4. キャッシュフローに隠された「車が売れていない」実態
会計上の「利益」は、計算上の見積もりなどが含まれるため、企業の実態を正確に表さないことがあります。
そこで機関投資家が重視するのが、実際に会社に出入りした現金の動きを示す「キャッシュフロー(CF)」です。
泉田氏はホンダのキャッシュフロー計算書を分析し、一見すると改善しているように見える数字の裏にある「カラクリ」を解説しました。
4.1 営業CF改善のカラクリ
第3四半期累計のホンダの営業キャッシュフロー(本業の営業活動で得た現金)は6777億円のプラスとなっており、前年同期の1533億円から大幅に増加しています。
一方、投資キャッシュフロー(設備投資などで使った現金)はマイナス5356億円の支出となっています。
営業CFが投資CFの支出を上回っているため、手元には現金が残っている計算になります。しかし、泉田氏はこの営業CFの増加を「中身を分解すると健全ではない」と言います。
その理由として、泉田氏はキャッシュフローの内訳にある「金融サービスに関わる債権」の動きに着目して解説を始めました。
「一番大きく変化しているのが金融サービスに関わる債券です。今年がマイナス1791億円のキャッシュアウト、1年前が7862億円のキャッシュアウトでした。キャッシュアウトの額が減っているのは、車が売れていないといえます。」
このメカニズムを初心者向けに噛み砕いてみましょう。
自動車は高額なため、多くの顧客がローン(ホンダの金融サービス)を利用して購入します。車が飛ぶように売れている時は、ホンダが顧客の代わりに一時的に現金を立て替える(=キャッシュアウトする)金額が膨らみます。
前年はこれが約7800億円もありました。
しかし今年は、この立て替えによる現金の流出が約1800億円に激減しています。現金の流出が減ったため、計算上は「営業キャッシュフローが改善した(手元に現金が残った)」ように見えます。
しかし、その本質的な理由は「ローンを使ってまで車を買う人が減った」、つまり「車が売れていない」ことに他なりません。表面的な現金の増加が、皮肉にも本業の深刻な不調を証明してしまっているのです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日