ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)と本田技研工業株式会社(以下、Honda)の合弁会社であるソニー・ホンダモビリティ株式会社(以下、SHM)は、2026年4月21日、事業を縮小する方針を発表しました。

SNSでは、日本のものづくりを代表するソニーとホンダの協業が迎えている苦境に「夢物語で終わってしまった」と落胆の声が広がっています。

1/5

出所:ソニー・ホンダモビリティ株式会社

出所:ソニー・ホンダモビリティ株式会社

1. 事実上の事業休止か。従業員は原則全員を親会社に再配置

今回の事業縮小は、2026年3月25日に販売が間近に迫ったAFEELAの発売中止を発表したことに端を発しています。今後の方針は協議の上で決定するとしていましたが、4月21日に「事業縮小」という決断を下すことになりました。

事業縮小とは言いつつも、内容としては事実上の事業休止といえるものです。

SHMに所属する400名(2026年4月時点)の従業員は「本人の希望を踏まえた上で、原則として全員を両親会社等へ再配置する」としており、SHMとして事業に携わる人員はいなくなります。

2/5

出所:ソニー・ホンダモビリティ株式会社

出所:ソニー・ホンダモビリティ株式会社

事業縮小を決断した方針の理由について、SHMは以下のようにコメントを出しています。

「今後の事業の方向性について3社で検討を重ねた結果、SHMの設立趣旨に基づいた商品やサービスの市場投入について、既存の枠組みの下では、短中期的に実現可能な手段を見出すことが困難であるとの結論に至った」

ただ、完全な撤退ではなく、

「変化する事業環境を踏まえながら、来たる高度な運転支援システムが主流となる時代に向け、ソフトウェアを活用したユーザーの体験価値の創出に向けた協業のあり方について3社で引き続き議論を重ねていく」

と再始動の可能性も残してはいます。

2. ソニー×ホンダで共同開発した「AFEELA」発売目前に状況が一転

SHMは高付加価値モビリティの開発・販売およびモビリティ向けサービスの提供を目指すという方針を掲げ、22年9月に設立。日本を代表する二大企業のタッグに、大きな期待が寄せられていました。

23年1月の「CES 2023」では、新ブランド「AFEELA」を発表。「移動をエンタメ空間に変える」というソニーのエッセンスを反映した、既存の自動車業界にはなかったコンセプトに国内外で大きな反響がありました。

3/5

出所:ソニー・ホンダモビリティ株式会社

出所:ソニー・ホンダモビリティ株式会社

その後、搭載される機能や進捗状況を小出しにしながら、なかなか発売に至らない状況が続いていましたが、26年1月の「CES 2026」で、いよいよ発売時期を発表。米国ではオンライン予約もスタートしていました。

ところが、一転、2026年3月25日に販売が間近に迫ったAFEELAの発売中止を発表。今回の事業縮小という結論に至りました。

3. Hondaの四輪電動化戦略の見直しが引き金に

なぜ販売を目前に控えながらAFEELAは発売中止になったのか。その背景には協業の一角を担う「Hondaの事業方針の見直し」があります。

Hondaは26年3月期決算において、1957年の上場以来初となる連結最終赤字に転落する見込みで、最大で2兆5000億円という巨額の損失が発生する見通しです。

EVに大きく舵を切っていましたが、北米市場におけるEV市場の停滞や中国メーカーの台頭により、苦戦を余儀なくされ、大きな打撃を受けています。

同社の主要EV3車種についても、すでに開発・発売の中止が決まっており、SHMのAFEELAシリーズもそのあおりを受ける形になりました。

4/5

出所:本田技研工業株式会社

出所:本田技研工業株式会社

具体的な影響としては、当初の事業計画策定時にHondaからの提供を前提としていた技術やアセットの活用が困難な状況になりました。

4. 日本の夢を乗せていた「AFEELA」シリーズ

第1弾として発表された「AFEELA 1」は、米国で26年後半、日本で27年に納車予定と発表されており、発売を間近に控えていました。

5/5

出所:ソニー・ホンダモビリティ株式会社

出所:ソニー・ホンダモビリティ株式会社

同モデルは、ソニーの得意分野である「センシング技術」をフル活用した安全性能が売りで、車内外に多数のセンサーや最大800 TOPSの計算能力を持つ電子制御ユニットを搭載し、高いレベルの運転支援を実現。

また、対話型パーソナルエージェント「AFEELA Personal Agent」やソニーの立体音響技術「360 Reality Audio」、PlayStationのゲームを遠隔プレイできる「PS リモートプレイ」など、エンターテインメントの充実も「らしい」要素も備えていました。

ちなみに26年1月には、第2弾モデル「AFEELA Prototype 2026」が世界初公開され、SUVライクなシルエットが大きな注目を集めました。こちらは米国で28年以降の投入を目指していましたが、AFEELA 1同様に開発・発売を中止します。

5. 「夢物語で終わってしまった」「ソフトウェアに集中すべき」

今回のニュースを受け、SNSでは落胆の声が広がっています。

  • 「夢物語で終わってしまった」
  • 「自動車業界の参入障壁は高すぎた」
  • 「EV一本足打法はやっぱり危うい」

といったコメントが見受けられました。

一方で、迅速かつ思い切った決断には

  • 「ソフトウェアに集中すべき。再起してほしい」
  • 「従業員がリストラにならなくてよかった」
  • 「今のEV市場の状況を考えると英断かもしれない」

などの声もあがっています。

国産メーカーがまったく新しい自動車のハードウェアを開発するという夢は遠のいてしまいましたが、AFEELAのコンセプト自体は斬新で、多くの人に未来を感じさせるものでした。ライセンス提供などの可能性も含め、世に出る日が来ることを願いたいところです。

参考資料

LIMO自動車部