。その結果、現在の赤字幅がさらに拡大し、貯蓄を取り崩すペースが速まることも十分考えられます。

1.3 「最低限」と「ゆとりある生活」の差に目を向ける

生命保険文化センターの「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版)」によると、夫婦2人世帯の老後生活費の目安は次の通りです。

  • 最低限の日常生活費:月平均23万9000円
  • ゆとりある老後生活費:月平均39万1000円

一方で、実際の後期高齢者夫婦の収入は月25万円前後となっており、最低限の生活費をやや上回る程度にとどまっています。

もし「ゆとりある生活」を想定する場合、その差額は毎月約13万円にも広がります。

この差をどう受け止め、どの水準で老後生活を設計するかによって、将来の満足度や安心感は大きく変わってきます。

そこで次に注目したいのが、リタイア後の暮らしを支える「年金」と「貯蓄」の関係です。順番に確認していきましょう。