3. 年金制度を社労士が解説、年金の手続き・仕組みの意外な盲点
年金相談を受けていると、年金制度全体だけでなく、年金の具体的な仕組みや手続きについても十分理解されているとはいえない状況です。老齢年金相談でよく見かける誤解について紹介します。
3.1 【よくある年金の誤解④】「繰下げ受給するまで年金手続き不要」は本当?
65歳で老齢年金の受給権が発生する人には日本年金機構から手続きの案内が来ますが、繰下げする場合は、受給開始までは老齢年金の請求手続きは不要です。該当するのは次の人です。
- 厚生年金加入期間が11ヶ月以下の人
- 1961年4月2日以降に生まれた男性
- 1966年4月2日以降に生まれた女性
ただし、「特別支給の老齢厚生年金」の受給権がある人は請求手続きしないと時効でもらえなくなる可能性があります。年金請求の時効は5年です。
たとえば、63歳から特別支給の老齢厚生年金を受給できる人が繰下げ受給開始する70歳まで手続きしない場合、63歳から65歳までの年金は時効で受給できません。繰下げ受給する人や障害年金の受給者については、時効が適用される人が散見されます。
3.2 【よくある年金の誤解⑤】「在職老齢年金の支給停止は回避できる」は本当?
在職老齢年金による支給停止とは、厚生年金に加入しながら働く人で、給与(総報酬報酬月額相当額)と年金額の合計が一定基準を超える場合、老齢厚生年金の一部または全部がカットされる仕組みです。
支給停止を避けるために「退職後に繰下げ受給(受給開始を遅らせて増額させる)」を選択する人もいますが、期待したほどの増額効果が得られないケースがあります。
なぜなら、繰下げ待機期間中であっても、在職老齢年金の仕組みによって「本来支給停止されるはずだった年金部分」については、将来の増額率(月0.7%)の計算対象から除外されてしまうからです。 つまり、全額支給停止になるほど稼いでいる期間に繰下げをしても、保険料納付による再計算分を除けば、老齢厚生年金の受給額は増えない点に注意が必要です。
また、繰下げ受給によって加給年金がもらえないなどのデメリットが発生する可能性もあります。
3.3 【よくある年金の誤解⑥】「未納分の年金は後から払える」は本当?
年金の受給開始年齢が近い人から、「年金保険料の未納分を納付したい」という申し出を受けることがあります。保険料を後から納付できるのは次のケースに限定されるため、実際には後から払えないことも多いため注意しましょう。
- 未納分の納付:納付期限から2年以内
- 追納(免除や納付猶予を受けた保険料の納付):免除等を受けた月から10年以内
未納分の納付または追納ができない場合、60歳から65歳の間に限定して国民年金に「任意加入」できます。ただし、厚生年金加入者は任意加入できません。
