新年度の慌ただしさや大型連休も過ぎ、少し落ち着きを取り戻した5月中旬。この時期に、ご自身の家計や資産状況を改めて見直している方も多いのではないでしょうか。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した最新の調査結果によると、二人以上世帯の金融資産保有額は平均1940万円、中央値720万円に達し、前年から大幅な増加を記録しました。

特筆すべきは、資産が増えた理由の構成です。「収入の増加」や「貯蓄割合の引き上げ」といった自助努力を抑え、以下の運用益に関する項目が上位を占めています。

  • 株式・債券評価額の増加:38.7%
  • 配当や金利収入:35.0%

この結果から、物価高が続くなかでも着実に資産を増やしている世帯は、労働収入だけでなく「資産運用」をうまく取り入れている実態が見えてきます。

この記事では、「そろそろ新NISAを始めたい」と考えている人や、「口座は作ったものの、まだうまく使いこなせていない」という人に向けて、新NISAの仕組みと活用のメリットを整理して解説。

つみたて投資枠を活用した積立投資のシミュレーション結果や、みんなのNISA活用状況、さらには今年の新社会人の驚きの「投資意識」についても見ていきます。

※投資には元本割れのリスクがあり、シミュレーション結果のように必ずしも資産が増えるわけではない点にご注意ください。

1. 【新NISAの基本をおさらい】「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の違いは何?

2024年にスタートした新NISAは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用できる仕組みへと見直されました。

NISA「つみたて投資枠と成長投資枠」1/4

NISA「つみたて投資枠と成長投資枠」

出所:金融庁「NISAを知る」

つみたて投資枠は、長期・積立・分散を前提とした資産形成を目的とする枠で、年間120万円までの新規投資から得られる利益が非課税となります。

対象商品は、金融庁の基準を満たした投資信託やETFなど、長期保有を想定したものに限定されています。

一方、成長投資枠は投資対象の選択肢が広く、個別株式や投資信託などに年間240万円まで投資できます。

この2つを組み合わせることで、1年間に非課税で投資できる上限は360万円となります。

非課税で保有できる期間に制限はなく、制度も恒久化されたため、長期的な資産形成に取り組みやすい環境が整いました。

また、生涯で利用できる非課税投資枠は1800万円とされ、そのうち成長投資枠は1200万円までに設定されています。

加えて、売却によって生じた未使用枠は、翌年以降に再利用できる点も特徴です。

2. 新NISA《サボらずひたすら15年積立→その後15年ほったらかし》投資元本はどこまで育つ?

「つみたて投資枠」は、年間120万円までの投資枠(元本)に対する運用益が非課税となる制度です。

本章では、この上限を最大限活用し、毎月10万円を15年間積み立てた場合について、金融庁のつみたてシミュレーターをもとに、試算結果を見ていきます。

2.1 【試算結果】「毎月10万円・15年間・年利3%」で積立投資した場合の資産額は?

毎月10万円を15年間積み立て、想定利回りを3%として「つみたて投資枠」を活用した場合、投資元本は1800万円となります。

この前提で運用を続けると、15年後の資産額は2262万円となり、運用による増加分は462万円になるとの試算結果が示されています。

シミュレーション結果2/4

シミュレーション結果

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」

では、想定利回りを3%としたまま、その後さらに15年間運用を続けた場合に、資産がどのように推移するのかを見ていきます。

この試算についても、金融庁が示している新NISAの活用例を参考に確認していきましょう。

年間投資枠を有効活用パターン3/4

年間投資枠を有効活用パターン

出所:金融庁「NISAの活用事例」

試算結果では、最終的な資産額はおよそ3525万円に達する可能性が示されています。

投資元本である1800万円と比較すると、ほぼ2倍に相当する水準です。

もっとも、これは一定の条件を前提としたシミュレーションによる数値であり、参考として捉える必要があります。

それでも、積立投資と長期保有を30年間続けることで、3000万円を超える資産形成が見込めるケースがあることを示す一例として、考え方のヒントにはなるでしょう。

なお、投資には価格変動によるリスクが伴い、状況によっては元本割れとなる可能性もあります。

シミュレーションどおりの結果が必ず得られるわけではない点には注意が必要です。

3. 【NISAの活用実態】つみたて系・成長投資系「みんな、どのくらい活用している?」

J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025」から、二人以上の世帯におけるNISAの利用状況を確認してみましょう。

3.1 「成長投資枠系」の保有額は「つみたて系」の約1.6倍という結果に

新旧NISAを合算した保有額を比べると、一般・成長投資枠の合計は、つみたて投資枠の合計のおよそ1.6倍となっています。

年間の投資上限が大きい成長投資枠(旧一般NISAを含む)は、つみたて投資枠よりも多額の資金を投じやすい仕組みです。

このことから、毎月の積立による安定的な資産形成に加え、余裕資金を活用して資産規模を押し上げる役割も果たしている様子がうかがえます。

  • つみたて系 合計:235万円
    • 新NISA つみたて投資枠:112万円
    • 旧つみたてNISA:123万円
  • 一般・成長系 合計:377万円
    • 新NISA 成長投資枠:180万円
    • 旧一般NISA:197万円

少額を積み立てていく「つみたて投資枠」に比べ、成長投資枠は手元にある余裕資金を活用することで、資産残高を大きく押し上げる役割を果たしていることが読み取れます。

3.2 新NISA「つみたて投資枠」の世代別残高をチェック

続いて、新制度開始後の「つみたて投資枠」の残高を、年代別に確認していきます。

  • 20歳代:69万円
  • 30歳代:98万円
  • 40歳代:107万円
  • 50歳代:119万円
  • 60歳代:123万円
  • 70歳代:135万円

20歳代から70歳代までを見ると、年齢が上がるにつれて残高も増えていく傾向が見られます。

20歳代では約69万円からスタートし、30歳代から50歳代の現役世代では、おおむね100万円前後から120万円弱へと、年代とともに緩やかに積み上がっています。

昇給や支出の変化といったライフステージの移り変わりに対応しながら、多くの世帯が積立投資を継続している様子がうかがえる結果です。

さらに、60歳代以降では残高が一段と増加し、70歳代では135万円と全世代の中で最も高い水準となっています。

資金に余裕のあるリタイア世代では、現役世代より高めの積立額を維持している、あるいは制度開始当初から上限に近い形で積極的に活用している世帯も存在していると考えられるでしょう。

4. 【新社会人のお金事情】初任給の使い道は「貯蓄」より「投資」が4倍以上に!

全世代でNISAの活用が進む中、これから資産形成を始める若年層はどのような意識を持っているのでしょうか。

インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が2026年4月に新社会人となる200名を対象に実施した「初任給の使い道に関する意識調査」を見てみましょう。

同調査によると、初任給の使い道について「できるだけ投資に回したい」と答えた人が31.5%だったのに対し、「できるだけ貯蓄に回したい」はわずか7.5%にとどまり、投資を重視する人が貯蓄派を4倍以上も上回りました。

さらに、回答者の半数以上(51.5%)がすでに投資を開始しており、投資を検討している層を合わせると、全体の約85%が投資に意欲的という結果になっています。具体的な投資手法としては「投資信託・ETF」がトップで、7割以上が「新NISA」の活用を検討しています。

そして注目すべきは、初めての給料を手にする新社会人でありながら、投資を行う理由の第1位が「老後資金の不安(53.2%)」である点です。

物価高や円安を背景に約9割の人がお金に対する不安を抱いており、「まずは貯蓄」というかつての常識から、「若いうちから新NISAで着実な資産形成を」という意識へと大きくシフトしていることがうかがえます。

5. まとめにかえて

最新の調査結果から、世代間におけるNISA活用状況の差や、新社会人の非常に高い投資意欲が浮き彫りとなりました。

60歳代以上のリタイア世帯おいて投資残高が多い背景には、子育てや住宅ローンが一段落し、退職金や相続といったまとまった資金を運用に回せるといった世代特有の事情もあります。

対して、家計運営の負担がピークを迎える現役世代にとって、毎月の積立資金を捻出することが容易でないのは、統計データに照らしても「当然のこと」と言えます。

しかし、20歳代から50歳代にかけて残高が着実に積み上がっているデータや、老後を見据えて初任給から投資に回そうとする新社会人の姿が示す通り、厳しい環境下でも多くの世代が将来への備えを具体化させています。

今回シミュレーションした「15年間の継続積立+15年間の運用継続」の結果からもわかるように、つみたて投資における最大の武器は、運用額の多寡以上に「投資期間(時間)」です。

たとえ現時点では少額であっても、早いうちから「投資の種」をまき、時間をかけて育てることで、複利の力を最大限に活用することにも繋がっていきます。

まずは「無理のない金額」から、将来に向けた時間を味方につける一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

参考資料