YouTubeチャンネル「イズミダイズム」では、元機関投資家の泉田良輔氏が、話題の企業やニュースをプロの視点で分かりやすく解説しています。
今回の動画で取り上げられたのは、全国の幹線道路沿いを中心にラーメンチェーンを展開する「株式会社丸千代山岡家(以下、山岡家)」です。
身近な飲食店というイメージが強い山岡家ですが、実は株式市場において驚異的なパフォーマンスを叩き出している銘柄でもあります。
直近の決算発表(2026年1月期通期)でも力強い数字が示されましたが、一方で来期の予想には「純利益がマイナス」という気になるデータも含まれています。
泉田氏はこれらの数字をどのように読み解いたのでしょうか。投資初心者にも分かりやすい株価変動の背景と、プロならではの決算の読み方をご紹介します。
この記事のポイント
- 山岡家の株価は2008年の安値から約100倍に急騰し、市場平均を大きく上回っている
- 今期は売上・利益ともに20%超の成長を達成し、特に「客数増」による既存店の好調が牽引している
- 来期予想の「純利益マイナス」は税金のテクニカルな要因であり、本業の稼ぐ力は衰えていない
- 慎重に物件を見極める出店戦略が、投資家に「無理のない成長」という安心感を与えている
1. 2008年から株価100倍!TOPIXを凌駕する超絶アウトパフォーム
動画の冒頭、インタビュワーから山岡家の長期的な株価チャートが提示されました。
そこには、日本株の全体的な動きを示すTOPIX(東証株価指数)の青い線を大きく引き離し、右肩上がりに急上昇していく山岡家の株価の軌跡が描かれていました。
このように、特定の銘柄が市場平均の成績を上回ることを投資用語で「アウトパフォーム」と呼びますが、泉田氏はこのチャートを見て驚きの声を上げます。
「単なるアウトパフォームじゃなくて超絶アウトパフォームですね」
泉田氏が確認したところによると、山岡家の株価は2008年頃に28円という安値をつけていました。それが現在(動画収録時点)では3700円にまで上昇しています。
つまり、長期的な視点で見ると株価が約100倍にまで成長している計算になります。
株式投資の世界では、株価が10倍になる銘柄を「テンバガー」と呼び、多くの投資家の憧れの的となっていますが、100倍にまで成長する銘柄は極めて稀です。
泉田氏も、機関投資家としての長年の経験を振り返りながら、その珍しさを次のように語っています。
「100倍株って、聞いたことはあるし出るは出るけど、ゴロゴロしてるわけじゃないからちょっとこれはすごい株ですね」
身近なラーメンチェーン店が、実は市場で一握りの「100倍株」であったという事実は、身近なサービスを提供する企業の中にも大きな投資チャンスが眠っていることを教えてくれます。
では、なぜ山岡家はこれほどの評価を市場から得ているのでしょうか。その秘密は、直近の決算数値に隠されていました。
2. 売上も利益も20%超えの急成長!今期好決算の要因とは
泉田氏は、2026年1月期の通期決算短信を読み解きながら、山岡家の驚異的な成長力に迫ります。
今期の業績は、売上高が430億円(前期比プラス24.3%)、本業の儲けを示す営業利益が46億7800万円(同プラス26.2%)、最終的な手元に残る純利益が36億8800万円(同プラス30.2%)と、すべての主要指標で20%を超える見事な成長を記録しました。
泉田氏は、この「売上だけでなく利益もしっかり伸びている」という点に注目します。
「だいたい小売業って、売上伸びるんだけど原材料とか人件費の絡みで、売上の伸びほど利益伸びないっていうのがあった特徴かと思うんですけど、しっかり食らいついてるという感じですかね」
昨今、飲食業界は食材費の高騰や人手不足による人件費の上昇という厳しい逆風にさらされています。売上が増えてもコストがそれ以上に膨らみ、利益が圧迫される企業が少なくありません。しかし山岡家は、売上の伸び(24.3%)を上回るペースで営業利益(26.2%)と純利益(30.2%)を伸ばしており、コスト上昇の波を見事に乗りこなしていると言えます。
2026年1月期 通期 業績ハイライト1/3
出所:丸千代山岡家 2026年1月期決算短信を基にイズミダイズム作成
2.1 成長を牽引する「既存店売上」の驚異的な伸び
この力強い業績の背景には何があるのでしょうか。泉田氏が「小売業を分析する時に一番大事」と語るのが、「既存店売上」の動向です。
既存店売上とは、新規に出店したばかりの店舗を除き、一定期間以上営業を続けている店舗の売上を集計したものです。
新規出店を繰り返せば会社全体の売上は一時的に増えますが、既存店が衰退していれば、その成長は長続きしません。
山岡家の今期の既存店売上高は、通期で119.1%(前期比約19%増)という驚異的な数字を叩き出しました。泉田氏はこの数字の持つ意味を次のように解説します。
「売上20%超伸びてましたけど、そのほとんどが既存店の売上増でできてる」
さらに泉田氏は、この既存店売上を「客数」と「客単価」に分解して分析します。売上は「どれだけの人が来たか(客数)」と「一人あたりいくら使ったか(客単価)」の掛け算で決まります。
資料によると、山岡家は4月と10月に価格改定(値上げ)を実施しており、客単価は102.9%(約3%増)となっています。
しかし、特筆すべきは客数です。値上げをしたにもかかわらず、客数は通期で115.8%(約16%増)と大幅に伸びているのです。
【動画で解説】山岡家、なぜ「100倍株」に?元機関投資家が切り込む
通常、値上げをすると客離れが起きるリスクがあります。しかし山岡家の場合、前年よりも16%も多くの客が店舗を訪れています。これは、同社のラーメンが消費者に強く支持されており、リピーターの定着と新規顧客の獲得が同時に成功している証拠だと言えます。
既存店売上高の分解2/3
出所:丸千代山岡家 決算説明会資料を基にイズミダイズム作成
3. なぜ来期は「純利益マイナス」予想?税金に隠されたテクニカル要因
ここまで絶好調な山岡家ですが、来期(2027年1月期)の業績予想には、投資家を少し戸惑わせるような数字が含まれています。
会社が発表した来期予想は、売上高が483億円(前期比プラス12.5%)、営業利益が51億8400万円(同プラス10.8%)と、引き続き二桁の増収増益を見込んでいます。
しかし、最終的な純利益に関しては36億3000万円となり、前期比でマイナス1.6%という「減益予想」を出しているのです。
インタビュワーから「ここまで絶好調なのに、なぜ最終利益がマイナスになるのか?」という疑問が投げかけられると、泉田氏は決算短信の深い部分を読み解き、そのカラクリを解説しました。
「税率の前提が保守的になってるっていう風に理解したらいいかなと思うんですよ」
泉田氏が注目したのは、決算短信に記載されている「法人税等調整額」という項目です。これは、企業が会計上で計算した利益と、税務署に申告する税務上の所得との間に生じるズレを調整するための項目です。
山岡家の終わった期の決算を見ると、この法人税等調整額のマイナス部分が、前期の約2900万円から当期は約1億900万円へと大きく膨らんでいました。
会計上、特別な調整項目が発生したことで税金の負担が重く見える状態になっているのです。来期についても、会社側はこの税金の影響を保守的(厳しめ)に見積もっているため、純利益がマイナス予想になっていると泉田氏は分析します。
2027年1月期 業績予想の伸び率3/3
出所:丸千代山岡家 決算説明会資料を基にイズミダイズム作成
3.1 投資家が注目すべきは「営業利益」
では、この純利益のマイナス予想を受けて、投資家は「山岡家の成長にブレーキがかかった」と判断すべきなのでしょうか。
泉田氏は、税金の計算は専門家でも最後まで着地点が読めない複雑なものであるとした上で、株式投資における本質的な見方を次のようにアドバイスします。
「税金は一番難しい。なので、普通の稼ぐ力とかって判断するときは、もうだいたい営業利益のところまで、売上と営業利益がしっかり伸びてればOKだねと」
純利益がマイナスになるのはあくまで会計上のテクニカルな要因であり、山岡家の「ラーメンを売って利益を出す」という本業の稼ぐ力が弱まったわけではありません。実際、本業の儲けを示す営業利益は来期も10.8%のプラス成長を予想しています。
投資家としては、一時的な税金の影響で変動しやすい純利益のマイナスに過剰に反応するのではなく、本業の強さを示す営業利益がしっかりと伸びているかに注目することが重要だということです。
【動画で解説】山岡家、なぜ「100倍株」に?元機関投資家が切り込む
4. 無理な出店はしない?着実な店舗拡大がもたらす安心感
最後に泉田氏は、山岡家の今後の成長を占う「出店戦略」について分析しました。
山岡家は現在、全国で195店舗を展開しています。来期は新たに15店舗の出店を計画しており、総店舗数を拡大していく方針です。
195店舗という規模のチェーン店が、1年間で15店舗を新たに出店するというのは、急拡大の部類に入るのでしょうか。
インタビュワーからのこの問いに対し、泉田氏は前期の出店実績を引き合いに出して解説します。
「去年は10店舗計画で8店舗の出店だったんで、計画未達とも言えるんだけど、慎重に物件を見てるのかなという気がしていて、15件はやりたいよって言ってる中で、ちゃんと物件が見つかるかどうかっていう話になるかなと思います」
前期は10店舗の出店を計画していましたが、実際に出店したのは8店舗でした。数字だけを見れば「計画未達」ですが、泉田氏はこの結果をネガティブには捉えていません。
むしろ、数字を作るために条件の悪い場所に無理やり出店するのではなく、採算が取れる良い物件を慎重に見極めている姿勢の表れだと評価しています。
「もう絶対計画通り何十店舗やんだっていう感じではないから、逆に言うと安心感あるね」
外食チェーンの歴史において、株価を意識するあまり無謀なペースで出店を繰り返し、結果的に店舗の質が低下して経営に行き詰まるケースは少なくありません。
山岡家のように、確かな需要(既存店の客数増)をベースに持ちながらも、出店に関してはコンサバティブ(保守的)な姿勢を崩さない経営は、長期的な目線を持つ投資家にとって大きな安心材料となります。
【動画で解説】山岡家、なぜ「100倍株」に?元機関投資家が切り込む
5. まとめ
今回の動画では、元機関投資家の泉田氏が丸千代山岡家の驚異的な株価上昇の背景と、直近の決算から読み取れる企業の強さを解説しました。
コロナ禍以降、深夜営業を取りやめる飲食店が増える中、山岡家はあえて「24時間営業」という他社とは異なる戦略を継続し、消費者のニーズをしっかりと捉えています。その結果が、既存店の客数増という力強い数字に表れていました。
また、来期の純利益マイナス予想という一見ネガティブな情報も、プロの視点で見れば税金のテクニカルな要因であり、本業の稼ぐ力は健在であることが分かりました。
慎重な出店戦略と合わせて、非常に地に足の着いた経営を行っている企業だと言えます。
参考資料
- 株式会社丸千代山岡家「2026年1月期 決算短信」(2026年3月16日)
- 株式会社丸千代山岡家「2026年1月期 決算説明会資料」(2026年3月16日)
- Youtubeチャンネル「イズミダイズム」
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