2026年4月から、給与明細に新たな控除項目が加わりました。「子ども・子育て支援金」です。少子化対策の財源を社会全体で支え合う仕組みとして導入されたこの制度。子どもがいる・いないにかかわらず、会社員も自営業者も、75歳以上の高齢者も、公的医療保険に加入するすべての人が対象となります。
「自分はいくら引かれるの?」「年金からも引かれるの?」と気になる方も多いでしょう。
本記事では、年収200万円から1,000万円まで、保険の種類別に月額負担を整理するとともに、2028年度にかけての変化もあわせて解説します。
1. 「子ども・子育て支援金」の制度の概要
1.1 制度の背景と目的
日本の少子化は深刻な状況が続いています。2024年に厚生労働省が実施した「人口動態統計」では、出生数は統計開始以来初めて70万人を割り込み、合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子どもの数の平均)は1.15まで低下しました。
政府はこうした状況を受け、年間約3.6兆円規模の少子化対策パッケージを策定しました。子ども・子育て支援金は、その財源を確保するために創設された制度です。
集められた支援金は、児童手当の拡充や妊娠・出産期の支援強化、保育サービスの充実など、子育て家庭への給付・支援策に活用されます。
1.2 徴収の仕組み
支援金は、健康保険料に上乗せして徴収されます。加入している医療保険の種類によって、計算方法や徴収のタイミングが異なります。
会社員(被用者保険加入者)の場合、負担額は「標準報酬月額×支援金率」で決まります。健康保険料と同様に労使折半となるため、実際に給与から引かれるのは計算額の半分です。
2026年4月分の保険料から上乗せが始まり、多くの会社員は5月の給与から天引きが開始されます。
2. 給与から引かれる金額は?年収別に手取りの変化を試算
2.1 2026年度の月額負担(被用者保険・個人負担分)
2026年度の支援金率は0.23%です。支援金の半分は企業が負担するため、個人の負担はその半分となります。
こども家庭庁によると、2026年度の支援金額の平均月額は以下のとおりです。
- 健保組合:被保険者一人当たり約550円
- 国民健康保険:一世帯当たり約300円
- 後期高齢者医療制度:被保険者一人当たり約200円
ただしこれは平均額であり、実際の負担額は年収によって異なります。年収別に詳しく見ていきましょう。
2.2 健保組合・協会けんぽ・共済組合の年収別負担額
- 年収200万円:月192円(年間2,304円)
- 年収400万円:月384円(年間4,608円)
- 年収600万円:月575円(年間6,900円)
- 年収800万円:月767円(年間9,204円)
- 年収1,000万円:月959円(年間11,508円)
政府は「社会保障の歳出改革等を行うことで負担は相殺されるため、実質的な負担は生じない」と説明しています。しかし、給与明細上の手取り額で見るとその影響は小さくありません。例えば年収600万円の場合、2026年度は年間6,900円の負担増となります。
2.3 2028年度(満額)になると手取りの変化はさらに広がる
支援金の総額は段階的に引き上げられる予定となっています。
2028年度に支援金率が約0.4%(満額)となると、負担額は2026年度の約1.7〜1.9倍に増加します。同じ年収帯で比較してみましょう。
- 年収200万円:月192円→月350円(年間4,200円)
- 年収400万円:月384円→月650円(年間7,800円)
- 年収600万円:月575円→月1,000円(年間12,000円)
- 年収800万円:月767円→月1,350円(年間16,200円)
- 年収1,000万円:月959円→月1,650円(年間19,800円)
※ただし、政府が総力をあげて取り組む賃上げにより、今後、総報酬の伸びが進んだ場合には、数字が下がっていくことが想定されています。
例えば年収600万円の場合、2026年度は月575円(年間6,900円)の手取り減ですが、2028年度には月1,000円(年間12,000円)の手取り減へと拡大します。月額だけ見ると小さな変化に感じられますが、実質負担の有無にかかわらず天引きされる額としては、2028年度以降は毎年この水準の負担が続くことになります。
3. 自営業・フリーランスの場合は?国民健康保険の負担額
会社員とは異なり、自営業者やフリーランスが加入する国民健康保険では、支援金は給与天引きではなく、納付書払いや口座振替などで支払います。
3.1 2026年度の月額負担額
夫婦と子のいる世帯・1世帯当たりのモデル試算は以下のとおりです。
- 年収80万円:月50円
- 年収150万円:月250円
- 年収200万円:月400円
- 年収300万円:月650円
実際の金額はお住まいの市町村の条例によって異なりますが、2028年度にかけて負担額は段階的に引き上げられる予定です。
4. 年金からも引かれる?高齢世代への影響
75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の加入者も、子ども・子育て支援金の対象です。高齢世代にとっても他人事ではありません。
後期高齢者医療制度の場合、保険料は年金からの天引き(特別徴収)となるケースが多く、年金手取り額の減少という形で影響が出ます。
4.1 後期高齢者医療制度の負担額
年収別の支援金額を被保険者1人あたりで試算すると以下のとおりです。
- 年収150万円以下:50円
- 年収175万円:100円
- 年収200万円:200円
2028年度には負担額がさらに引き上げられる見込みで、単身世帯(年金収入のみ)の場合、年金収入200万円で月350円、250万円で月550円、300万円で月750円が想定されています。
低所得者には軽減措置が設けられており、年金収入が少ない層への配慮はなされています。
5. まとめ
2026年4月から始まった子ども・子育て支援金は、少子化対策の財源を社会全体で支え合う新たな仕組みです。
会社員の場合、2026年度の月額負担は年収200万円で192円、年収1,000万円で959円、そして2028年度にはさらに引き上げられる見込みです。
給与明細や年金の手取り額が変わることは確かですが、集められた支援金は児童手当の拡充や保育サービスの充実など、子育て家庭への支援に活用されます。
手取りの変化を事前に把握しておくことで、家計の見直しや将来の資産形成にも役立てられるでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」
- こども家庭庁「こども・子育て支援制度のQ&A」
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」
- こども家庭庁「医療保険制度ごとの年収別試算(令和8年度)」
- こども家庭庁「令和9年度以降の支援金額の見込みについて」
小西 雅美