3. 成長の原動力「エナジー事業」の正体
日立製作所の利益を大きく伸ばしている「エナジー事業」。その中身は、原子力事業なども含まれますが、売上の大半(約2兆9663億円)は、2020年に買収したABBの「パワーグリッド事業」が占めています。
では、なぜ今、送変電の事業が世界中でこれほどまでに求められているのでしょうか。
3.1 AI普及とインフラ老朽化が追い風に
「日本全国にすでに送電線は張り巡らされているのに、新しい需要があるのか?」という疑問が出ると、泉田氏は「日本だけで考えるのはいまいち。グローバルでの発想が必要だ」と指摘しました。
現在、世界中で送変電設備の需要が急増している背景には、大きく3つの要因があります。
1つ目は、AI(人工知能)の急速な普及です。
AIを動かすための巨大なデータセンターは膨大な電力を消費するため、より効率的で強力な送変電網が世界中で必要とされています。
2つ目は、再生可能エネルギーの普及です。
太陽光や風力などの再エネは、従来の大きな発電所から一方通行で電気を送る仕組みとは異なり、様々な場所から電力が接続されるため、電力網全体を複雑に制御し直す(アップグレードする)必要があります。
3つ目は、インフラの老朽化です。
泉田氏は、これが日本特有の問題ではないと強調します。
「日本もインフラの老朽化って問題になってるじゃん。これ別に日本だけじゃないのよ。グローバルであるから、こういったもので旺盛だというのが出てますね」
3.2 欧州・北米市場での圧倒的な存在感
こうした巨大な需要を取り込めているのは、日立製作所がABBのパワーグリッド事業を買収し、グローバルな基盤を手に入れていたからです。
日立製作所全体で見れば日本の売上も大きいですが、エナジー事業に限って言えば、主戦場は海外です。動画内の解説によれば、エナジー事業で最も売上が大きいのは、買収したABBのお膝元であるヨーロッパ(欧州)であり、それに次いで歴史の古いインフラの更新需要を抱えるアメリカ(北米)が大きなシェアを占めています。
日立製作所は、2020年の買収によって、まさに「世界が最も電力を必要としているタイミング」で、欧州・北米という巨大市場にアクセスできる最強の武器を手に入れていたのです。
【動画で解説】日立製作所、AI時代を勝ち抜く「最強のポートフォリオ」
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日