金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年12月に発表した調査により、老後の家計における厳しい実情が明らかになりました。
60歳代の単身世帯では50.7%、二人以上世帯では33.6%が「日々の生活費をまかなうのが難しい」と回答しています。また、70歳代においても単身世帯の35.5%、二人以上世帯の26.5%が同様の経済的な困難を抱えている状況です。
この背景には、年金の受給額に大きな「個人差」が存在することが挙げられます。
厚生年金の平均受給額は月額およそ15万円とされていますが、実際の支給額は3万円未満から30万円を超えるケースまで様々です。そのため、公的年金だけでは生活の維持が困難な層も少なくありません。
このような状況を支援するために設けられたのが「年金生活者支援給付金」制度です。
この給付金は、対象者であれば2カ月に一度の年金支給日に上乗せして受け取れます。しかし、重要な点として「申請手続きをしなければ1円も支給されない」ということを覚えておく必要があります。次の章から、具体的な支給条件や金額について詳しく見ていきましょう。
1. 【給付基準額】年金生活者支援給付金、2026年4月分からの増額が決定
年金生活者支援給付金は、年金による収入やその他の所得が一定の基準額を下回る世帯を支える目的で、2019年から始まった制度です。2カ月に一度、公的年金に加算される形で支給されます。
この給付金は、受給している年金の種類によって3つの区分に分かれており、それぞれで支給要件や金額が設定されています。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
1.1 2026年度における年金生活者支援給付金の具体的な支給額
年金生活者支援給付金の額は、物価の変動を考慮して毎年度見直される仕組みになっています。
2026年1月23日、厚生労働省は2026年度の年金額改定と同時に、年金生活者支援給付金の給付基準額の改定も発表しました。
これにより、6月に支給される「4月・5月分」の給付金から、前年度と比較して3.2%引き上げられることが確定しました。
【2025年度から2026年度への変更点】
- 老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5450円から5620円へ
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級は6813円から7025円へ、2級は5450円から5620円へ
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5450円から5620円へ
老齢年金生活者支援給付金の実際の支給額は、この基準額を基に保険料の納付期間などに応じて個別に計算されます。
これらはすべて月額表示であり、支給日には2カ月分がまとめて年金に上乗せされます。満額に近い額を受給できる場合、1回の支給で約1万円、年間では約6万円を受け取ることになります。
なお、厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2024年3月時点での平均給付月額は、老齢年金生活者支援給付金が4016円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金が5228円となっています。
2. 【支給要件】年金本体とは別振込で上乗せ「年金生活者支援給付金」対象となる人は?
年金生活者支援給付金は「老齢」「障害」「遺族」という3つの種類に分かれており、それぞれに異なる支給条件が定められています。
ここでは、それぞれの給付金を受け取るために満たすべき要件を具体的に確認していきましょう。
2.1 老齢年金生活者支援給付金の支給対象となる条件
老齢年金生活者支援給付金を受け取るためには、以下のすべての要件を満たすことが求められます。
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受給していること
- 同じ世帯に住む全員の市町村民税が非課税であること
- 前年の公的年金などの収入額(※1)と、その他の所得額の合計が、生年月日に応じて定められた以下の基準額以下であること
- 昭和31年4月2日以降に生まれた方:90万9000円以下
- 昭和31年4月1日以前に生まれた方:90万6700円以下(※2)
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は、ここでの収入額の計算には含まれません。
※2 収入と所得の合計額が一定の範囲内(昭和31年4月2日以降生まれの場合は80万9000円超90万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの場合は80万6700円超90万6700円以下)にある方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される場合があります。
2.2 障害年金生活者支援給付金を受け取るための条件
障害基礎年金を受給している方で、下記の所得要件を満たす場合に支給の対象となります。
- 障害基礎年金の受給者であること
- 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数に応じて基準額は上がります)
※ 障害年金などの非課税収入は、所得の計算には含まれません。
2.3 遺族年金生活者支援給付金の支給対象となる条件
遺族基礎年金を受給している方が対象で、所得に関する要件は障害年金生活者支援給付金と同様です。
- 遺族基礎年金の受給者であること
- 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数に応じて基準額は上がります)
※ 遺族年金などの非課税収入は、所得の計算には含まれません。
支給対象になるかどうかは、前年の所得額を基に判定されます。
また、これらの要件をすべて満たしていても、給付金が自動的に年金に上乗せされるわけではありません。ご自身で請求手続きを行う必要がある点に注意が必要です。
3. 【請求手続き】年金生活者支援給付金の手続きをしないとどうなる?
年金生活者支援給付金の支給対象となる可能性のある方には、日本年金機構から請求手続きに関する案内が送付されます。
書類が届くタイミングやその形式は、年金の受給状況によって異なります。ここでは、主な2つのケースにおける申請の流れを見ていきましょう。
3.1 ケース1:これから老齢基礎年金を新規で受け取る方の申請手順
- 65歳になる3カ月前に、年金を受け取るために必要な「年金請求書(事前送付用)」と同時に、給付金の請求書が郵送されます。
- 必要事項を記入した後、年金の受給を開始する年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書とあわせて年金事務所へ提出します。
3.2 ケース2:すでに基礎年金を受給中で新たに対象となる方の申請手順
- 毎年9月上旬から、対象となる方へ「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送付されます。
- 2025年1月以降に65歳になり、日本年金機構からこのはがき型の請求書が届いた方は、電子申請を利用することも可能です。
- 電子申請を利用しない場合は、はがきに必要事項を記入し、切手を貼って郵送で提出してください。
なお、支給要件を満たしているかの確認が必要な方には、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」と所得状況を申告するための「所得状況届」が送付される場合もあります。
4. 【年金生活者支援給付金】通帳には年金本体とは別に記載されます
年金生活者支援給付金は、年に6回、偶数月の15日に支給されます。
もし15日が土日や祝日など金融機関の休業日にあたる場合は、その直前の営業日に支給日が繰り上げられます。
支給される口座は年金を受け取っている口座と同じですが、通帳には年金本体とは別に「ネンキンシエンキュウフキン」といった名目で記載されます。これは、支払日は同じでも、それぞれが個別に処理されているためです。
支給額は、原則として前月と前々月の2カ月分がまとめて支払われる仕組みです。例えば、4月15日に受け取る給付金は、2月分と3月分の合計額ということになります。
5. まとめ:年金生活者支援給付金の対象者は申請手続きを忘れずに
この記事では、見落としがちな年金生活者支援給付金の制度内容や、その受け取りに不可欠な申請手続きについて詳しく解説しました。
公的年金の支給日に給付金が上乗せされるこの制度は、年金で生活するシニア世代にとって大きな支えとなるでしょう。ご自身やご家族が対象となっていないか、この機会に一度確認してみてはいかがでしょうか。
一方で、「人生100年時代」と言われる現代では、公的な支援だけで老後が安泰とは限りません。日頃から家計の管理や資産形成に関心を持つことも重要です。
老後の資金計画を立てるための一歩として、まずは「ねんきんネット」などを活用して、ご自身の年金見込額を正確に把握することから始めてみるのも一つの方法です。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- LIMO「【年金生活者支援給付金】2月13日、いつもの年金本体に上乗せされる条件とは?《2カ月に一度支給、年金生活者支援給付金制度のイロハ》」
マネー編集部社会保障班