2026年1月分の消費者物価指数が公表されました。総合指数は2020年を100として112.9と、前年同月に比べて1.5%上昇しています。物価高のなかで、老後の生活費に対する不安を抱える人も少なくないでしょう。
シニア世代がライフプランを立てる際に知っておきたいのが、給付金や手当の存在です。こうしたお金を受け取れれば、日々の支出を補えて、家計管理が楽になる可能性もあります。給付金・手当の存在を知っていれば、ほかの家庭よりも家計に余裕を持たせやすくなるでしょう。
この記事では、シニア向けの給付金・手当を3つ解説します。
1. これからのシニア世代のライフプラン
これからのシニア世代のライフプランは、20年から30年先を見据えて立てていく必要があります。長寿化が進むなかで重要なのが、収入や資産の金額です。
収入においては、年金を受け取りながら働き続ける選択肢を持つことも考えなければなりません。「公的年金を生活のベースにし、不足分の費用を給与収入で補う」「70歳までは働き続けて給与と年金で生活し、70歳以降は資産を取り崩して生活し始める」といった戦略的なプランをつくっていくことが求められます。
また、無理のないペースで働き続けることで、社会とのつながりも保ち続けられます。社会とのつながりをつくることは健康においても有効な方策のひとつです。年金・仕事・資産の3つの観点を重視しながら、無理なく暮らせる老後生活を設計していくことを意識しましょう。
老後のライフプランニングでは、給付金や手当への理解も欠かせません。シニアが受け取れる給付金・手当について、次章で解説します。
2. シニアが受け取れる給付金・手当3選
シニア世代が受け取れる給付金や手当はさまざまです。そのなかでも年金・雇用・介護に絞って、活用したい給付金・手当を紹介していきます。今回紹介するのは、以下の3つです。
- 年金生活者支援給付金
- 高年齢雇用継続給付
- 高齢者住宅改修費用助成制度
それぞれ、制度の詳細を見ていきましょう。
2.1 年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、所得の少ない年金世帯に支給される給付金です。給付額は年金額の改定にあわせて見直されます。今年度の金額と、2026年度の金額を見てみましょう。
老齢年金生活者支援給付金基準額
- 2025年度:5450円
- 2026年度:5620円(前年比+170円)
障害年金生活者支援給付金基準額
- 2025年度
・1級:6813円
・2級:5450円 - 2026年度
・1級:7025円(前年比+212円)
・2級:5620円(前年比+170円)
遺族年金生活者支援給付金基準額
- 2025年度:5450円
- 2026年度:5620円(前年比+170円)
給付対象になる条件は、以下のとおりです。
年金生活者支援給付金の給付対象者2/4
出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」、日本年金機構「障害年金生活者支援給付金の概要」、日本年金機構「遺族年金生活者支援給付金の概要」をもとに筆者作成
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金
- 以下を満たす場合に対象となる。
・65歳以上の老齢基礎年金の受給者である。
・世帯全員が市町村民税非課税である。
・前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの人は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの人は80万6700円以下(※2)である。
障害年金生活者支援給付金
- 以下を満たす場合に対象となる。
・障害基礎年金の受給者である。
・前年の所得(※1)が「479万4000円+扶養親族の数×38万円(※3)」以下である。
遺族年金生活者支援給付金
- 以下を満たす場合に対象となる。
・遺族基礎年金の受給者である。
・前年の所得(※1)が「479万4000円+扶養親族の数×38万円(※3)」以下である。
※1障害年金・遺族年金などの非課税収入を除く。
※2昭和31年4月2日以後生まれで80万9000円を超え90万9000円以下の人や昭和31年4月1日以前生まれで80万6700円を超え90万6700円以下の人には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される。
※3同一生計配偶者のうち70歳以上の人または老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族の場合は63万円となる。
基本的には、基礎年金を受給しており、所得が所定の金額以下であれば支給対象です。なお、老齢年金生活者支援給付金のみ、住民税非課税世帯でなければ受給できないため、注意が必要です。
給付金を受け取る際は、所定の書類に必要事項を記入し、日本年金機構に送付する必要があります。必要事項は氏名や住所、個人番号などであり、書類の記入にはあまり手間がかかりません。
2.2 高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付は、60歳以降も引き続き雇用されている場合や、再就職した場合に支給される給付金です。給付は、以下の2種類に分かれます。
- 高年齢雇用継続基本給付金:60歳以降も継続して雇用された場合の給付金
- 高年齢再就職給付金:60歳以降に一度退職し再就職した場合の給付金
それぞれの支給額や要件、申請手順は以下のとおりです。
支給額
- 賃金の最大10%
支給要件
【高年齢雇用継続基本給付金】
- 原則として60歳時点の賃金と比較して、60歳以後の賃金が60歳時点の75%未満となっている人で、以下の2つの要件を満たした人が対象。
・60歳以上65歳未満の一般被保険者であること。
・被保険者であった期間が5年以上あること。
【高年齢再就職給付金】
- 基本手当を受給した後、60歳以後に再就職して、再就職後の各月に支払われる賃金が基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満となった人で、以下の5つの要件を満たした人が対象。
・60歳以上65歳未満の一般被保険者であること。
・基本手当についての算定基礎期間が5年以上あること。
・再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること。
・1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる安定した職業に就いたこと。
・同一の就職について、再就職手当の支給を受けていないこと。
申請手順
- 事業主を経由して申請する。ただし、自身での申請も可能。
- 申請の際は、以下の書類を用意して管轄のハローワークへ向かう。
【初回の申請に必要な書類】
- 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
- 高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
- 被保険者が雇用されていることの事実、賃金の支払状況及び賃金の額を証明することのできる書類
- 被保険者の年齢が確認できる官公署から発行・発給された身分証明書などの書類
【2回目以降の申請に必要な書類】
- 高年齢雇用継続給付支給申請書(受給資格確認や前回の支給申請手続後にハローワークから交付)
- 賃金台帳、出勤簿又はタイムカード
申請手続きは、基本的に事業主を経由して行うため、自分でハローワークに出向く必要はありません。希望する場合のみ、自分で申請もできます。
2.3 高齢者住宅改修費用助成制度
介護やすまいに関する助成として「高齢者住宅改修費用助成制度」があります。支給額や支給要件などは、以下のとおりです。
支給額
- 生涯20万円
・保険給付:9割(上限18万円)
※所得に応じて8割(上限16万円)もしくは7割(上限14万円)
支給要件
- 在宅介護や高齢者の自立支援のために福祉用具を導入する際に必要な段差の解消や手すりの設置などの改修工事をすること
申請手順
- ケアマネジャーに相談する
- 施工事業者を選択し見積もり依頼をする
- 工事前に市町村へ申請する
- 市町村が内容を確認して結果を通知する
- 工事をしてもらう
- 工事完了後に市町村へ給付請求する
- 支給額が決定・通知される
自宅で介護を受けることになれば、転倒事故を防いだり、より楽に生活ができるようにしたりする工夫が求められます。助成制度を使いたい場合は、まず担当のケアマネジャーに相談してみるとよいでしょう。また、着工後の申請は認められないため、必ず工事の前に手続きをしてください。
※やむを得ない事情がある場合には、工事完成後に申請も可能。やむを得ない事情がある場合については、住宅改修が完了した後に、(理由書等の必要書類を)提出することができる。
3. まとめ
シニア世代は、長く働き続けて安定した収入を維持しながら、今回紹介した給付金・手当を有効活用するのが望ましいです。手元に残るお金を増やせれば、家計にもゆとりが生まれます。
ただし、給付金や手当を受け取るには申請が必要なケースがほとんどです。自分が対象になりそうなものがあれば、各給付・手当の窓口に問い合わせて確かめてみるとよいです。
利用可能な支援を積極的に活用し、老後生活の基盤をつくっていきましょう。
参考資料
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)1月分(2026年2月20日公表)」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「障害年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「遺族年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
- 厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修」
石上 ユウキ