3. なぜ来期は「純利益マイナス」予想?税金に隠されたテクニカル要因
ここまで絶好調な山岡家ですが、来期(2027年1月期)の業績予想には、投資家を少し戸惑わせるような数字が含まれています。
会社が発表した来期予想は、売上高が483億円(前期比プラス12.5%)、営業利益が51億8400万円(同プラス10.8%)と、引き続き二桁の増収増益を見込んでいます。
しかし、最終的な純利益に関しては36億3000万円となり、前期比でマイナス1.6%という「減益予想」を出しているのです。
インタビュワーから「ここまで絶好調なのに、なぜ最終利益がマイナスになるのか?」という疑問が投げかけられると、泉田氏は決算短信の深い部分を読み解き、そのカラクリを解説しました。
「税率の前提が保守的になってるっていう風に理解したらいいかなと思うんですよ」
泉田氏が注目したのは、決算短信に記載されている「法人税等調整額」という項目です。これは、企業が会計上で計算した利益と、税務署に申告する税務上の所得との間に生じるズレを調整するための項目です。
山岡家の終わった期の決算を見ると、この法人税等調整額のマイナス部分が、前期の約2900万円から当期は約1億900万円へと大きく膨らんでいました。
会計上、特別な調整項目が発生したことで税金の負担が重く見える状態になっているのです。来期についても、会社側はこの税金の影響を保守的(厳しめ)に見積もっているため、純利益がマイナス予想になっていると泉田氏は分析します。
3.1 投資家が注目すべきは「営業利益」
では、この純利益のマイナス予想を受けて、投資家は「山岡家の成長にブレーキがかかった」と判断すべきなのでしょうか。
泉田氏は、税金の計算は専門家でも最後まで着地点が読めない複雑なものであるとした上で、株式投資における本質的な見方を次のようにアドバイスします。
「税金は一番難しい。なので、普通の稼ぐ力とかって判断するときは、もうだいたい営業利益のところまで、売上と営業利益がしっかり伸びてればOKだねと」
純利益がマイナスになるのはあくまで会計上のテクニカルな要因であり、山岡家の「ラーメンを売って利益を出す」という本業の稼ぐ力が弱まったわけではありません。実際、本業の儲けを示す営業利益は来期も10.8%のプラス成長を予想しています。
投資家としては、一時的な税金の影響で変動しやすい純利益のマイナスに過剰に反応するのではなく、本業の強さを示す営業利益がしっかりと伸びているかに注目することが重要だということです。
【動画で解説】山岡家、なぜ「100倍株」に?元機関投資家が切り込む
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日