新年度の慌ただしさも少し落ち着き、間近に迫ったゴールデンウィークを前に、改めて家計の状況を見直している方も多いのではないでしょうか。

春は新生活関連の出費がかさむうえに、例年6月には「住民税決定通知書」が届くため、税金や公的支援に対する関心が高まる時期でもあります。

ここ数年、物価高騰への対策として、住民税非課税世帯など低所得層を対象とした現金給付が複数回実施されてきました。1世帯あたり数万円規模の支給が行われた例もあり、家計支援策として広く知られています。

一方、直近の経済対策では、従来の「非課税世帯への一律給付」とは異なり、18歳以下の子ども1人あたり2万円を支給する施策が柱となっています。子育て世帯を広く対象とする内容であるため、住民税非課税世帯向けの給付とは性格が異なります。

物価高対応子育て応援手当《制度概要》1/9

物価高対応子育て応援手当《制度概要》

出所:こども家庭庁「物価高対応子育て応援手当」

ただし、公的支援は現金給付だけではありません。住民税非課税であることを基準に、保険料の減免や教育費支援など、継続的な優遇制度が設けられています。

今回は、6月に届く通知書の確認を見据え、見落とされがちな支援策を整理するとともに、「住民税非課税」と判定される年収の目安について、給与・年金それぞれのケースで解説します。

1. 住民税非課税世帯に用意されている《主な優遇制度5つ》

感染症拡大や物価上昇への対策として、これまで住民税非課税世帯を中心に、現金給付を含む支援策が実施されてきました。

ここでいう住民税非課税世帯とは、一定の所得水準を下回ることにより、住民税が課されない世帯を指します。

実は、こうした世帯に対する支援は給付金だけにとどまりません。保険料の軽減や教育費支援など、継続的な優遇措置も数多く整えられています。代表的な制度を5つ確認していきましょう。

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置2/9

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置

LIMO編集部作成

1.1 ◆国民健康保険料(応益割)の減額

    応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額

1.2 ◆介護保険料の減額

  • 第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる

1.3 ◆国民年金保険料の免除・納付猶予

  • 全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか

1.4 ◆保育料の無償化

  • 0歳から2歳までの保育料が無償化
  • これにより、0~5歳までの保育料が無料になる

1.5 ◆高等教育の修学支援新制度

  • 授業料・入学金の免除または減額
  • 返還を要しない給付型奨学金
  • 上記により大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化

このほかにも、各自治体が独自に設けている支援制度を含めれば、活用できる仕組みはさらに広がります。

では、「住民税非課税世帯」とは具体的にどのような区分なのか、次章で制度の基本を整理します。

2. 「住民税非課税世帯」とはどのような位置づけか

まずは住民税の仕組みを押さえたうえで、非課税と判定される条件を確認します。

2.1 住民税の基本

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造3/9

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造

出所:総務省「個人住民税」

住民税は、都道府県および市区町村に納める地方税であり、地域行政を支える主要な財源です。公共サービスの提供やインフラ整備などに充てられています。

個人住民税は、均等割と所得割の2つの部分から成り立っています。

  • 均等割:所得に関係なく一律に課税される部分
  • 所得割:所得に応じて税額が決まる部分

この均等割と所得割の双方が課税されない状態を「住民税非課税」といいます。そして、世帯員全員が非課税である場合、その世帯は「住民税非課税世帯」に該当します。

なお、所得割のみが非課税となるケースもあります。ただし、各種給付や支援制度の対象となるかどうかは自治体の運用によって異なるため、詳細はお住まいの市区町村で確認する必要があります。

3. 住民税が非課税となる3つの基準

住民税が課されない条件は、主に次のいずれかに該当する場合です。

  1. 生活保護を受給している
  2. 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年所得が135万円以下
  3. 前年所得が自治体の定める基準額を下回る

上記のうち、1および2は全国共通の要件です。一方で、3の所得基準は市区町村ごとに具体的な金額が定められており、地域によって差があります。

次章において、その具体的な金額をご紹介していきます。

4. 住民税が非課税となる所得水準《年金・給与》の目安(例:神戸市)

「住民税非課税世帯」となる所得基準を、兵庫県神戸市の例を見てみましょう。

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?4/9

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?

出所:神戸市「住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?」

35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円

※21万円は、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合のみ加算されます。
※同一生計配偶者とは、生計を一にし、前年の合計所得金額が48万円以下の配偶者を指します。

この基準を超えない場合、住民税(市県民税)は課税されません。

5. 住民税非課税となる「給与収入・年金収入」の目安(例:神戸市)

住民税の非課税基準は、世帯構成だけでなく収入の種類によっても異なります。

所得とは、収入から各種控除を差し引いた後の金額をいいます。そのため、神戸市の基準を収入額ベースに置き換えて確認してみましょう。

単身世帯

合計所得金額が45万円以下になる方

  • 給与収入のみで収入金額が100万円以下
  • 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)

同一生計配偶者か扶養家族が1名いる場合

合計所得金額が101万円以下になる方

  • 給与収入のみで収入金額が156万円以下の方
  • 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が171万3333円以下の方(65歳未満)

このように、非課税となる水準は、世帯人数や収入区分によって大きく変動します。

単身世帯であれば、給与のみの場合は年収100万円以下、65歳以上の年金のみであれば155万円以下が一つの目安です。

一方、配偶者や扶養親族がいる場合は上限が引き上げられます。たとえば65歳以上の夫婦で年金収入のみの場合、年収211万円まで非課税範囲が広がります。

世帯構成や収入の組み合わせ次第で税負担は大きく変わるため、自身の状況に照らして具体的な基準を確認することが重要です。

6. 6月に「住民税決定通知書」が届いたら、まずはココを確認←自分が非課税かどうかを調べる方法

制度の説明を読んでも、最終的に重要なのは“いまの自分の判定”です。ここでは、誰でもすぐに確認できる具体的な方法を整理します。書類の見方からオンライン確認、自治体窓口で分かることまで、実務ベースで押さえておきましょう。

6.1 住民税決定通知書のどこを見る?

毎年6月ごろに届く「住民税決定通知書(税額決定・納税通知書)」が、最も確実な確認資料です。

チェックするのは次の2点です。

  • 均等割額
  • 所得割額

この両方が「0円」になっていれば、原則として住民税非課税です。

どちらか一方でも金額が記載されていれば、課税世帯に該当します。金額の大小は関係ありません。1000円でも課税されていれば「非課税」にはなりません。

6.2 「均等割」「所得割」欄の確認ポイント

通知書は自治体によって書式が異なりますが、必ずどこかに

  • 市町村民税
  • 都道府県民税

の内訳が記載されています。

見るべきなのは「税額」の欄です。所得金額や控除額ではなく、最終的な税額がゼロかどうかを確認してください。

なお、扶養状況や障害者控除などの条件によっては、所得があっても均等割のみ非課税になるケースもあります。制度ごとの判定は異なるため、通知書の税額が基本判断になります。

6.3 マイナポータルで確認する方法

紙の通知書が手元にない場合は、マイナポータルから税情報を確認できます。

ログイン後、「わたしの情報」>「税・所得に関する情報」 の項目から、住民税課税情報を閲覧できます。

ステップ① ログイン後トップページのホームタブの情報を選択する → ステップ② その他のわたしの情報を選択する6/9

ステップ① ログイン後トップページのホームタブの情報を選択する → ステップ② その他のわたしの情報を選択する

出所:マイナポータル「01 わたしの情報を取得する」

ステップ③ わたしの情報を検索する入力画面を立ち上げる7/9

ステップ③ わたしの情報を検索する入力画面を立ち上げる

出所:マイナポータル「01 わたしの情報を取得する」

転居した場合や過去年度分を確認したい場合も便利です。スマートフォンでも操作可能なので、通知書を紛失している場合の代替手段として活用できます。

6.4 自治体窓口で確認できること

「自分の判定が制度上どう扱われるのか分からない」という不安がある場合は、自治体窓口での確認が確実です。

窓口では次のようなことが確認できます。

  • 非課税世帯に該当するかどうか
  • 世帯単位での判定状況
  • 各種給付金や減免制度の対象可否
  • 非課税証明書の発行

とくに給付金や保険料減免は「世帯判定」が基準になることが多いため、個人の税額だけで判断せず、世帯全体で確認することが重要です。

制度を理解することも大切ですが、最優先は「自分の現在地」を知ることです。通知書を一度確認するだけで、使える制度が見えてきます。

7. 「住民税非課税世帯」の割合は、シニア層で高くなる傾向

厚生労働省「令和6年 国民生活基礎調査」をもとに、年代別に住民税が課税されている世帯の割合を確認します。

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合8/9

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

出所:厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(第131表)をもとにLIMO編集部作成

  • 29歳以下:63.0%
  • 30〜39歳:87.5%
  • 40~49歳:88.2%
  • 50~59歳:87.3%
  • 60~69歳:79.8%
  • 70~79歳:61.3%
  • 80歳以上:52.4%
  • 65歳以上(再掲):61.1%
  • 75歳以上(再掲):54.4%

※ 全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含む
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む

30代から50代ではおおむね9割近くが課税世帯であるのに対し、65歳以上では約6割、75歳以上になると約5割強へと低下しています。年齢の上昇に伴い、課税世帯の割合がはっきりと縮小していることが読み取れます。

高齢期に入ると、多くの人が年金中心の生活へ移行し、現役時代と比べて収入水準が下がる傾向にあります。それに加え、税制上の仕組みも影響しています。

たとえば、65歳以上には公的年金等控除が手厚く設けられており、さらに遺族年金は非課税所得です。こうした制度的な要素が重なり、シニア層は住民税が課されない水準に該当しやすい構造になっています。

8. 年金だけで生活できている高齢者世帯は?データでは43.4%

同じく厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金を受給している世帯のうち、総収入のすべてを年金で賄っている世帯は43.4%です。

裏を返せば、半数を超える世帯が、年金以外の収入源をあわせて生活を成り立たせていることになります。

年金だけで家計を完結できる世帯は、すでに多数派とは言えない状況です。

総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成9/9

総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成

出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%

年金受給額には個人差があるものの、多くの高齢者世帯が直面しているのは、収入と支出のバランス調整という課題です。

日常的な生活費が年金収入を上回るケースもあり、最低限の支出を年金だけでは補えない場面も珍しくありません。

その場合、不足分を補填するための追加的な収入手段をどう確保するかが重要になります。

私的年金、預貯金、資産運用の活用に加え、就労継続や家族からの支援、公的扶助制度の利用など、複数の選択肢を視野に入れた対応が求められます。老後の安定を守るには、早い段階から現実的な備えを検討しておくことが欠かせません。

9. まとめにかえて

近年の経済対策は内容や対象がその都度変わり、支援の受け方も一様ではなくなっています。だからこそ重要なのは、「今どの給付があるか」だけでなく、自分の所得区分や世帯構成が制度上どの位置にあるのかを把握しておくことです。

とくに住民税の課税・非課税の区分は、医療費の自己負担割合や各種保険料、さらには自治体独自の支援策にも影響します。わずかな所得差で扱いが変わるケースもあるため、境界線を曖昧にしたままにしておくのは得策ではありません。

公的年金が家計の中心となる高齢期においては、収入額そのものだけでなく「制度上どう評価されるか」が生活設計を左右します。通知書の確認や自治体への問い合わせなど、できることから具体的に動く姿勢が、将来の安心につながります。

支援は待つものではなく、理解して活用するもの。その前提として、自分の税区分と適用される制度を正確に押さえておくことが欠かせません。

参考資料

マネー編集部社会保障班