2026年度(令和8年度)が始まり、年金額の改定内容が公表されました。国民年金は対前年度比で1.9%増の月額7万608円(満額)、厚生年金は2.0%増の月額23万7279円(夫婦2人分)となり、物価の動向を反映した増額となります。年金を受給している方や、将来の生活設計を考えている方にとって、重要なニュースといえるでしょう。
日本の公的年金は、働き方や収入によって将来受け取る額が大きく変わる「2階建て」の仕組みです。厚生労働省が公表した最新の試算では、「ライフコース別」の具体的な受給額モデルも示されており、自身の将来像を考える上で参考になります。
この記事では、2026年度の最新年金額や、改定額が反映される6月の支給スケジュールについて詳しく解説します。あわせて、2025年に成立した改正法による遺族年金の男女差解消など、私たちの生活に直結する年金制度の動向についても見ていきましょう。
1. 【年金の基本】公的年金制度の仕組みをわかりやすく解説
日本の公的年金制度は、老後の生活を支える「老齢年金」だけでなく、病気やケガで生活に支障が出た際の「障害年金」、そして家計を支える方に万が一のことがあった場合の「遺族年金」という、3つの大きな保障機能を備えています。
一般的に「年金」というと、リタイア後に受け取る「老齢年金」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
1.1 国民年金と厚生年金から成る「2階建て構造」とは
「2階建て構造」として知られるこの仕組みは、1階部分にあたる「国民年金(基礎年金)」と、2階部分の「厚生年金」で構成されています。現役時代の働き方によって、将来受け取る年金の額が大きく変わるのが特徴です。
ここでは、「国民年金」と「厚生年金」の基本的な仕組みと、それぞれの「老齢年金受給額」について確認していきましょう。
1.2 1階部分:国民年金(基礎年金)の概要
加入対象
- 原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての方(職業や国籍は問いません)が加入します。
年金保険料
- 加入者全員が一律の金額ですが、年度ごとに改定されます。(※1)
老齢年金の受給額
- 保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳から満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。(※2)
※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円
1.3 2階部分:厚生年金の概要
加入対象
- 会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※3)に勤務し、一定の要件を満たした方が国民年金に上乗せして加入します。
年金保険料
- 収入に応じて保険料が決まります(上限あり)。(※4)
老齢年金の受給額
- 加入期間や納付した保険料額によって個人差が生じます。
このように、国民年金と厚生年金では加入対象者や保険料の決定方法、老齢年金額の計算方法が異なります。
そのため、現役時代の年金加入履歴によって、実際に受け取る老齢年金額には自然と個人差が生まれるのです。
※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
1.4 【2026年】年金支給日カレンダーと新年度改定額の反映時期
公的年金は、原則として偶数月の15日(※5)に、直前の2カ月分がまとめて支給される後払い方式です。
2026年の「年金支給日」と「支給対象月」は以下の通りです。
- 2026年2月13日(金):2025年12月・2026年1月分
- 2026年4月15日(水):2月・3月分
- 2026年6月15日(月): 4月・5月分★新年度の改定額が反映
- 2026年8月14日(金): 6月・7月分
- 2026年10月15日(木): 8月・9月分
- 2026年12月15日(火): 10月・11月分
※5 「15日」が土日・祝日の場合は直前の平日に前倒しされます。
2. 【2026年度】年金額はいくら増える?国民年金1.9%・厚生年金2.0%の増額改定
2026年度の年金額は、前年度と比較して基礎年金(国民年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引き上げとなります。
この新しい改定額は、4月分と5月分がまとめて支給される6月15日の支給分から適用されます。
2.1 国民年金・厚生年金の改定後モデル年金額
- 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円(+1308円)
- 厚生年金(夫婦2人分):23万7279円(+4495円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
厚生労働省は今回の年金改定の公表とあわせて、「多様なライフコースに応じた年金額」として、現役時代の働き方や収入に応じた年金額のモデルケースを提示しています。
3. 働き方でどう変わる?ライフコース別・年金受給額の5パターン
年金の加入期間や現役時代の収入によって、将来の年金額はどのように変化するのでしょうか。
厚生労働省は、2026年度の年金額改定と同時に、現役時代の年金加入状況や年収ごとの年金額例を「多様なライフコースに応じた年金額」として公表しました。
具体的には、「2026年度に65歳になる人」を想定した年金額の概算が、公的年金の加入履歴や性別ごとに合計5つのパターンで示されています。
3.1 パターン1:厚生年金加入が中心の男性
年金月額:17万6793円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。
- 基礎年金:6万9951円
- 厚生年金:10万6842円
3.2 パターン2:国民年金(第1号)加入が中心の男性
年金月額:6万3513円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8896円
- 厚生年金:1万4617円
3.3 パターン3:厚生年金加入が中心の女性
年金月額:13万4640円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
3.4 パターン4:国民年金(第1号)加入が中心の女性
年金月額:6万1771円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万3119円
- 厚生年金:8652円
3.5 パターン5:国民年金(第3号)加入が中心の女性
年金月額:7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万9016円
- 厚生年金:9234円
これらの金額はあくまで一例ですが、厚生年金の加入期間が長く、現役時代の収入が高いほど、老後に受け取る年金額も多くなる傾向にあることがわかります。
また、国民年金と厚生年金のどちらを中心に加入していたかが、年金水準に大きな影響を与えていることも見て取れます。
4. 【グラフで見る】厚生年金・国民年金の受給額分布(60歳~90歳以上・男女別)
老後に受け取る年金額は、現役時代の年金加入状況によって一人ひとり異なります。ここでは、60歳から90歳以上のすべての受給権者を対象に、厚生年金と国民年金の受給額分布を確認します。
4.1 厚生年金の受給額:平均月額と男女差・個人差
厚生年金の平均年金月額は、全体で15万289円でした。男女別の内訳は以下の通りです。
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金部分を含む
受給者数の分布(月額階級別)
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の平均受給月額は、全体では15万円台ですが、男女で差があり男性は16万円台、女性は10万円台となっています。
また、月額1万円未満の方から25万円を超える高額な方まで幅広く分布しており、個人差が大きいことがうかがえます。
4.2 国民年金の受給額:平均月額と男女差・個人差
国民年金の平均年金月額は、全体で5万9310円でした。男女別の内訳は以下の通りです。
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
受給者数の分布(月額階級別)
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均年金月額は、男女ともに5万円台で、最も多い層は「6万円以上~7万円未満」です。
多くの方が満額に近い年金額を受け取っている一方で、月額1万円未満となる方も一定数いることがわかります。
5. 【2025年法改正】遺族厚生年金における男女差の解消について
2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」では、働き方や家族構成の多様化に対応するための制度整備が大きな目的の一つとされています。
今回の改正には、いわゆる「106万円の壁」の撤廃に関連する社会保険の加入要件拡大のほか、遺族年金に関する見直しも含まれました。
5.1 遺族厚生年金の男女差解消に向けた見直しのポイント
現在の遺族厚生年金の制度では、受給者の性別によって下記のような違いがありました。
現行制度の仕組み
- 女性
- 30歳未満で死別:5年間の有期給付
- 30歳以上で死別:無期給付
- 男性
- 55歳未満で死別:給付なし
- 55歳以上で死別:60歳から無期給付
この男女差をなくすための見直しは、男性は2028年4月から、女性は同じく2028年4月から20年かけて段階的に実施される予定です。
改正後の仕組み
- 男女共通
- 60歳未満で死別:原則5年間の有期給付(配慮が必要な場合は5年目以降も給付継続)
- 60歳以上で死別:無期給付(現行通り)
なお、今回の改正では「遺族基礎年金」の見直しも行われました。
これまで同一生計の父または母が遺族基礎年金を受け取れなかった場合でも、2028年4月からは、子どもが単独で「遺族基礎年金」を受給できるようになります。
6. まとめ:年金制度の最新動向を把握し将来設計に活かそう
今回は、2026年度の年金改定の内容、最新の受給額分布、そして制度改正による遺族年金の見直しについて解説しました。
5月に入り、次回の年金支給日である6月15日が近づいています。この6月支給分から、今年度の増額改定が適用された新しい年金額(4月・5月分)が支給されます。国民年金が満額で月額7万円台になるなど明るい話題もありますが、厚生労働省が示した5つのモデルケースからもわかる通り、現役時代の加入状況や年収が老後の受給額に大きく影響します。物価上昇が続くなか、公的年金だけに頼るのではなく、ご自身の備えについて改めて考えておくことが重要でしょう。
また、2025年に成立した改正法によって、2028年4月から遺族厚生年金の男女差解消に向けた見直しが段階的に始まります。多様化する家族の形に合わせた重要な法改正ですので、男性の受給要件の変更など、ご自身の世帯にどのような影響があるのかを早めに把握しておくことが大切です。
年金制度は時代とともに変化しますが、その基本を正しく理解しておくことは、長期的なセカンドライフの安心につながります。本記事で紹介した最新データや支給日カレンダーを参考に、ご自身の将来に向けたマネープランをぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構 年金用語集「た行 特定事業所」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「Q.年金はいつ支払われますか」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- LIMO「2026年度「厚生年金・国民年金」ひと月いくら増える?6月支給分からのモデル年金&ライフコース別《65歳以降の年金目安》」
マネー編集部年金班
