2. 【日立製作所】決算から読み解く好業績の理由とエナジー事業の躍進
事業の「選択と集中」を行った日立製作所は、現在どのような業績を上げているのでしょうか。
泉田氏は直近の決算データ(2026年3月期 第3四半期累計)を基に、その好調ぶりを読み解きます。
2.1 パワーグリッド事業が利益成長を牽引
決算データを見ると、日立製作所の売上収益は7兆5018億円(前年同期比7.0%増)、本業の儲けを示す調整後営業利益は8257億円(同26.1%増)、そして最終的な利益である親会社株主帰属利益は6386億円(同48.2%増)と、非常に力強い成長を見せています。
通期の見通しでも、売上収益は10兆5000億円に達する見込みです。
巨大企業でありながら利益が1.5倍近くに伸びている状況に驚きの声が上がると、泉田氏は事業セグメント別の利益構成に注目するよう促しました。
日立製作所には大きく分けて「DSS(デジタル)」「エナジー(電力・エネルギー)」「モビリティ(交通)」「CI(産業機器など)」の4つの事業セグメントがあります。
売上規模だけで見るとCI事業が最も大きいのですが、利益(Adj. EBITA:キャッシュフローに近い利益指標)の伸びを牽引しているのは、圧倒的に「エナジー」事業です。
エナジー事業の通期売上見通し3兆1700億円のうち、実に2兆9000億円以上を占めるのが、2020年にABB社から買収した「パワーグリッド(送変電網)」事業です。
つまり、日立製作所の現在の快進撃は、このパワーグリッド事業の成長に支えられているのです。
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2.2 グローバルな電力需要が追い風に
では、なぜ今、送変電網の事業がこれほどまでに伸びているのでしょうか。
「日本全国にすでに送電線は張り巡らされているのに、新しい需要があるのか」という疑問に対し、泉田氏は「日本だけで考えるのはいまいち」と指摘し、グローバルな視点での構造的な変化を解説します。
現在、世界中でAIの開発やデータセンターの建設が急拡大しており、莫大な電力が消費されています。
また、再生可能エネルギーの導入が進む中で、新しい発電所を送電網に接続するためのインフラ整備や、老朽化した設備のアップデート需要が世界規模で急増しているのです。
「グローバルで効率的な送変電、電力の考え方っていうのはもともとあったんで、その考えに基づいてたっていうところはあると思うんですけども、こんなに電気を一部の産業が使うとか、そこでのエネルギー効率が求められるとかっていうのは、ちょっと事前には想定できなかったかなと思います」
泉田氏は、日立製作所が2020年の段階でこの事業に目をつけた着眼点を高く評価しつつも、現在のAIブームによる異常なほどの電力需要は「相当ラッキーなところもある」と分析しています。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日