3.2 家計赤字の正体は「無駄づかい」ではない。根性論ではどうにもならない現実

70歳代世帯の家計収支を見ると、毎月2万円台の赤字が生じていますが、その原因を単純に「無駄づかい」や「家計の緩み」と捉えるのは適切ではないでしょう。

総務省の家計調査が示すのは、高齢期の支出は「削りようのない固定費」の比重が大きいという現実です。実際に、65歳以上の無職夫婦世帯の支出内訳を見ていきましょう。

65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)5/5

65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)

出所:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」

毎月の実収入:25万2818円

■うち社会保障給付(主に年金)22万5182円

毎月の支出:28万6877円

■うち消費支出:25万6521円

  • 食料:7万6352円
  • 住居:1万6432円
  • 光熱・水道:2万1919円
  • 家具・家事用品:1万2265円
  • 被服及び履物:5590円
  • 保健医療:1万8383円
  • 交通・通信:2万7768円
  • 教育:0円
  • 教養娯楽:2万5377円
  • その他の消費支出:5万2433円
  • (うち諸雑費:2万2125円)
  • (うち交際費:2万3888円)
  • (うち仕送り金:1040円)

■うち非消費支出:3万356円

  • 直接税:1万1162円
  • 社会保険料:1万9171円

食費や光熱費といった「削れない基礎支出」に加え、月2万円弱にのぼる保健医療費が家計を重くしています。これらは現役世代以上に固定費化しやすく、節約の努力が及びにくいのが現実です。

さらに、年金から天引きされる税金や社会保険料などの「非消費支出」も、高齢期ほど重い負担となって家計をじわじわと圧迫します。

昨今の物価高騰は、まさにこうした「生活に直結する項目」を直撃しており、家計の赤字は決して浪費ではなく「避けられない支出の積み重なり」によるものです。

だからこそ、根性論の節約だけでなく、「一定の貯蓄の取り崩し」を織り込んだ冷静な生活設計が不可欠となります。