2月に入り、年度末で定年退職を迎える人もいるでしょう。退職金を住宅ローンの返済に充てたり老後資金として活用したりするほか、旅行を計画している人もいるのではないでしょうか。

しかし、退職後の税金や社会保険料負担についても考えておかなければなりません。退職翌年は、税金や社会保険料が高くなる傾向にあります。退職時の年収が600万円の場合、税金・社会保険料はいくらかかるのでしょうか。

この記事では、退職後の税金・社会保険料負担について解説します。

1. 退職翌年の負担が重い理由

「退職した翌年の税金や社会保険料の負担が厳しい」といわれるのは、多くの費用が前年の所得にもとづき算出されるためです。

定年退職翌年の税金や社会保険料は、退職前の年収を基準に計算されます。一方、退職翌年の生活は年金や再雇用での給与収入など、定年退職前よりも少ない金額でやりくりしなければなりません。そのため、老後生活の収入で、現役並みの税金・社会保険料を支払う必要があるのです。

加えて、社会保険料については「労使折半」がなくなります。健康保険料や介護保険料は、定年退職までは会社が半分を負担してくれます。しかし、退職後は会社負担がなくなるため、全額自分で納めなければなりません。

単純に2倍近い金額が収入から差し引かれるため、手取り収入が減り、家計にも影響を及ぼすのです。

次章では、定年退職後の税金負担について解説します。

2. 【税金】前年の所得から算定される「住民税」に注意

退職翌年に納める税金として、所得税と住民税の2つを見ていきましょう。年収600万円の場合の税額は、それぞれ以下のとおりです。

  • 所得税
    ・所得金額:600万円-164万円-90万円-68万円=278万円(※1)
    ・所得税額:278万円×10%-9万7500円=18万500円
  • 住民税
    ・所得金額:600万円-164万円-90万円-43万円=303万円
    ・住民税額
     所得割:303万円×10%=30万3000円
     均等割:5000円(森林環境税含む)
  • 合計:30万8000円

※1:給与所得控除164万円、社会保険料控除90万円(年収の15%)、基礎控除68万円で計算
※2:基礎控除43万円で計算

とくに気をつけたいのは住民税です。所得税については、2025年度の税制改正により基礎控除が拡大しており、課税所得が以前よりも低くなりました。そのため、税負担も少なくなっています。

一方、住民税の基礎控除はこれまでどおり43万円で変わらないため、所得税計算時の課税所得よりも大きい金額が算定対象になります。よって、所得税よりも金額が高くなる傾向にあるのです。

加えて、所得税については税率を掛けた後に一定額の控除を受けられます。しかし、住民税については所得に応じて負担額が決まる所得割に加えて、納税者が均一に負担する均等割が課されます。そのため、税額の差が開きやすいのです。

年収600万円の人が定年退職した場合、所得税は月額約1万5000円、住民税は月額約2万5000円で、合計約4万円が毎月手元から差し引かれます。収入が下がるなかで4万円が毎月差し引かれるのは、決して軽い負担とはいえないでしょう。

次章では、社会保険料の負担額を解説します。

3. 【社会保険料】「会社との折半」がない点に注意

定年退職後に納める社会保険料については、前述のとおり会社との折半がない点に注意が必要です。

退職後に納付する社会保険料としては「国民健康保険料」「介護保険料」があります。東京都新宿区に住む年収600万円の人が定年退職した場合、それぞれの金額は、以下のとおりです。

国民健康保険料・介護保険料の金額例2/2

国民健康保険料・介護保険料の金額例

出所:新宿区「保険料の計算方法について」新宿区「介護保険料の決まり方」をもとに筆者作成

  • 国民健康保険料
    ・所得金額:600万円-164万円-43万円=393万円(※1)
    ・医療分
     均等割:4万7300円
     所得割:393万円×7.71%=30万3003円
    ・支援金分
     均等割:1万6800円
     所得割:393万円×2.69%=10万5717円
    ・合計:47万2820円
  • 介護保険料
    ・所得金額:600万円-164万円=436万円
    ・介護保険料の段階:第9段階
    ・保険料:12万2760円

※1:給与所得控除164万円、基礎控除43万円で計算

国民健康保険料は年間約47万円、介護保険料は年間約12万円で、合計約60万円が手元から差し引かれます。税金と比べても負担額は大きく、月あたり約5万円の支出が必要です。退職までは半額の支出で済んでいた社会保険料ですが、全額自分で納めるとなれば、家計への影響は避けられないでしょう。

なお、国民健康保険料や介護保険料は、自治体によって算定基準が異なります。自治体が定める保険料率によっては、上記の金額より低いケースや高いケースもあります。退職前に、自治体の窓口でどれくらいの保険料負担となるのか試算してもらえば、老後のライフプランを立てるのに有効です。

次章では、年収600万円の会社員が退職後に支払う税金・社会保険料の最終的な金額を確かめます。

4. 年収600万円の会社員はどれくらいの備えが必要?

年収600万円の会社員が定年退職した場合、翌年の収入からは月額約9万円が差し引かれます。

  • 税金:約4万円
  • 社会保険料:約5万円
  • 合計:約9万円

年金や再雇用後の給与の金額によっては、手元に残るのが数万円程度になる可能性もあるでしょう。

加えて、2026年度からは子ども・子育て支援金として、社会保険料に月額数百円の負担が上乗せされます。社会保険料は税金以上に負担の大きい費用であるため、退職までに十分な資金を用意しておかなければなりません。

5. まとめ

定年退職の翌年は、年収600万円の場合で月額約9万円、年間約108万円を税金・社会保険料として納めます。退職後の収入で月9万円が確実に差し引かれるのは、老後生活において大きな痛手です。

退職翌年の税金・社会保険料を適切に納めるためにも、100万円ほどは退職金やこれまでの貯蓄から確保しておく必要があるでしょう。

参考資料

石上 ユウキ