キオクシアホールディングス(旧・東芝メモリ)の株価が躍進しています。同社は2024年12月に公開価格1455円、初値1440円で上場しました。しばらくは2000円~3000円前後の値動きが続きますが、2025年9月ごろから顕著な上昇トレンドとなり、10月には1万円台に到達します。値上がりは2026年にさらに加速し、2月には公開価格の16.8倍となる一時2万4420円の高値まで買われました。
その後、イラン紛争などから株価は調整し、足元では2万1100円の取引です(2026年3月24日終値)。高値からは値を下げていますが、1年間の株価騰落率は655.2%(7.5倍)と、日経平均株価(同38.9%)を圧倒しています。
キオクシアホールディングスの株価(日足、1年)1/2
出所:著者作成
注目度が高まるキオクシアホールディングスですが、上昇ペースが早く、まだ情報を整理できていない人もいるかもしれません。今回はキオクシアホールディングスの事業内容とAIとの関連、業績の見通しや気を付けたいリスクを簡単に解説します。
1. 日本のNANDメモリメーカー DRAMとの違いをおさらい
まずは基本的な情報から整理しましょう。
キオクシアホールディングスは半導体メモリのメーカーです。半導体メモリはDRAMまたはNANDのいずれかを指すことが多いところ、キオクシアホールディングスはNAND専業で事業を展開しています。
DRAMとNANDはどちらも記憶の役割を持つ装置ですが、用途が異なります。DRAMは計算に利用する一方、NANDはデータを長期に保管するストレージです。DRAMはプロセッサー(CPUやGPUなど)が直接的に計算に利用しますが、NANDはデータの保管庫として用いられます。
パソコンを例にとると、スペック表記としてよく表示される「メモリ」と「ストレージ」は前者がDRAMであり、NANDは後者です。一般に「メモリ」が大きいほど処理が早く、「ストレージ」が大きいほど多くのデータを保存できます。パソコン向けではNANDはSSD(Solid State Drive)として内蔵されますが、ほかにSDカードやUSBメモリもNANDの主な用途です。
このNAND市場において、キオクシアホールディングスは業界3位の地位にあります。半導体メモリは韓国勢が強い領域ですが、キオクシアホールディングスは日本唯一の大手として一定のシェアを守っています。
1.1 【主なNANDメーカーの市場シェア】
- 韓サムスン:32.9%
- 韓SKハイニックス:19.7%
- キオクシア:14.9%
- 米マイクロン:11.9%
- 米サンディスク:10.1%
2. AIサーバー向けにメモリ需要が拡大 NANDの新用途も期待
続いてAIとの関連を押さえましょう。キオクシアホールディングスがAIで注目されている理由は、AIサーバー向けに需要の増加が期待されているためです。
AIはスマートフォンやPCなどで動くソフトウェアですが、その背景で働いているハードウェアがAIサーバーです。AI投資は大型化しており、その学習には膨大なデータの保存が必要で、ストレージへの需要が拡大しています。キオクシアホールディングスは、NANDメーカーとしてこの恩恵を受ける立場にあります。
さらに注目されるのが、NANDの用途の広がりです。従来、NANDはあくまでデータの保存に使われるものでしたが、キオクシアホールディングスは計算能力を補完する製品を投入しています。
AIの計算を支える半導体メモリとして、DRAMから発展したHBM(高帯域幅メモリ)が活用されています。しかし、AIの大規模化が進むにつれ、HBMだけでは処理しきれないケースが出てきました。
そこで、キオクシアホールディングスが2026年3月に発表した「KIOXIA GPシリーズ」が注目されています。KIOXIA GPシリーズはHBMを補完し計算容量を拡張するもので、AIサーバー向けに需要が期待されます。KIOXIA GPシリーズは、2026年の下半期までのサンプル出荷を目指しています。
NANDはストレージから計算領域へと役割を広げつつあり、キオクシアホールディングスはそのけん引役です。ストレージ以外の用途でも活用が進めば、収益拡大に貢献するでしょう。
3. 2年連続の最高益が視野 焦点は来期の見通しへ
次に業績です。上場前は赤字でしたが、上場後で初の本決算となった2025年3月期は大幅な黒字を確保しました。販売単価は下落した一方で、AIサーバー向けの需要がけん引し、売り上げと純利益は過去最高を更新します。
成長は今期(2026年3月期)も続く予想です。売り上げは前期比27.7%増~33.0%増、営業利益は57.1%増~77.0%増を計画します。旺盛なAI投資を背景に強い需要が継続していることに加え、販売単価も改善しており、業績は大きく拡大する見通しです。
今期の本決算は5月に公表される予定ですが、注目は翌2027年3月期の業績予想です。今期は第3四半期まで終了していることもあり、株式市場の焦点は利益の見通しに移っていると考えられます。
世界半導体市場統計(WSTS)によれば、半導体メモリ市場は2026年に前年比39.4%増の高い成長が続く予想となっており、キオクシアホールディングスにも高い期待が向けられています。2027年3月期の業績予想が保守的な内容にとどまった場合、株価にはネガティブに働きそうです。
4. 大株主の売り出しリスクに注意
最後にリスクも押さえておきましょう。キオクシアホールディングスは、大株主による株式の売り出しリスクを抱えています。
キオクシアホールディングスは、かつて東芝の完全子会社でした。しかし、東芝が経営危機に陥ると、東芝に代わり米ベインキャピタルが筆頭株主となります。
ベインキャピタルは投資会社であり、現在はキオクシアホールディングス株式を売却を進めています。大量保有報告書から、ベインキャピタルの保有比率は2024年12月の51.64%から2026年3月には29.13%まで低下しました。
株式の売り出しは、一般に株価の下落圧力として働きます。2025年11月にベインキャピタルによる売り出しが報道されると、キオクシアホールディングスの株価は前日比15.2%安となる一時8353円まで急落しました。
ベインキャピタルによる売り出しは今後も続くことが想定されます。株価への下押し圧力が続く可能性がある点は、投資の際に留意しておきたいところです。
【免責事項】
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
参考資料
- 株式会社日本取引所グループ「新規上場会社情報」
- 経済産業省「半導体・デジタル産業戦略の今後の方向性 令和7年12月23日」
- キオクシア株式会社「AI・GPU 主導のワークロードに最適化した新しいSSDモデルを発表」
- キオクシアホールディングス株式会社「2025年3月期 決算説明会」
- キオクシアホールディングス株式会社「2026年3月期 第3四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」
- キオクシアホールディングス株式会社「2026年3月期 第3四半期 決算説明会」
- キオクシアホールディングス株式会社「2026年3月期 第3四半期 業績推移データ」
- キオクシアホールディングス株式会社「IRカレンダー」
- 電子情報技術産業協会「1.WSTS 2025年秋季半導体市場予測について」
- キオクシアホールディングス株式会社「有価証券報告書 第7期」
- BCPE Pangea Cayman, L.P.「大量保有報告書(報告義務発生日:2024年12月18日)」
- BCPE Pangea Cayman, L.P.「大量保有報告書(報告義務発生日:2026年3月12日)」
若山 卓也