3. PBR「0.5倍」が発する市場からの警告サイン
業績の不調は、株式市場での評価に直結します。泉田氏はホンダの現状を評価する上で、「PBR(株価純資産倍率)」という指標に強い懸念を示しました。
3.1 PBR1倍割れが意味するもの
PBRとは、企業の持つ純資産(解散価値)に対して、株価が何倍で評価されているかを示す指標です。理論上、企業が持つ資産価値と株価が釣り合っていればPBRは1倍となります。
ホンダの現在のPBRは「約0.5倍」という水準にあります。これは、企業が持っている純資産の「半分の価値」しか、株式市場から認められていないことを意味します。
泉田氏はこのPBR0.5倍という異常な状態について、次のように解説しています。
「株主が1000億出したのに、株式市場がつけてる値段が500億円。PBR0.5とか1倍割れは、将来大きな赤字が出ると思っている。」
株式投資の初心者は、「PBRが1倍を割っているから割安だ、今が買い時だ」と判断しがちです。しかし、元機関投資家である泉田氏の見方は全く異なります。市場は決してホンダを「お買い得」と見ているわけではありません。
企業が将来にわたって赤字を出し続ければ、蓄積してきた純資産(株主資本)は徐々に食いつぶされ、減っていきます。
泉田氏の分析によれば、株式市場は「ホンダの4輪事業の苦戦は今後も続き、いずれ大きな赤字を出して純資産が半分に減ってしまうだろう」という最悪のシナリオを、すでに現在の株価に織り込んでいるのです。
「今は0.5倍だけど、将来減った分と株価を比べたら1倍になっていてもおかしくない。」
つまり、現在の純資産を基準にすれば0.5倍に見えても、将来減ってしまうであろう純資産を基準にすれば、今の株価でも「適正価格(1倍)」である、というのが市場の冷徹な判断だということです。
これは投資家にとって、非常に重い警告サインと言えます。