長らく物価の上昇が続いているため、日々の生活費の負担に頭を抱えているご家庭も多いのではないでしょうか。
近年の物価上昇を受け、政府は住民税非課税世帯などを対象とした現金給付を複数回実施してきました。
しかし、現在の経済対策では「子ども1人あたり2万円」の給付が中心となり、次世代育成支援へと方針がシフトしています。
これまでのような一律給付ではなくなったため、支援の対象から外れてしまったのではないかと不安に思う方もいるかもしれません。
ただし、国や自治体による支援は現金給付に限りません。
実は、あまり知られていないものの、生活を支えるための優遇措置が数多く用意されています。
この記事では「住民税非課税世帯」が見逃せない5つの支援策を厳選してご紹介します。
あわせて、非課税の判定基準となる「年収のボーダーライン」について、給与所得者と年金受給者のケースに分けてわかりやすく解説しますので、参考にご覧ください。
1. 住民税非課税世帯が受けられる5つの優遇措置
コロナ禍や物価高騰への対策として、これまで住民税非課税世帯を主な対象とした現金給付などの支援が行われてきました。
住民税非課税世帯とは、世帯全員の所得が一定基準を下回る世帯のことです。
このような世帯の暮らしを支えるため、現金給付以外にもさまざまな優遇措置が設けられています。
ここでは、代表的な5つの優遇措置をピックアップして見ていきましょう。
1.1 ◆国民健康保険料の減額
- 所得に応じて保険料の「均等割額」が7割・5割・2割のいずれかで減額されます。
1.2 ◆介護保険料の減額
- 65歳以上の第1号被保険者が対象です。減額幅は各自治体の基準によって異なります。
1.3 ◆国民年金保険料の免除・納付猶予
- 経済状況に応じて、保険料の全額免除、一部免除、または納付猶予の制度を利用できます。
1.4 ◆保育料の無償化
- 0歳から2歳までの子どもの保育料が無料になります。
- これにより、3歳から5歳までの無償化とあわせて、未就学児の保育料負担がなくなります。
1.5 ◆高等教育の修学支援新制度
- 大学、短期大学、専門学校などの授業料や入学金が免除または減額されます。
- あわせて、返済不要の給付型奨学金も利用でき、進学を経済的に支援します。
これら以外にも、各自治体が独自に実施している支援策も多数存在します。
では、具体的にどのような世帯が住民税非課税に該当するのか、次の章で詳しく確認していきましょう。
2. そもそも「住民税非課税世帯」とは?仕組みを解説
まず住民税の基本的な仕組みを理解した上で、「住民税非課税世帯」の定義を見ていきましょう。
2.1 住民税の基本構造
住民税は、住んでいる都道府県および市区町村に納める地方税の一種です。地域の公共サービスやインフラ整備を支えるための重要な財源として活用されます。
個人の住民税は、主に「均等割」と「所得割」という2つの要素で構成されています。
- 均等割:所得金額にかかわらず、一定の所得がある方に一律で課される部分
- 所得割:前年の所得金額に応じて課税額が変動する部分
この均等割と所得割の両方が非課税になる状態を「住民税非課税」と呼びます。そして、世帯に属する全員がこの条件を満たす場合、その世帯が「住民税非課税世帯」となります。
なお、所得割のみが非課税となるケースもありますが、各種給付金の対象になるかどうかは自治体の判断によるため、お住まいの地域の基準を確認することが大切です。
3. 住民税が非課税になる3つの条件
住民税が非課税となるための具体的な要件を詳しく見ていきましょう。
以下の3つのうち、いずれか1つに該当する場合に住民税が非課税と判定されます。
- 生活保護法による生活扶助を受けている
- 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下である
- 前年の合計所得金額が、お住まいの市区町村が定める基準額を下回る
上記の1と2の要件は全国共通ですが、3の所得基準は自治体ごとに異なるため、注意が必要です。
4. 【神戸市の例】住民税非課税の所得基準は?計算方法を解説
住民税非課税世帯に該当する所得基準について、兵庫県神戸市のケースを例に見てみましょう。
35万円 × (本人 + 同一生計配偶者(※) + 扶養親族の数) + 31万円
ただし、上記の計算式は同一生計配偶者または扶養親族がいる場合に適用されます。
単身者の場合は、合計所得金額45万円以下が基準です。
※同一生計配偶者とは、納税者と生計を共にする配偶者のうち、前年の合計所得金額が58万円以下の人を指します。
5. 年収いくらまで?給与と年金それぞれの非課税ライン【神戸市の例】
住民税が非課税となる所得基準は、扶養家族の有無だけでなく、収入の種類によっても変わってきます。
所得は収入から必要経費や各種控除を差し引いて計算されるため、神戸市の基準を具体的な「年収」に換算して確認してみましょう。
5.1 単身世帯の場合
合計所得金額が45万円以下の方が対象です。
- 給与収入のみ:年収110万円以下
- 65歳以上で年金収入のみ:年収155万円以下
- 65歳未満で年金収入のみ:年収105万円以下
5.2 同一生計配偶者または扶養親族が1人いる場合
合計所得金額が101万円以下の方が対象です。
- 給与収入のみ:年収166万円以下
- 65歳以上で年金収入のみ:年収211万円以下
- 65歳未満で年金収入のみ:年収171万3334円以下
このように、住民税が非課税となる基準は、収入源や家族構成によって大きく変動します。
例えば単身世帯では、給与収入なら年収110万円、65歳以上の年金収入なら年収155万円が非課税の目安です。
一方で、配偶者や扶養親族がいると基準額は引き上げられます。
特に65歳以上の夫婦世帯で収入が年金のみの場合、年収211万円まで非課税枠が拡大し、単身世帯よりも条件が緩和されることがわかります。
世帯の状況によって税負担は大きく変わるため、ご自身のケースに合わせて基準を把握しておくことが重要です。
6. 高齢者ほど「住民税非課税世帯」に該当しやすい理由
厚生労働省が公表した「令和6年国民生活基礎調査」のデータを用いて、住民税が「課税される世帯」の割合を年齢層別に見てみましょう。
- 29歳以下:63.0%
- 30~39歳:87.5%
- 40~49歳:88.2%
- 50~59歳:87.3%
- 60~69歳:79.8%
- 70~79歳:61.3%
- 80歳以上:52.4%
- 65歳以上(再掲):61.1%
- 75歳以上(再掲):54.4%
※ 全世帯数には、非課税世帯および課税の有無が不明な世帯が含まれます。
※ 総数には、世帯主の年齢が不明な世帯が含まれます。
※ 住民税課税世帯には、住民税額が不明な世帯が含まれます。
住民税が課税される世帯の割合は、30歳代から50歳代で約9割に達しますが、65歳以上では約6割、75歳以上では約5割強まで低下し、年齢とともに減少する傾向が見られます。
これは、年金生活に入ると現役時代に比べて収入が減ることに加え、税制上の優遇措置が大きく影響しています。
特に65歳以上の方は手厚い「公的年金等控除」が適用されるほか、遺族年金は非課税所得として扱われるため、高齢者層は住民税非課税世帯に該当しやすくなるのです。
7. 年金だけで暮らす高齢者世帯は半数以下という現実
厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金を受給している高齢者世帯のうち、その収入のすべてを年金のみで賄っている世帯は43.4%という結果でした。
このデータは、半数以上の世帯が公的年金以外に何らかの収入源を必要としている実態を示しています。
老後の生活を年金だけで成り立たせている世帯は、もはや少数派となりつつあると言えるでしょう。
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が20%未満の世帯:4.0%
年金の受給額には個人差がありますが、多くの高齢者世帯が「収入と支出のバランス」という共通の課題に直面しているようです。
日々の生活費が年金収入を上回るだけでなく、最低限の暮らしさえも年金だけでは賄えないケースも少なくありません。
もし年金だけで生活が成り立たない場合、不足分を補うための追加収入を確保することが不可欠です。
私的年金や預貯金などの備えが十分でない場合は、働き続けて収入を得たり、家族からの援助を受けたり、公的な支援制度を活用したりと、早めに具体的な対策を検討することが、安心して老後を過ごすための鍵となるでしょう。
8. 支援制度を正しく理解し、賢く活用を
ここまで、「住民税非課税世帯」が見逃せない5つの支援策をご紹介しました。
あわせて、非課税の判定基準となる「年収のボーダーライン」について、給与所得者と年金受給者のケースに分けて解説しました。
政府の新たな経済対策は、これまでのような「住民税非課税世帯への一律給付」から、次世代育成を目的とした「子ども1人あたり2万円」の給付へと重点を移しました。
物価高が続く中で、支援の対象が限定的になったことに不安を感じる高齢者の方も少なくないでしょう。
公的年金だけで生活を維持することが難しい傾向にある現代において、一時的な給付金だけに頼る生活には限界があります。
だからこそ、ご自身の所得が医療費の自己負担や税金の計算にどう影響するのか、その「境界線」を正しく理解し、利用できる制度を賢く活用する視点がますます重要になっています。
※当記事は再編集記事です。






