公的年金には老後の生活を支える老齢年金だけでなく、万一の場合に遺族を経済的に支援する遺族年金もあります。配偶者が生計の主体者である場合、「もし配偶者に万一のことがあったら、遺族年金はいくらくらいもらえるのか」が気になる人もいるでしょう。
本記事では、遺族年金の受給額について解説します。遺族基礎年金と遺族厚生年金の違いや子どもがいる場合の受給額シミュレーションも紹介しますので、万一の場合の家計を考えるときの参考にしてください。
1. 【遺族年金は2種類】遺族でいちばん「優先順位」が高い人は誰?
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。遺族基礎年金は次の要件を満たす子どもがいる場合、死亡者に生計を維持されていた配偶者または子どもに支給される年金です。
- 18歳の年度末までの子ども(一般的に高校卒業までの子ども)
- 20歳未満で障害等級1級または2級の子ども
遺族厚生年金は、厚生年金に加入している人(または加入していた人)が死亡した場合、一定要件を満たす遺族の中で優先順位の高い人に支給される年金です。子どもがいる場合、遺族厚生年金に加えて遺族基礎年金も受給できます。
ただし、死亡した人が保険料の納付要件を満たしていない場合など、遺族年金が支払われないケースもあります。また、自営業者など国民年金にのみ加入していた人が亡くなった場合、遺族厚生年金の支給はありません。
2. 【遺族基礎年金の計算方法】老齢年金の満額と同じ基本額「84.7万円」
遺族基礎年金の基本額は、老齢基礎年金の満額と同じ「84万7300円(2026年度、毎年改定)」です。さらに、子どもが人数に応じて以下の金額(子の加算額)が加算されます。
- 子の加算額(1人目・2人目):1人当たり24万3800円
- 子の加算額(3人目以降):1人当たり8万1300円
要件を満たす遺族が配偶者と子ども1人の場合、遺族基礎年金額は109万1100円(=84万7300円+24万3800円)です。子どもが高校を卒業するなどして要件を満たす子どもがいなくなると、遺族基礎年金の支給は終了します。
ここまで、遺族年金の種類と遺族基礎年金額の計算方法について解説しました。次章では、遺族厚生年金額の計算方法を紹介するとともに、遺族が配偶者と子ども2人のケースの受給額をシミュレーションします。
3. 【遺族厚生年金の計算方法】厚生年金加入が「25年未満」の場合、年金額はどうなる?
遺族厚生年金は、亡くなった人の厚生年金の加入期間や加入中の収入によって決まります。以下の計算式で「老齢厚生年金の報酬比例部分」を計算し、その3/4が受給額となります。
計算は少し難しいため、厚生年金の加入期間と加入中の平均報酬(平均標準報酬月額)別の「遺族厚生年金額の目安」を参考にしてください。なお、厚生年金加入期間が25年未満の場合、25年加入したものとして年金額を計算します。
(遺族厚生年金額の目安)
4. 【遺族年金のシミュレーション】配偶者と子ども2人「もらえる金額はいくら?」
遺族年金の受給額は、亡くなった人の年金制度加入状況によって異なります。2つのケースに分けて受給額をシミュレーションします。
4.1 死亡者が国民年金のみに加入していたケース
亡くなった人が国民年金のみに加入していた場合、支給されるのは遺族基礎年金だけです。子の加算を加えて受給額は133万4900円です。
受給額=遺族基礎年金の基本額(84万7300円)+子の加算額(24万3800円×2)
=133万4900円
4.2 死亡者が厚生年金に加入していたケース
亡くなった人が厚生年金に加入していた場合、支給されるのは遺族基礎年金と遺族厚生年金です。厚生年金に30年加入して、平均標準報酬月額が50万円と仮定します。それぞれの受給額は次の通りです。
- 遺族基礎年金の受給額:133万4900円(子の加算額を含む)
- 遺族厚生年金の受給額:前述の目安より約74万円
遺族基礎年金と遺族厚生年金を合計すると、受給額は約207万4900円となります。
なお、2025年6月に成立した年金制度改正法により、これから遺族年金制度が大きく見直される予定です。ただし、要件を満たす子どもがいる場合の受給額への影響は限定的です。
5. まとめにかえて
遺族年金は、万一のときに残された家族の生活を支える大切な公的保障です。「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2階建てで、亡くなった人が加入していた年金制度と要件を満たす子どもの有無で受給額が変わります。
配偶者と子ども2人の場合、国民年金のみ加入なら年額約133万円、厚生年金加入なら遺族基礎年金に遺族厚生年金が上乗せされます。
万一の場合に備えて、実際に遺族年金の受給額をシミュレーションし、不足する遺族の生活費をどのように準備するかを検討してみましょう。家族全体で収入を増やす、民間の生命保険を活用するなどの対策が考えられます。
参考資料
西岡 秀泰