公的年金は、老後の生活を支える重要な収入源の一つです。

年金受給額は、現役時代にどれくらいの期間働き、どの程度の収入を得ていたかといった条件によって大きく変わります。

参考までに、厚生労働省年金局の最新データによれば、国民年金の平均月額は5万円台、厚生年金(国民年金を含む)の平均月額は15万円台となっています。

では、大卒者を想定し、22歳で就職してから60歳までの38年間働き続け、平均年収が400万円だった場合、老後に受け取れる年金はどの程度になるのでしょうか。

本記事では、平均年収400万円・勤続年数38年という条件をもとに、厚生年金(国民年金を含む)の受給額をシミュレーションした結果を紹介します。

1. あなたは老後に「国民年金」と「厚生年金」両方を受け取れる?

まずは、老後に受け取る「公的年金」の基本的な仕組みを確認しておきましょう。

日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金による2階建ての構造が採用されています。

1階部分にあたるのが国民年金(基礎年金)で、その上に上乗せされる形で2階部分として厚生年金があります。

国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が対象となる公的年金制度です。

加入者は、働き方や立場に応じて「第1号」「第2号」「第3号」のいずれかに区分されます。

  • 第1号被保険者:自営業、学生、無職など
  • 第2号被保険者:会社員、公務員
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者

一方、国民年金を基礎とし、その上に上乗せされるかたちで支給されるのが厚生年金です。

厚生年金は、国民年金に加えて受給できる制度で、主に民間企業や官公庁に勤務する人を対象としています。

このため、国民年金と厚生年金の両方を受け取れるのは、第2号被保険者として就労している給与所得者、つまり会社員や公務員に該当する人となります。

次章では、国民年金と厚生年金の両方を受給できる人を対象に、「平均年収400万円」「勤続年数38年」という条件を設定し、老後に受け取れる年金の月額がどの程度になるのかを見ていきます。

2. 「平均年収400万円×38年間」働いたら将来の年金額はいくらぐらいもらえる?

本章では、生涯を通じた平均年収を400万円と仮定し、民間企業に38年間勤務した場合、老後にどの程度の年金を受け取れるのかを試算します。

この条件では「第2号被保険者」に該当するため、国民年金と厚生年金の両方が受給対象となります。

そのため、「平均年収400万円」「加入期間38年」かつ、以下の前提条件での年金月額は、国民年金分と厚生年金分を合算して求めることになります。

  • 2003年4月以降、厚生年金に38年間加入している
  • 国民年金は20歳から60歳までの40年間のうち、学生期間の2年間は保険料免除(追納なし)とし、実質納付期間は38年とする
  • 配偶者および扶養家族はいない

まずは、1階部分にあたる「国民年金」の受給額から見ていきましょう。

2.1 「国民年金」の受給額を試算する

国民年金の受給額は、次の計算式で算出します。

83万1700円 ×(保険料納付済み月数 ÷ 加入可能年数(12か月換算))※昭和31年4月2日以後生まれの方が対象

国民年金の加入期間が22歳から60歳までの38年間(456か月)の場合、国民年金として受け取れる年額は「約79万円」となります。

続いて、厚生年金の計算を確認していきましょう。

2.2 「厚生年金」の受給額を試算する

厚生年金は、以下の計算式にもとづいて算出されます。

なお、経過的加算は特別支給の老齢厚生年金を受給する人が対象となる仕組みであり、加給年金は、生計を同一にする配偶者や子どもがいる場合に支給される制度です(※いずれも一定の要件があります)。

今回の試算では、年金額の中核となる「報酬比例部分」に着目するため、「経過的加算」および「加給年金額」は計算に含めていません。

年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額

報酬比例部分の金額は、次の計算式で求められます。

報酬比例部分の試算方法3/5

報酬比例部分の試算方法

出所:日本年金機構「は行 報酬比例部分」

報酬比例部分=A+B

  • A(2003年3月までの加入期間):平均標準報酬月額×7.125/1000×同期間の加入月数
  • B(2003年4月以降の加入期間):平均標準報酬額×5.481/1000×同期間の加入月数

平均標準報酬月額とは、平成15年3月以前の加入期間において、算定対象となる各月の標準報酬月額を合計し、その加入月数で割って求められる金額です。

一方、平均標準報酬額は、平成15年4月以降の加入期間を対象とし、標準報酬月額と標準賞与額を合算したうえで、その期間の加入月数で割って算出されます。

仮に2003年4月以降に厚生年金へ38年間加入し、生涯の平均年収を400万円と想定した場合、賞与を含めた年収をベースに試算すると、その12分の1である約33万3000円を平均標準報酬額として扱うことができます。

この前提で計算すると、厚生年金の年額は「約82万4780円」となります。

以上を踏まえると、「年収400万円」で「38年間」就労したケースでは、国民年金と厚生年金を合わせた受給額は年額でおよそ161万4780円となり、月額にすると約13万4500円程度となります。

3. 令和シニアはいくら受け取っている?厚生年金の「受給額ごとの人数」

前章では、「平均年収400万円」で「38年間」勤務したケースをもとに、受け取れる年金の月額を試算しました。

では、実際に年金を受給している現在のシニア世代は、どの程度の年金を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、国民年金を含む厚生年金の受給者数は、次のように示されています。

国民年金を含む厚生年金の受給者数4/5

国民年金を含む厚生年金の受給者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

  • 1万円未満: 4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満: 1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満: 3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満: 6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満: 7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満: 10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満: 31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満: 57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満: 80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満: 101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満: 111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満: 107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満: 97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満: 92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満: 92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満: 96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満: 100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満: 103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満: 102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満: 96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満: 85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満: 70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満: 52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満: 35万0004人
  • 24万円以上~25万円未満: 23万0211人
  • 25万円以上~26万円未満: 15万0796人
  • 26万円以上~27万円未満: 9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満: 5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満: 3万0289人
  • 29万円以上~30万円未満: 1万5158人
  • 30万円以上~: 1万9283人

国民年金と厚生年金の双方を受給している人のうち、月額15万円以上受給している人は、全体の約半数(49.8%)となっています。

また、今回試算した「平均年収400万円で38年間働いた場合」に想定される年金月額である13万円を下回る人は、全体の38.7%を占めています。

なお、ここで示している年金額はいずれも「額面ベース」であり、実際に受け取る金額は、税金や社会保険料が差し引かれる点に留意する必要があります。

4. 【注意】年金からも「税金」や「社会保険料」が天引きされている

前章では「平均年収400万円で38年間勤務した場合」の将来の年金額を試算してきましたが、ここで示した金額はあくまで「額面」であり、そのままの金額を受け取れるわけではありません。

年金も現役時の給与と同様に、「税金」や「社会保険料」が差し引かれる仕組みとなっているため、実際に手元に残る金額は表示されている額よりも少なくなります。

年金から控除される主な「税金」や「社会保険料」には、以下のようなものがあります。

  • 所得税
  • 住民税
  • 健康保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料)
  • 介護保険料

では、年金からどの程度の税金や社会保険料が差し引かれるのかを見ていきましょう。

4.1 年金からどのくらい「税金」や「社会保険料」が天引きされている?

年金から差し引かれる「税金」や「社会保険料」は、受給する年金額やそのほかの収入状況などによって異なります。

そこで本章では参考として、総務省が公表している「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」をもとに、65歳以上の単身無職世帯における家計収支の状況を確認していきます。

65歳以上の単身無職世帯における家計収支状況5/5

65歳以上の単身無職世帯における家計収支状況

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」

【65歳以上 単身無職世帯の家計収支】

  • 実収入:13万4116円
  • 可処分所得(手取り収入):12万1469円
  • 消費支出:14万9286円
  • 非消費支出:1万2647円

年金などによる実収入が13万4116円であるのに対し、税金や社会保険料として1万2647円が差し引かれ、手元に残る金額は12万1469円となっています。

控除される額は、住んでいる地域や収入水準、世帯の状況によって差がありますが、ひとつの目安として、収入のおよそ10%〜15%程度が差し引かれることを把握しておくとよいでしょう。

5. 「平均的な年収」でも老後資金は十分とは言い切れない

本記事では、平均年収400万円・勤続年数38年という条件をもとに、厚生年金(国民年金を含む)の受給額をシミュレーションした結果を紹介しました。

国税庁が公表した「令和5年分 民間給与実態統計調査」によれば、会社員など給与所得者の平均年収は460万円とされています。

本記事で想定した平均年収400万円は、日本の会社員の水準と大きくかけ離れたものではありませんが、その条件で試算した年金月額は約13万4500円にとどまります。

また、実際の受給状況をみると、この金額を下回る人も決して少なくありません。

さらに、年金は額面の金額がそのまま支給されるわけではなく、税金や社会保険料が差し引かれる点にも留意が必要です。

将来の暮らしを見据えるには、想定される年金額を把握したうえで、足りない部分をどのように補うかを早い段階から考えておくことが大切といえるでしょう。

参考資料