2. なぜ株価は下落するのか?AIがもたらす「連想ゲーム」
業績は好調で、利益の柱である北米市場も成長しており、アナリストの予想も上がっている。それにもかかわらず、リクルートの株価は今年に入ってから段階的な下落を続けています。
2.1 決算は良いのに株価が下がる矛盾
2月9日の決算発表直後、好業績が好感されて一時的に株価は上昇しました。しかし、全体的なトレンドとしては下落基調が続いています。
インタビュアーから「なぜ株価が下がるのか」という疑問が投げかけられると、泉田氏は企業内部の決算ではなく「外部要因」に目を向けるべきだと語りました。その外部要因の正体こそが、AI(人工知能)の急速な進化です。
2.2 「SaaSの死」とAnthropicの脅威
泉田氏が鍵として挙げたのが、「Anthropic(アンスロピック)」というAI企業です。同社はOpenAIやGoogleと並ぶAI開発のトップランナーであり、「Claude(クロード)」というサービスを展開しています。
今年に入ってから、Anthropicは毎週のように新しい機能をリリースしています。中には、人が開発を行わなくてもAIが自動で機能を作ってくれたり、経理などの業務を自動で処理してくれたりするサービスも含まれています。
泉田氏はこの技術革新がもたらす影響について、次のように指摘します。
「開発しなくてもAIが答え出してくれるんだったらエンジニアもいらなくなる。」「そうした会社のサービスがなくなるのでは?というのが『SaaSの死』と言われてて、そういった関連銘柄が大きく売られるという状況も起きています。」
SaaS(Software as a Service)とは、クラウド経由で提供されるソフトウェアサービスのことです。AIが業務を自動化すれば、これまでSaaS企業が提供してきたサービスが不要になる可能性があります。これが「SaaSの死」と呼ばれる懸念です。
【動画で解説】リクルート、好決算なのになぜ株価下落?
2.3 株式市場特有の「連想ゲーム」とは
では、なぜ「SaaSの死」がリクルートの株価下落に繋がるのでしょうか。ここで泉田氏が強調するのが、株式市場における「連想ゲーム」というメカニズムです。
「これ株式市場って『連想ゲーム』だから、ここがダメになる、ここがダメになったら誰が影響を受けるっていうのをどんどん連想していくんですよ。」
SaaSのビジネスモデルが崩壊すれば、これまで引く手あまただった高単価なITエンジニアの採用ニーズが激減します。
アメリカの採用市場が縮小すれば、北米のHRテクノロジー事業を最大の稼ぎ頭とするリクルートの業績が、直接的な打撃を受けることになります。
つまり、「AIが進化する」→「SaaS企業が打撃を受ける」→「エンジニアの採用が減る」→「北米のHR事業を主力とするリクルートの業績が悪化する」という連想が働き、先回りして株が売られているというのが、泉田氏の分析です。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日