4. 長崎屋・ユニーの成功体験と新業態「ロビン・フッド」
投資家目線で見ると、「現場の個人の能力に依存するやり方で、本当に買収した企業を立て直せるのか?」という疑問が湧くかもしれません。しかし、PPIHにはこれを証明してきた強力な「トラックレコード(過去の実績)」があります。
過去に経営破綻した「長崎屋」や、総合スーパーの「ユニー」を買収した際にも、PPIHは自社のDNAを注入し、見事に業績をV字回復させてきました。泉田氏は、会社側もこの実績に絶対的な自信を持っていると指摘します。
「ユニーや長崎屋での実績を生かしたPMIの推進により、統合効果を早期に顕在化させてまいりますって言ってるんだよね」
PPIHは現在、中期経営計画「Double Impact 2035」を掲げ、2035年までに売上高4.2兆円、営業利益3,300億円という壮大な目標を設定しています。そして、その成長の柱の一つとして「M&A戦略」を明確に位置付けているのです。
さらに、今回のOlympic買収は、PPIHが新たに展開する「ロビン・フッド」という新業態の加速に直結します。「ロビン・フッド」とは、PPIHが2026年4月から展開を始める「食品強化型のディスカウントストア」です。
PPIHはこの新業態を2035年までに200〜300店舗展開する計画を立てています。Olympicの既存店舗を、ドン・キホーテやMEGAドン・キホーテ、そしてこの「ロビン・フッド」へと業態転換していくことで、首都圏での出店スピードを一気に引き上げる狙いがあるのです。
5. 【比較】Trialによる西友買収とPPIHの戦略の違い
ここで視点を少し広げ、小売業界全体の再編の動きを見てみましょう。読者の皆様もご記憶に新しいかもしれませんが、2025年3月にはディスカウントストア大手のトライアルホールディングス(Trial)が、大手スーパーの「西友」を買収すると発表し、大きな話題となりました。
同じ小売業界の大型再編ですが、泉田氏の解説や公開情報を紐解くと、両者のディール(取引)には明確な違いがあります。
Trialによる西友買収は、取得価額が約3,800億円という巨額の「現金」を用いた買収でした。西友の売上高は約4,836億円、店舗数は242店舗という非常に大規模な案件です。
一方、今回のPPIHによるOlympic買収は「株式交換」という手法が取られています。具体的には「Olympic株式1株に対して、PPIH株式1.18株を割り当てる」という条件で、2026年7月1日に効力が発生する予定です。
【動画で解説】なぜPPIHは業績不振のスーパーを買収するのか?
手元の現金を大きく減らすことなく、自社の高い株価(株式の価値)を対価として企業を買収できるのは、PPIHの業績と株価が好調だからこそ成せる業だと言えます。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日