1. 75歳以上の夫婦世帯、ひと月の生活費はいくら?平均支出から後期高齢期の家計を分析
まず、総務省が公表した「家計調査 家計収支編(2025年)」のデータから、75歳以上の後期高齢者である夫婦(無職・二人以上世帯)の平均的な家計状況を見ていきましょう。この調査対象世帯の世帯主の平均年齢は80.8歳、持ち家率は96.0%です。
1.1 後期高齢(75歳以上)無職世帯の家計簿:収入と支出の平均データ
平均実収入は月額25万2798円
- うち社会保障給付(主に公的年金給付): 21万1289円
平均実支出は月額28万23円
- 消費支出: 24万8460円
- 食料: 8万33円
- 住居: 1万6257円
- 光熱・水道: 2万4312円
- 家具・家事用品:1万547円
- 被服及び履物: 5142円
- 保健医療: 1万7213円
- 交通・通信: 2万6294円
- 教育:142円
- 教養娯楽: 2万2322円
- その他の消費支出: 4万6198円
- 非消費支出: 3万1563円
- うち直接税: 1万1663円
- うち勤労所得税:519円
- うち個人住民税:3206円
- うち他の税:7938円
- うち社会保険料:1万9894円
- うち公的年金保険料:1966円
- うち健康保険料: 1万494円
- うち介護保険料: 7352円
- うち他の社会保険料:83円
- うち直接税: 1万1663円
月々の家計収支と主な指標
- 実収入:25万2798円
- 実支出:28万23円
- 家計収支:▲2万7225円(赤字)
- 黒字率:▲12.3%
- 平均消費性向(※1)112.3%
- エンゲル係数(※2):32.2%
この調査結果によると、75歳以上の後期高齢者夫婦の家計は、平均で毎月約2万7000円の赤字であることがわかります。
年金などの収入だけでは生活費のすべてをまかなうことができず、貯蓄を切り崩して生活している実態がうかがえます。
この不足額をどのように埋めていくかは、老後の暮らしの安心度に大きく関わる重要な課題です。赤字額は小さく見えるかもしれませんが、長期にわたって続けば家計に与える影響は決して小さくありません。
なお、家計状況を読み解く上で注目したい指標として、以下の2つが挙げられます。
- ※1 平均消費性向(可処分所得に対する消費支出の割合)
- ※2 エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合)
これらの指標は、限られた収入のなかで、生活費がどの程度を占めているかを把握する手がかりとなります。
1.2 後期高齢世帯の支出に見られる2つの特徴
後期高齢期の家計支出の構造は、現役世代とは大きく異なっています。特に顕著なのが「住居費の低さ」と「将来の費用がデータに表れにくい」という点です。
特徴1:持ち家率が高く住居費は低い傾向
後期高齢者である夫婦世帯の持ち家率は96.0%と非常に高く、住宅ローンの返済が残っている世帯は全体の1.3%にすぎません。
多くの世帯が住宅に関する大きな支払いを終えているため、家賃やローン返済といった固定的な住居費がほとんどかからない状況です。これは、現役世代や比較的若い高齢者層との大きな違いといえるでしょう。
住居費が低く抑えられていることは、年金中心の収入でも生活を成り立たせている要因の一つです。
しかし、これは裏を返せば、他の支出が増加した際に住居費を切り詰めて調整する余地がほとんどないことも意味します。
特徴2:データには将来の介護費用が反映されていない
もう一つ見過ごせないのが、家計調査の支出項目は、あくまでも日常的な生活を前提としているという点です。
介護サービスの自己負担額や、突発的に発生する医療・介護関連の費用は、この平均的な家計支出には基本的に含まれていません。
つまり、ここで示されている家計の収支は、介護が本格的に必要になる前の状態を想定した数値といえます。
将来、介護が必要になった場合、支出は一時的または継続的に増加することが考えられます。その結果、家計の赤字幅が広がり、貯蓄を取り崩すスピードが速まる可能性も十分にあります。
1.3 「ゆとりある老後」とのギャップは月13万円
老後の生活レベルを考える上で参考になる調査があります。
生命保険文化センターが公表した「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」では、夫婦二人世帯が老後を送るための生活費の目安を以下のように示しています。
- 最低日常生活費:月平均23万9000円
- ゆとりある老後生活費:月平均39万1000円
一方で、家計調査で明らかになった後期高齢者夫婦の実収入は、前述の通り月額25万円程度です。
この金額は、最低限の生活を送るための費用はかろうじて上回っていますが、「ゆとりある生活」を送るための費用と比較すると、毎月およそ13万円もの差額が生じています。
この差をどう考え、どの生活水準を目標とするかによって、老後の満足度や安心感は大きく変わってくるでしょう。
その判断を下す上で重要になるのが、年金収入と貯蓄額のバランスです。
