2024年1月にスタートした新NISAの口座開設数は、2025年12月末時点で2826万を突破しました。
政府は「資産所得倍増プラン」において、2027年12月末までにNISA総口座数を3400万口座に拡大する目標を掲げています。
新NISAの開始から2年が経過した現在、すでに目標の8割を超えるペースで順調に開設数が伸びており、広く一般に普及していることが伺えます。
金融庁「NISAの利用状況(速報値)」によると、2025年12月末時点でのNISA総買付額も累計で71兆円に達しています。
物価高と老後資金への不安が重なるなか、新NISAは資産形成の選択肢の1つとして、存在感を高めていることがわかります。
しかし、新NISAを始めるかどうかで悩んでいる人も多くいます。
「投資は怖い」「銀行預金で十分では」という声も根強く、銀行に毎月コツコツ預けている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、月5万円を20年間「銀行預金」と「新NISAで積立投資」した場合の資産差をシミュレーションした結果を解説します。
あわせて、老後の資産寿命を延ばすための3つの戦略も紹介するので、参考にしてみてください。
1. 月5万円×20年シミュレーション:銀行預金とNISAで「1005万円」の差
早速、月5万円を20年間積み立てた場合の差をシミュレーションします。
今回は、銀行預金の利率を年0.5%、新NISAでの積立投資利回りを年6%として、金融庁の「つみたてシミュレーター」で計算しました。
シミュレーションの結果は以下の通りです。
1.1 【ケース①:銀行預金(年利0.5%)】
- 元本:1200万円
- 運用収益:62万円
- 最終資産:1262万円
1.2 【ケース②:新NISAで積立投資(年利回り6%)】
- 元本:1200万円
- 運用収益:1067万円
- 最終資産:2267万円
20年間の積立元本は、どちらも1200万円で同じです。
しかし最終的な資産額は約1005万円の差となり、置き場所を変えるだけで資産が約1.8倍に膨らむ計算になります。
もちろん、投資での利回りは保証されているわけではありません。
ただし、過去の歴史的な値動きを見ると、世界株式をベンチマーク(指標)とする投資信託などで15年〜20年といった長期運用を行った場合、年利6%を上回るリターンを残した実績は多く見られます。
とはいえ、これらはあくまで過去のデータであり、今後の運用成果を約束するものではない点には注意が必要です。
一方で、日本の銀行預金は近年少しずつ金利が引き上げられているものの、投資利回り並みの年利6%にまで達する可能性は極めて低い状況であると考えられます。
そのため、インフレ(物価上昇)などでお金の価値が目減りするリスクに備える意味でも、リスクを正しく理解した上で、資産の置き場所として税制優遇制度の新NISAなどを活用していくことも選択肢の1つとしてあるでしょう。
2. なぜ1000万円超の差が生まれる?「複利」と「インフレリスク」
前述したシミュレーション結果によると、20年間の積立元本はどちらも1200万円ですが、最終的な資産額は約1005万円の差となりました。
これほどの差が生まれる背景の1つに、複利の効果が影響しています。
また、「インフレリスク」についても確認しておきましょう。
2.1 「複利の効果」が長期で効くことが期待できる
新NISAでの積立投資は、運用で得た利益を再投資することで「利息に利息がつく」複利の仕組みが働きます。
20年という期間では、後半になるほど運用収益のスピードが加速し、元本に迫る1067万円もの利益が積み上がりました。
一方の銀行預金は、年0.5%の利息に対して20.315%の源泉徴収(所得税・復興特別所得税・住民税)がかかるため、実質利回りは年0.4%弱まで下がります。
元本割れのリスクはないものの、20年積み立てても元本の5%程度しか増えません。
2.2 銀行預金には「インフレで実質目減り」のリスクがある
「銀行預金は元本が保証されているから一番安全だ」と考える方は少なくありません。
しかし、そこに見落とされがちなのが「インフレ(物価上昇)のリスク」です。
物価が上がると、お金の額面が変わらなくても、そのお金で買えるモノの量が減ってしまいます。
つまり、実質的にお金の価値が下がってしまうということです。
総務省の消費者物価指数によると、2021年から2025年までの5年間で、日本の物価は約12%上昇しました。
もし、100万円を金利がほぼ0%の口座に預けたままにしていた場合、通帳の数字は100万円のままですが、実質的な購買力(お金の価値)は約12万円分も失われた計算になります。
預金通帳の数字が減っていなくても、物価が上がる局面では、お金をそのまま持っているだけで「実質的に損をしてしまう状態」になり得るという点は、資産の置き場所を考える上でとても重要なポイントです。
3. 「資産寿命」を延ばす3つの戦略とは?
老後資金の議論で重要なのが「資産寿命」という考え方です。
資産寿命とは、退職後に貯蓄を取り崩しながら生活した場合に、その資産が何歳まで持つかを示す期間です。
資産寿命を延ばす方法は、次の3つに整理できます。
3.1 ①取り崩しのペースを抑える
毎月の取り崩し額を小さく抑えることができれば、その分だけ資産寿命は長くなります。
まずは日々の生活費のなかで、無理なく節約できる項目がないか確認してみましょう。
特に固定費は、一度削減すればその後も継続して高い節約効果を得られます。
スマホの通信料金や各種保険料、サブスクリプションサービスなどに見直せる余地がないかチェックしてみるのがおすすめです。
3.2 ②運用しながら取り崩す
たとえば、退職したからといってすべての貯蓄を現金化するのではなく、一部の資産を運用し続けることで、運用益を得ながら取り崩していくことができます。
これにより、ただ貯蓄を減らしていくよりも資産寿命を延ばすことが期待できます。
なお、新NISAは年齢の上限制限がありません。
50代・60代からスタートしても遅すぎるということはなく、「運用しながら取り崩すスタイル」へ移行するための有効な手段として活用できます。
ただし、資産運用は利益が期待できるだけでなく、元本割れリスクや価格変動リスクなどが伴うことをよく理解しておくことが大切です。
リスクとリターンは比例する傾向にあるため、ご自身のリスク許容度や保有している資産全体のバランスを考慮したうえで資産運用を検討するようにしましょう。
3.3 ③年金の受給開始を遅らせる(繰下げ受給)
公的年金の受給開始を65歳から1カ月遅らせるごとに、年金額が0.7%ずつ増額されます。
最大75歳まで遅らせれば、月額が84%増えた年金を生涯受け取れます。
老後収入が増えることにより、資産寿命を延ばすことができるでしょう。
ただし、家計の状況やライフスタイルなどを考慮したうえで選択することが大切です。
4. お金の置き場所を見直して、資産寿命を延ばそう
あくまでもシミュレーション結果ではありますが、月5万円×20年の積立では、銀行預金と新NISAの最終資産額に約1005万円もの差が生まれました。
物価が上昇するインフレ局面においては、「銀行預金=それだけで安全」とは一概に言い切れない側面もあります。
ただし、新NISAは元本が保証されているわけではなく、元本割れや価格変動リスクも伴います。
そのため、生活防衛資金として最低6カ月分の生活費を銀行預金で確保したうえで、それ以外の余裕資金を新NISAに振り分けるなどの選択肢もあるでしょう。
老後の資産寿命を延ばすには、お金の置き場所を見直すこと、退職後も運用を続けること、年金の繰下げを活用するなど、ライフスタイルや家計に合った選択をしていくことが大切です。




