2. なぜ業績不振のOlympicを買うのか?3つの戦略的理由
業績が厳しく、店舗の魅力が薄れていると指摘されるOlympicを、なぜPPIHは買収するのでしょうか。泉田氏は、PPIH側が発表した資料を基に、大きく3つの戦略的意図があると分析します。
2.1 首都圏における「カニバリ」のない店舗網の獲得
1つ目の理由は、Olympicが持つ首都圏の店舗ネットワークです。Olympicの店舗の約3分の2は東京都内にあります。小売業において、首都圏の優良な立地を新たに開拓することは非常に困難です。
泉田氏は、PPIHの資料を読み上げながら、この立地の価値を次のように解説します。
「商圏や立地条件を踏まえた検討の結果、PPIHグループの既存店舗との競合が想定されるケースは限定的。店舗ネットワークの拡大が可能であると判断してます」
既存のドン・キホーテ店舗と商圏が被る(カニバリゼーションが起きる)ことが少ないため、Olympicの店舗をそのままPPIHグループの新しい拠点として活用できるというわけです。
2.2 非食品分野における専門性の取り込み
2つ目の理由は、Olympicが持つ独自の人材とノウハウです。Olympicは自転車やペット用品、自動車部品など、特定の非食品分野において専門知識を持つスタッフを抱えています。
現在、ドン・キホーテが手薄なこれらのカテゴリーの専門家がグループに加わることで、PPIH全体の非食品分野の競争力が強化されると泉田氏は指摘します。
【動画で解説】なぜPPIHは業績不振のスーパーを買収するのか?
2.3 調達力(バーゲニングパワー)の強化
3つ目の理由は、規模の経済を活かした仕入れコストの削減です。2社が統合することで、食料品や日用品の仕入れ規模が大きくなり、メーカーや卸売業者に対する価格交渉力(バーゲニングパワー)が強まります。
これにより、さらなる「安さ」を消費者に提供できる基盤が整うのです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日