4. 今後の見通しと投資家が取るべき行動
AI企業が新サービスを出すたびに「また人がいらなくなる」という連想が働き、株が売られるサイクルが続く可能性があります。このような不透明な状況下で、投資家はどう立ち回るべきなのでしょうか。
4.1 次回決算での定点チェックが鍵
泉田氏は、AIの脅威がどこまでリクルートの業績に波及するかを見極めるのは難しいとしつつも、明確な対応策を提示しています。
それは、3ヶ月後の次回決算で、HRテクノロジー事業の売上や利益が実際にどう変化したかを「定点的にチェックする」ことです。
市場は今、懸念という「期待値」で株を売っています。しかし、実際に時間が経ってみて「心配したほど業績にインパクトはなかった」「なんならまだ伸びている」となれば、再び買われるシナリオも十分にあり得ます。
4.2 落ちてくるナイフは掴むな
株価が大きく下がったのを見て、「今が割安で買い時ではないか」と考える投資家もいるかもしれません。しかし、泉田氏は有名な投資の格言を用いて警鐘を鳴らします。
「『マーケットに落ちてくるナイフは掴むな』っていう格言もある。ナイフが落ちてきたところをガッて掴めば、血まみれになる。だからそういうのは掴まない方がいいよっていう格言もあります。」
下落トレンドの最中にある銘柄を安易に買いに向かうのは、非常にリスクが高い行為です。まずは次回の決算で業績の推移を確認し、会社側がAIの脅威に対してどのようなメッセージ(対策)を出してくるかを見極めることが重要です。
4.3 連想ゲームを鍛えるトレーニング方法
最後に泉田氏は、今回のリクルートの事例から学べる「連想ゲーム」の重要性について触れました。ニュースが出た際に「風が吹けば桶屋が儲かる」のように、どの企業に影響が及ぶかを想像する力は、株式投資において強力な武器になります。
「株式市場でニュースが起きた時に、このニュースが意味するとこはこうだよね、このニュースが意味するとこはこうだよね、と連想ゲームをしていくと、投資のアイデアにもつながるものです。」
泉田氏は、この連想ゲームを鍛えるトレーニング方法として、「関連銘柄」を検索することを勧めています。特定のテーマ(今回であればAIやSaaS)が出てきた際に、それを事業としている上場企業をピックアップし、実際の決算説明会資料を読んで売上比率などを確認する。
このパズルのような作業を繰り返すことで、ニュースの裏側にある投資のヒントをいち早く見つけ出すことができるようになります。
5. まとめ
リクルートの株価下落は、企業自身の業績不振ではなく、AnthropicなどのAI進化がもたらす「連想ゲーム」によるものと考えられます。
株式市場は、アナリストの予想よりも早く将来のリスクを織り込んで動きます。投資家としては、焦って落ちてくるナイフを掴むのではなく、次回の決算で北米のHRテクノロジー事業の動向を冷静に定点観測することが求められます。
参考資料
※リンクは記事作成時点のものです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日