5. 年収だけでは測れない貯蓄額の背景と「新富裕層」の台頭
年収の高さだけでは説明がつかない高額貯蓄世帯の存在は、「富裕層」と呼ばれる資産家の動向とも関連が見られます。
野村総合研究所が発表した富裕層に関するニュースリリース(※1)によると、富裕層(※2)の世帯数および保有資産額は、過去に一時的な減少はあったものの、長期的に見ると増加傾向にあります。
純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数の推移5/5
出所:株式会社野村総合研究所 ニュースリリース「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日)
特に2021年から2023年にかけては、株価の上昇や円安が資産価値を押し上げ、その増加が顕著になりました。
前回の2022年調査では、相続を機に富裕層入りするケースの増加が指摘されていましたが、今回の2023年調査では、自らの収入や資産運用によって富裕層の仲間入りを果たす「新たな資産家層」の存在がクローズアップされています。
例えば、株式市場の活況を背景に運用資産が1億円を超えた人々を「いつの間にか富裕層」と称し、主に40歳代後半から50歳代の会社員が中心で、富裕層以上の世帯の1~2割を占めると推計されています。
また、都市部に居住し年収3000万円を超える「大企業・共働き世帯」を「スーパーパワーファミリー」と名付け、高い収入を元手に40歳前後から急速に資産を増やし、50歳前後で富裕層に到達する可能性が高い層として紹介しています。
こうした新しいタイプの資産家の存在は、家計調査のような統計データだけでは捉えきれない側面かもしれません。
贈与や相続に頼ることなく、自身の収入や運用によって資産を築くチャンスが広がっていることは、特に現役世代にとって前向きな動きといえるのではないでしょうか。
※1 株式会社野村総合研究所 ニュースリリース「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日)
※2 世帯の純金融資産額(金融資産から負債を差し引いた金額)を基に、超富裕層(5億円以上)、富裕層(1億円以上5億円未満)、準富裕層(5000万円以上1億円未満)、アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満)、マス層(3000万円未満)の5段階に分類
6. まとめ:自身の家計状況を把握し、適切な資産形成を
今回は、世帯のタイプによる貯蓄分布の違いや、年収と貯蓄の関係、そして「新しいタイプの富裕層」の出現など、現代のリアルな資産状況を解き明かしてきました。
データから浮かび上がってきたのは、現役世代とシニア世代の資産状況の格差や、同じ年収層でも貯蓄水準に大きな差が生まれる「二極化」の現実です。
とはいえ、理想的な貯蓄目標額は、家族構成やライフスタイル、そして将来の計画によって大きく異なります。一概に「いくらあれば安心」と断言できるものではありません。
また、家計の健全性を正確に評価する上で見過ごせないのが、「負債」と「実物資産」の存在です。
住宅ローンなどの借入れがある場合、単純な貯蓄額から負債を差し引いた「純貯蓄額」や、現在住んでいる「不動産の価値」も考慮に入れた、実質的な資産全体で判断する必要があります。
今回ご紹介したデータは、あくまで全体的な傾向を示す一つの目安です。
まずはご自身のライフプランや、現在の資産と負債のバランスを正確に把握することから始めてみてはいかがでしょうか。その上で、自分たちに合った無理のない資産形成を考えていくことが、将来の安心につながる確実な一歩となるでしょう。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)貯蓄の状況」
- 総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編-2025年(令和7年)-第8-11表<貯蓄・負債>貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高(二人以上の世帯・勤労者世帯)」
- 株式会社野村総合研究所 ニュースリリース「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日)
7.1 【補足】家計調査における「貯蓄」の定義
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によれば、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行、その他の金融機関(普通銀行など)への預貯金、生命保険や積立型損害保険の掛金(払込総額)、そして株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式・投資信託は時価、債券・貸付信託・金銭信託は額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金や勤務先の共済組合など金融機関外への貯蓄の合計を指します。
7.2 【補足】家計調査における「年間収入」の定義
総務省統計局の「家計調査」でいう「年間収入」とは、世帯全体の過去1年間の税込み収入を指します。具体的には、以下の1から6までの収入を合計した金額です。
1. 勤め先収入(定期収入、賞与など)
2. 営業年間利益(原材料費、人件費、営業上の諸経費などを除く)
3. 内職年間収入(材料費などを除く)
4. 公的年金・恩給、農林漁業収入(農機具などの材料費、営業上の諸経費などを除く)
5. その他の年間収入(預貯金利子、仕送り金、家賃収入など)
6. 現物消費の見積り額
マネー編集部貯蓄班