2. 年金制度を社労士が解説、SNSで広がる「年金不安」のウソ・ホント。
年金制度は内容が複雑なうえ、SNSなどでは「どうせもらえない」「払うだけ損」といった断片的な情報が散見され、制度への誤解が生じがちです。ここでは、多くの人が抱く代表的な3つの疑問を紹介します。
2.1 【よくある年金の誤解①】「年金は元が取れない」は本当?
公的年金制度は、老後の生活を支える老齢年金だけでなく、万が一のときに生活を保障する障害年金や遺族年金の機能を持つ「社会保険」です。「元が取れる・取れない」という貯金のような考え方は、制度の目的から見て適切ではありません。年金は、現役世代から高齢者等への再分配を行うしくみでもあります。
しかし、そうは言っても、支払った保険料に対してどれくらい受給できるか、気になる人も多いでしょう。老齢基礎年金を例にシミュレーションしてみると、2026年度の国民年金保険料は月1万7920円です。20歳から60歳まで40年間の保険料総額は約860万円に対し、老齢基礎年金の満額は約85万円(2026年度想定)となります。
実際には、支払った保険料は全額が「社会保険料控除」の対象となり、所得税や住民税が軽減される節税効果もあります。これらを加味すると、受給開始から概ね10年程度(75歳前後)まで受給すれば、支払った保険料の元が取れる計算です。 85歳過ぎまで受給すれば支払総額の約2倍を受け取ることになり、さらに障害や死亡のリスクもカバーされるため、「元が取れない」という指摘は必ずしも適切ではありません。
2.2 【よくある年金の誤解②】人口減少で「一人当たりの負担はさらに増える」は本当?
人口が減って年金の支え手が減っているので、「国民一人一人の負担はさらに増えていくのでは」と疑問に思う方もいるかもしれません。
たしかに、少子高齢化は進行していますが、働く人(特に女性や高齢者)が増えているように、年金制度の「支え手」となる働く人の数は、当初の予測よりも増加しています。「長く働く人が増える」ことで、一人当たりの負担増は軽減されます。
実際に、現役世代の負担増を抑えるために、厚生年金保険料は2017年9月以降は18.3%で固定されています。法改正がない限り、保険料の負担増はありません。ただし、年金の給付水準は下がる見通しです。
2.3 【よくある年金の誤解③】「年金制度はこの先破綻する」は本当?
日本の公的年金制度は、厚生年金保険料率を固定した上で、財源の範囲内で給付水準を自動調整する「マクロ経済スライド」の仕組みが導入されています。
これにより、現役世代の人口減少や平均余命の伸びに合わせて給付水準を調整し、おおむね100年間で積立金が底をつくことがないよう財政の持続可能性を確保します。年金財政の現状と見通しを確認する作業が、5年毎に実施される「公的年金の財政検証」です。
ここまで、厚生年金を月額15万円以上受給している人の割合と、年金制度に関するよくある誤解について解説しました。次章では、年金の仕組みや手続きに関するよくある誤解を紹介します。