2. 減益決算の裏側と「第4四半期赤字」の衝撃
株価低迷の直接的な原因を探るため、泉田氏は2026年2月10日に発表された第3四半期(4月〜12月)の累計決算にメスを入れます。
2.1 利益が半減した第3四半期決算
まずは表面的な事実から確認していきましょう。ホンダの第3四半期累計の業績は、売上、利益ともに前年を大きく下回る結果となりました。泉田氏は具体的な数字を挙げながら、現状の厳しさをこう表現しています。
「2026年の2月10日に第3四半期の決算を発表しました。売上が15兆9756億円、対前年比マイナス2.2%で減収。営業利益が5915億円、対前年比マイナス48%減、当期純利益4654億円、対前年比42%減と、かなりきつい状況です。」
売上収益が約15.9兆円で前年同期比2.2%のマイナスに留まっているのに対し、本業の儲けを示す営業利益は約5915億円と、前年の約1兆1399億円からほぼ半減(48.1%減)しています。
売上の減少幅に比べて利益の落ち込みが非常に大きいことが、この決算の特徴です。
2.2 通期予想から読み解くQ4の赤字転落
さらに、泉田氏は機関投資家ならではの鋭い視点で「通期業績予想」に隠された事実を指摘します。
ホンダは今回、通期(1年間)の営業利益予想を5500億円に下方修正しました。一見すると単なる下方修正ですが、第3四半期までの累計実績と照らし合わせると、ある異常な事態が浮かび上がります。
「第3四半期までで5900億円稼いでいるのに、通期で5500億円ということは減ってる。最終利益も4654億円稼いでて今回3000億円。もう赤字ということです。」
第3四半期(4月〜12月)までの累計ですでに5915億円の営業利益が出ているにもかかわらず、通期(4月〜翌3月)の予想が5500億円ということは、差し引きすると第4四半期(1月〜3月)単体では「マイナス415億円の赤字」になる計算です。
【動画で解説】ホンダ株価、なぜ低迷?元機関投資家が暴く決算とPBR0.5倍の罠
純利益に至っては、さらに大幅な赤字が見込まれています。
事業別の内訳(セグメント別業績)を見ると、この苦境の要因が明確になります。2輪事業(バイク)が5465億円、車のローンなどを扱う金融サービス事業が2180億円の利益を稼ぎ出している一方で、本来の主力であるはずの4輪事業(自動車)は、すでにマイナス1664億円の赤字に陥っているのです。
ホンダは「車を売って儲ける」という中核ビジネスが機能不全に陥っており、バイクと金融でなんとか会社全体を支えている状態だということが理解できます。
※2026年3月12日、ホンダは連結最終損益が4200億円から6900億円の赤字に転落する業績予想の修正を発表しました。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日