2026年1月、2026年度(4月分以降)の年金額改定が公表されました。

総務省の家計調査(2024年)によると、単身無職世帯の平均支出は約15万円。この「月額15万円」は老後の暮らしを維持する一つの目安ですが、意識すべきは「額面」と「手取り」の差です。

年金からは社会保険料や税金が天引きされるため、実際の手取り額は額面を下回るのが一般的です。 今回はこの「15万円」を基準に、受給実態を探ってみましょう。

1. 【年金の基本】日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造

日本の公的年金制度は、土台となる「国民年金(基礎年金)」と、その上に乗る「厚生年金」で構成されており、「2階建て構造」といわれています。

これら2つの年金制度の基本的な違いについて見ていきましょう。

1.1 公的年金の2階建て構造とは

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厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

1階部分:国民年金(基礎年金)

  • 加入対象:原則として日本国内に住む20歳から60歳未満のすべての方
  • 保険料:加入者全員が定額ですが、年度ごとに見直されます(※1)
  • 受給額:保険料を全期間(480カ月)納めると、65歳から満額の老齢基礎年金(※2)を受け取れます。未納期間がある場合は、その分が満額から減額されます

※1 国民年金保険料:2026年度の月額は1万7920円です
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度の月額は7万608円です

2階部分:厚生年金

  • 加入対象:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※3)に勤務し、一定の要件を満たす方が国民年金に上乗せして加入します
  • 保険料:収入に応じて決まります(上限あり)(※4)
  • 受給額:加入していた期間や納付した保険料によって、個人ごとに異なります

2階部分にあたる厚生年金は、会社員や公務員などが国民年金に加えて加入する制度です。国民年金と厚生年金とでは、加入の対象者、保険料の決まり方、そして将来受け取る年金額の計算方法などが違います。

このため、老後に支給される年金額は、個人の加入状況や現役時代の収入によって差が生じることになります。

また、公的年金の額は物価や現役世代の賃金の変動に合わせて毎年度改定される仕組みであることも、理解しておくべき重要な点です。

※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は除く、共済組合員は含む)の総数が51人以上となる見込みの企業などを指します
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率を乗じて計算されます

2. 【2026年度の年金額】国民年金は+1.9%、厚生年金は+2.0%の増額が決定

公的年金の支給額は、毎年度、賃金や物価の変動を考慮して改定されます。2026年度分については、国民年金(基礎年金)が前年度比で+1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が+2.0%と、4年度連続でのプラス改定となりました。

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分 ※1
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2

※1 昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)となります。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準を示したものです。

国民年金のみの加入の場合、満額(※3)でも月々の支給額は約7万円です。仮に繰下げ受給(※4)の上限である75歳まで受給開始を遅らせたとしても、月額は13万円に届きません。

※3 国民年金(老齢基礎年金)の満額:国民年金保険料を480カ月納付した場合に、65歳から受け取れる年金額を指します
※4 繰下げ受給:老齢年金の受給開始時期を66歳から75歳までの間で遅らせる制度です。「繰下げ月数×0.7%」の増額率が適用され、75歳で受給を開始すると増額率は84%になります。

3. 厚生年金+基礎年金「額面15万円(年額180万円)」に届く人はどれほどいる?

厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の男女合計での平均月額は「15万289円」でした。なお、この金額には1階部分である国民年金(老齢基礎年金)の月額分も含まれています

受給額別の人数分布は、以下のようになっています。

3.1 厚生年金の受給額ごとの受給権者数

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(基礎年金を含む)受給者の平均月額は15万289円です。

一見すると平均でラインに届いているように見えますが、受給額ごとの分布を詳しく見ると以下のようになります。

  • 15万円以上受給している人の割合:49.8%
  • 15万円未満の人の割合:50.2%

厚生年金に加入していた人であっても、半数以上は月額15万円に届いていないのが現状です。また、自営業者など「国民年金のみ」を受給している場合、2026年度の満額でも月約7万円です。

3.2 年金の意外な盲点:額面と手取りの差

さらに注意が必要なのは、この「15万円」はあくまで額面(支給額)であるという点です。実際に銀行口座に振り込まれる「手取り(受取額)」は、ここからさらに差し引かれます。

ここで重要なのは、天引きされる金額は現役時代の年収ではなく、「現在の年金受給額」や「直近の所得状況」に基づいて決まるということです。

天引きされる主な項目

  • 介護保険料・健康保険料: 65歳以降も一生涯支払いが続きます。料率は自治体ごとに異なり、前年の所得に応じて決定されます。
  • 所得税・住民税: 年金受給額から「公的年金等控除」などを引いた後の所得に対して課税されます。

特に定年退職した直後の1年目などは、住民税や健康保険料が「前年の現役時代の高い所得」をベースに計算されます。そのため、年金額面は15万円あっても、手取り額が想定外に少なくなってしまうケースがあるのです。

4. 【年収106万円の壁】撤廃へ。2025年成立の「年金制度改正法」のポイントを解説

2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」では、パートやアルバイトとして働く人々の働き方に大きく関わる、いわゆる「年収106万円の壁」を撤廃する改正が盛り込まれました。

4.1 「年収106万円の壁」の概要

「106万円の壁」とは、パート・アルバイトなどの短時間労働者の方の年収が106万円を超えると、社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養から外れ、自身で保険料を納める必要が生じる目安のことです。

保険料の負担によって手取り額が減少するため、収入が基準額を上回らないように労働時間を調整する「働き控え」の一因と指摘されてきました。

また、社会保険の適用対象となる企業の規模はこれまで段階的に広げられており、2024年10月からは従業員数「51人以上」の事業所が対象となっています。

今回の法改正では、「3年以内の賃金要件の撤廃」と「10年をかけて企業規模要件を段階的に撤廃する」ことが決定しました。

4.2 社会保険の加入対象拡大:短期労働者の加入要件見直し

2025年7月時点で、パートタイムなどで働く短時間労働者が社会保険に加入するためには、次の5つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 2カ月を超える雇用の見込みがあること
  3. 学生ではないこと
  4. 所定内賃金が月額8万8000円以上であること(賃金要件)
  5. 従業員数51人以上の企業で勤務していること(企業規模要件)

今回の改正によって、このうちの4番目「賃金要件」と5番目「企業規模要件」が撤廃されることになります。

いわゆる「106万円の壁」は、全国の最低賃金の引き上げ状況を考慮しながら3年以内に廃止される方向で、社会保険の適用対象となる企業規模は、10年かけて段階的に拡大される予定です。

5. まとめ:将来の年金額を確認し、計画的な準備を

2026年度の年金額はプラス改定となりましたが、老後の生活設計には支給額面だけでなく手元に残る「手取り」の把握が不可欠です。

厚生年金で月15万円以上を受給する人は49.8%と約半数に留まる中、実際にはそこから直近の所得に応じた税や保険料が天引きされます。

2025年成立の改正法による加入条件の緩和なども視野に入れ、手取り収入を意識しながら、より現実的なマネープランを検討していきましょう。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

奥田 朝