確定申告の期限である16日まで残り1週間ほどとなりました。

家計の状況や保有資産の整理を行うなかで、NISA(少額投資非課税制度)の運用状況を再確認している方も多い時期かと思われます。

NISAは、株式や投資信託などの運用から得られる利益が非課税となる制度です。

2024年の制度改正によって非課税保有期間が無期限化され、現在は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を合わせて年間最大360万円までの投資が可能となっています。

資産形成の手段としてNISAの普及が進む一方で、保有者が亡くなった際の口座の扱いなど、将来的な相続手続きについて把握しているケースは必ずしも多くありません。

そこで今回は「NISA口座の相続に関するルール」や手続き上の注意点を整理していきます。

1. NISA口座数は増加傾向に。地域によっては「シニア世代」が約3割を占めるケースも

増え続けるNISA利用者2/7

増え続けるNISA利用者

出所:金融庁「 NISAの利用状況の推移(グラフ)」

NISAの利用者数は年々増加を続けています。

金融庁が公表している「NISAの利用状況の推移(グラフ)」によれば、2024年以降に口座数が大きく伸び、2025年6月末時点で約2696万口座に到達しました。

これに伴い総買付額も拡大を続け、累計は63兆円を突破しており、個人による資産形成が着実に広がっていることがうかがえます。

1.1 【都道府県ごとの口座数分布】「都市部から地方まで」全国へ広がるNISA

「都市部から地方まで」全国で広がるNISA3/7

「都市部から地方まで」全国で広がるNISA

出所:金融庁「都道府県別のNISA口座開設状況(グラフ)」

この拡大は特定の地域に限らず、全国的に進んでいます。

口座数は東京都の約393万口座が最も多く、神奈川や大阪、愛知などの大都市圏で利用が目立ちます。

一方で、北海道から沖縄に至るまで各地で数十万単位の口座が開設されており、NISAは居住地域を問わず身近な制度として定着しつつあります。

1.2 【都道府県ごとの口座数年齢層別構成比】シニア層でも広がるNISA

とくに注目したいのは、利用者の年代が非常に幅広いことです。

30歳代から50歳代の働き盛りの世代がそれぞれ全体の約2割を占め、現役世代の資産づくりの中心となっています。

それに加え、シニア世代の利用者も「想像以上に多い」点が、現在のNISAの大きな特徴といえるでしょう。

「現役世代からシニア層まで」全世代が活用するNISA4/7

「現役世代からシニア層まで」全世代が活用するNISA

出所:金融庁「都道府県別のNISA口座開設状況(グラフ)」

金融庁が公表している「都道府県別のNISA口座の年齢構成比」を見ると、60歳代が全体の約15〜18%、さらに70歳代以上も約10〜20%弱を占める地域が多く、決して「若年層向けの制度」に限られていないことが分かります。

資産を守ることや次の世代への承継を現実的に考え始めるシニア層にとっても、NISAは有力な手段として広く浸透しています。

このように、若年層から高齢者まで幅広い世代がライフステージに応じて利用し、いまや成人の間で広く普及した国民的な仕組みとなったからこそ、万一の際に「大切な資産をどのように円滑に家族へ引き継ぐか」という相続への備えは、誰にとっても避けて通れない重要な課題となっています。

2. 【NISAの相続ルール】亡くなった瞬間に「非課税→課税」に変わるのか

NISAを利用していた方が亡くなった場合でも、その口座を家族が引き継いで「NISAのまま」使い続けることはできません。

ただし、口座内にある株式や投資信託などの資産は、重要な相続財産として家族へ承継することが可能です。

相続が発生すると、故人のNISA口座に保有されていた資産は、いったん同じ金融機関の「課税口座(特定口座または一般口座)」へ移されます。

この時点で非課税の扱いは終了し、それ以降に生じる運用益には課税されることになります。

NISAの相続ルールとは?5/7

NISAの相続ルールとは?

LIMO編集部作成

手続きの一般的な流れとしては、まず故人名義のまま課税口座へ移された後、相続が確定してから相続人(受け取る家族)名義の課税口座へと移管されます。

円滑に進めるためには、「原則として受け取る側も故人と同じ金融機関に口座を保有している必要がある」という点に注意が必要です。

2.1 相続時の取得費は「相続が開始された日の終値」を基準に算定

相続人が資産を受け継ぐ際の「取得費(購入時の価格)」は、故人の購入額ではなく「相続開始日(亡くなった日)の終値」が基準となります。

将来、相続人がその資産を売却する場合の税額は、この時点で設定された価格をもとに計算されます。

3. NISAで増えた資産に「相続税」はかかるの?

NISA口座にある資産も、預貯金や不動産と同じく相続税の対象となります。

ただし、必ずしも税金が発生するとは限りません。

遺産総額が法律で定められた「基礎控除額」以内であれば、相続税は課されず、申告も不要となります。

課税遺産総額の計算6/7

課税遺産総額の計算

出所:国税庁「財産を相続したとき」

遺産に係る基礎控除額の計算式

3000万円+(600万円×法定相続人の数)

3.1 法定相続人の「範囲と順位」をチェック

「法定相続人の数」を把握するためには、民法で定められた相続人の範囲と順位を確認しておきましょう。

相続人の順位7/7

相続人の順位

出所:国税庁「相続税のあらまし」

  • 配偶者:常に相続人となる
  • 子(第1順位):配偶者とともに相続人となる。子が死亡している場合は、孫(直系卑属)が相続人となる。
  • 父母(第2順位):子や孫がいない場合に、配偶者とともに相続人となる。父母が死亡している場合は、祖父母(直系尊属)が相続人となる。
  • 兄弟姉妹(第3順位):子や孫、父母や祖父母がいない場合に、配偶者とともに相続人となる。兄弟姉妹が死亡している場合は、おい、めい(兄弟姉妹の子)が相続人となる。

相続税の申告と納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日(一般的には被相続人が亡くなった日の翌日)から10か月以内と定められています。

相続手続きを円滑に進めるためにも、ご両親などがどの金融機関でNISA口座を開設しているかといった、普段はあまり話題にしない資産情報についても、あらかじめ共有しておくことが、いざという時の安心につながります。

4. まとめにかえて

利用する人が年々増加傾向にあるNISAですが、年を重ねていく中で相続が発生するときなどの「出口」についても考えていく必要がありますね。

自分が将来使っていく資金準備のために利用する人が多いかと思いますが、万一の事が起こってしまった際に家族が困ることのないよう、取引のある金融機関などは伝えておくと安心です。

「増やして使う」ことだけでなく、「どう遺すか」についても考えながら、自分のライフステージにあった資産の持ち方考えていきましょう。

参考資料