長寿化が進む現代、定年後の「働き方」と「お金」に対する不安や関心はかつてないほど高まっています。最新の公的データによれば、65歳までの雇用確保がほぼ定着する一方で、現役時代のような収入を維持することの難しさも見えてきました。
本記事では、シニア世代の雇用・退職金・家計収支の3つのポイントから、豊かな老後を迎えるための現実的な備えについて解説します。
1. 「65歳まで働ける」は当たり前!99.9%の企業が雇用継続、70歳現役時代へ
厚生労働省の令和7年集計によると、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施している企業は99.9%に達し、希望すれば65歳まで働ける環境がほぼ定着しています。
さらに、努力義務である70歳までの就業確保措置を実施する企業も34.8%に増加しており、シニアが長く活躍できる社会へと移行しつつあります。ただし、雇用は確保されていますが、役割や賃金体系が変わるケースも多いため注意が必要です。
2. 退職金、平均いくらもらえる?大卒で「約1896万円」の現実、まずは自社の制度確認を
厚生労働省の最新の実態調査によると、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者の1人平均退職給付額は、大学卒(管理・事務・技術職)で1896万円となっています。また、高校卒(同)では1682万円という結果でした。
一見すると学歴による差があるように見えますが、退職金の額は「勤続年数」や「企業の給与体系」、あるいは「企業規模」によって大きく変動するのが実情です。大卒・高卒といった区分はあくまで一つの統計上の目安に過ぎません。
大切なのは、平均値に一喜一憂することではなく、まずはご自身の勤める会社の就業規則や退職金規定をしっかりと確認することです。早期に「わが家の退職金」の概算を把握することで、より具体的で安心感のある資産計画を立てることが可能になります。
3. 「年金だけでは足りない」現実…毎月4.2万円の不足、貯蓄切り崩しのシビアな家計収支
総務省の2025年家計調査で65歳以上の家計についてみていきましょう。
3.1 【65歳以上の夫婦のみの無職世帯】
総務省の2025年家計調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、年金などの実収入が月額25万4395円に対し、消費支出は26万3979円となっています。税金や社会保険料を差し引いた可処分所得で考えると、毎月約4万2千円の不足(差額)が生じています。
3.2 【65歳以上の単身無職世帯】
単身無職世帯でも毎月約3万円の不足となっており、年金だけではまかなえず、貯蓄を取り崩して生活している実態が見えてきます。
支出の内訳を見ると、食料や光熱・水道など生活に欠かせない費用の割合が大きく、節約できる余地はそれほど多くありません。こうした状況から、年金収入だけで家計をやりくりするのは簡単ではなく、不足分を貯蓄で補いながら生活している高齢世帯も少なくないと考えられます。
4. 長く働ける時代だからこそ、「お金の寿命」を延ばす準備を
今回の調査から、シニアを取り巻く「長く働ける環境」と、年金だけでは賄いきれない「家計の厳しさ」の現実が浮き彫りになりました。特に深刻なのが、私たちが日々実感する物価高の影響です。
家庭の食卓の指標となる「カレーライス物価」は2026年1月に1食370円と過去最高値を更新しています。10年前から約5割も高騰したこの数字は、退職金や年金という「入ってくるお金」だけでなく、生活コストという「出ていくお金」への目配りが不可欠であることを物語っています。
2026年2月にはコメ価格の下落により7カ月ぶりの値下げ(367円台)が見込まれるものの、依然として高値圏にあり、原油高によるさらなる影響も予断を許しません。このように変動の激しい時代だからこそ、まずは自身の退職金制度を確認し、老後の収支をシミュレーションしてみることが大切です。
長く働いて労働収入を維持することはもちろん、新NISAなどを活用した資産運用で「お金にも働いてもらう」視点を持つことが、物価高に負けない家計を作る近道となります。単なる節約だけでなく、賢い運用と就労を組み合わせることで、物価変動に左右されない安心感を手に入れることができます。あなたの理想のセカンドライフを形にするために、今日から具体的なマネープランを描き始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します」
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概要 退職給付(一時金・年金)の支給実態」
- 総務省「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 帝国データバンク「「カレーライス物価指数(2026年基準改定)」調査 ―2026年1月」
村岸 理美